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安定冠動脈病変へのPCI、学会ガイドラインに沿った診療報酬算定要件を探る―中医協総会(2)

2019.11.14.(木)

「安定冠動脈病変に対する経皮的冠動脈ステント留置術等」や「重症急性膵炎に対する急性血液浄化療法」「局所陰圧閉鎖処置」などについて、医学会が作成する最新の診療ガイドライン等と、診療報酬上の施設基準や算定要件等との間に、一定の乖離がある。2020年度の次期診療報酬改定では、こうした乖離を埋め、ガイドラインに沿った医療技術実施を推進してはどうか―。

11月13日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こういった議論が行われました(医療技術に関する中医協第1ラウンド論議の記事はこちら)。

11月13日に開催された、「第432回 中央社会保険医療協議会 総会」

学会ガイドラインと診療報酬との間に一定の乖離が生じている

医学・医療、さらに関連科学技術等の進展により、新たな医療技術が開発され、国民が広くその恩恵に預かれるよう保険適用されます。その際、安全かつ有効に医療提供を行うため、「医学会の定めたガイドライン等」をベースに施設基準や算定要件が設定されますが、「医学の進展に合わせてガイドライン等がバージョンアップされるが、施設基準・算定要件との間に乖離が生じてしまう」という課題があります。

このため中医協では「最新のガイドライン等を踏まえて、施設基準・算定要件も見直していく」方向が確認されています。今般、次の5つの医療技術について「ガイドライン等と施設基準・算定要件などとの乖離」状況が示されました。

(1)安定冠動脈病変に対する経皮的冠動脈ステント留置術等
(2)下肢静脈瘤に係る手術
(3)重症急性膵炎に対する急性血液浄化療法
(4)局所陰圧閉鎖処置
(5)網膜中心血管圧測定

まず(1)「安定冠動脈病変に対する経皮的冠動脈ステント留置術等」においては、▼ガイドライン等では「トレッドミル等による機能的虚血評価の心電図検査」→「非侵襲的な狭窄・虚血の画像検査」→「侵襲的な評価(冠動脈造影検査等)」と順を追って検査を行うこととされているが、医療現場では必ずしもそうした検査実施がなされていない▼ガイドライン等では「チーム医療による治療方針決定が重要」とされているが、K546【経皮的冠動脈形成術】やK549【経皮的冠動脈ステント留置術】等の算定要件には盛り込まれていない―という乖離があります。

安定感度脈疾患の診断にあたっては段階的に検査を行うことが求められる(中医協総会(2)1 191113)



また(2)「下肢静脈瘤に係る手術」には、▼K617【下肢静脈瘤手術】(1「下肢静脈瘤抜去」1万200点(短期滞在手術等基本料3では2万3655点)、2「下肢静脈瘤硬化術」1720点(同1万2082点)、3「下肢静脈高位切除術」3130点(同1万1390点))▼K617-2【大伏在静脈抜去術】1万1200点▼K617-4【下肢静脈瘤血管内焼灼術】1万4360点―などがあります。医療現場では、「K617-4【下肢静脈瘤血管内焼灼術】が増加し、他の手術は減少傾向にある」「K617-4【下肢静脈瘤血管内焼灼術】の75%程度は外来で、かつ短時間で実施されている」実態があります。またガイドライン等では「K617-4【下肢静脈瘤血管内焼灼術】は、他の外科的手術と有効性・QOLスコアが同等である」と報告しています。

さらに(3)「重症急性膵炎に対する急性血液浄化療法」について、ガイドライン等では▼推奨される病態を「循環動態が安定せず、利尿の得られない重症例やACS合併例」に限定する▼病因物質除去効果を期待したCHDF(持続血液透析濾過)について「有効性は明らかでない」―としていますが、J038-2【持続緩徐式血液濾過】(1日につき1880点)の算定要件では特段の限定がなされていません(腎不全、重症急性膵炎、重症敗血症、劇症肝炎、術後肝不全の患者に算定可能)。

また(4)「局所陰圧閉鎖処置」について、欧米のガイドライン等では「ドレッシング材の交換は週に2、3回」が奨められていますが、J003【局所陰圧閉鎖処置(入院)】(創傷面の広さにより1040―1100点)は「1日につき算定できる」こととなっています。

安定感度脈疾患の診断にあたっては段階的に検査を行うことが求められる(中医協総会(2)1 191113)



一方(5)のD276【網膜中心血管圧測定】については、▼より精緻に検査できる蛍光眼底造影検査や眼底三次元画像解析に入れ替わってきている▼学会は「診療報酬に位置付ける意義は乏しい」と考えている―ものの、実質的に「広島県と東京都でのみ算定されている」という実態があります。

網膜中心血圧測定は、なぜか広島県・東京都のみで実施されている(中医協総会(2)3 191113)



厚生労働省保険局医療課医療技術評価推進室の岡田就将室長は、こうした状況を踏まえ2020年度の次期診療報酬改定において「ガイドライン等と施設基準・算定要件との乖離」を是正する必要があるのではないかとの見解を提示しました。例えば、▼ガイドライン等を踏まえて施設基準や算定要件を見直す▼D276【網膜中心血管圧測定】は診療報酬点数表から削除する―ことなどが考えられます

この点、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会)や吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)らは「ガイドライン等と施設基準・算定要件との乖離」を積極的に埋めるよう求めましたが、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は「ガイドライン等は非常に重要だが、医療には個別性がある。例えば『経皮的冠動脈ステント留置術等において、トレッドミル等による心電図検査を実施した後でなければ、冠動脈CT検査をしてはならない』などと厳格に規定することは好ましくない。持続緩徐式血液濾過については対象患者を限定するのではなく『レセプト等への症状詳記を求める』ことなどとしてはどうか。また局所陰圧閉鎖処置については、陰圧維持管理装置の機器コスト等も勘案しなければならない」と述べ、慎重な検討が必要との見解を提示。また網膜中心血管圧測定については、「診療報酬点数表から削除するのであれば、十分な経過措置を設けるべき」との注文も付けています。

今後、「どのように施設基準・算定要件を見直していくのか」を具体的に検討していくことになるでしょう。

人工呼吸器装着する小児在宅患者、特殊モニタリング機器費用も診療報酬で勘案しては

また岡田医療技術評価推進室長は、在宅医療に関連して次の2つの論点も提示しています。

▽C106【在宅自己導尿指導管理料】において、高機能な「特殊カテーテル」に係る加算が設けられているが、「有益性の高い(尿路感染症等の防止効果が高い)親水性コーティングカテーテル」のコストを十分に賄えていないと指摘されており、算定件数も少ない。親水性コーティングカテーテルを必要とする患者に適切に使用できるよう、評価を見直し(点数の引き上げ)を検討してはどうか

親水性コーティングカテーテルが尿路感染症防止などの有益性があるが、若干、高価格である(中医協総会(2)4 191113)



▽C107【在宅人工呼吸指導管理料】の中にはモニタリング機器等のコストが包含評価されているが、密なモニタリングが必要な小児患者に必要な「SpO2プローブ」のコストは十分賄えていないと指摘されており、評価の見直し(点数の引き上げ)を検討してはどうか

小児の在宅呼吸管理では成人に比べて密なモニタリングが求められる(中医協総会(2)5 191113)



いずれも「特殊な医療機器等を必要とする患者が、それに適切にアクセスできる」ような環境を診療報酬で整備することを目指すものです。

この点、診療側の松本委員は「積極的に点数とコストの差を埋め、少なくとも材料費分は賄える点数設定を行う」よう要望。支払側の幸野委員は「加算ではなく、基本報酬で特殊機器のコストを賄えるような評価をすべき」と指摘しており、今後、具体的な点数や要件を詰めていくことになるでしょう。

学会の最新ガイドライン、厚労省がより能動的に診療報酬に反映できる仕組みを検討

こうしたガイドライン等は、医学・医療の進歩に合わせてアップデートされていきます。このアップデート情報を厚労省が十分に把握できないため、「ガイドライン等と施設基準・算定要件等との乖離」が生じてしまうのです。

そこで岡田医療技術評価推進室長は、▼最新ガイドライン等の提示協力を関係学会に求める▼ガイドライン等が公開されていない場合でも、医療機関や患者等が診療報酬算定等に必要な部分については一定の公開等を学会に求める―との考えを提示しました。

ガイドライン等の中には「書籍」として出版されるものがあることから、「一定期間はwebサイトで公表しない」取り扱いとなっているケースもあります。そうした場合でも、「診療報酬の届け出や算定に必要な部分を抜粋して、公表してほしい」との要望がなされることになるでしょう。なお、抜粋の公表にも学会が難色を示すような場合には、「施設基準や算定要件の中に、ガイドラインの記述を具体的に書き込む」などの対応が検討される見込みです。

あわせて、▼最新のガイドライン等を把握する仕組みの構築▼最新のエビデンスを診療報酬の評価に反映させる仕組みを検討する「研究班」の設置―が行われる見込みです。厚労省が、より能動的に「最新の知見を診療報酬に反映させたい」と考えていることが分かります。

診療報酬改定の折には、数多くの医療技術について新規の保険適用や再評価が行われ、その際には、「医学会から提示された「安全性・有効性」に関するエビデンスについて、中医協の医療技術評価分科会で審査し、最終的に中医協総会で保険適用の可否等を判断する」といいう流れが固められています。この流れの中に、新たなプロセスを設けるのか、流れ自体を組み替えるのか、研究班の議論にも注目が集まります。

 
 

 

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