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白血病等の造血器腫瘍に対する遺伝子パネル検査実施指針、診断・予後予測・治療法選択の各段階で有用!—日本血液学会等

2022.10.25.(火)

日本血液学会は先ごろ、「造血器腫瘍における遺伝子パネル検査体制のあり方とその使用指針」を公表しました(血液学会のサイトはこちら)。

造血器腫瘍に対する遺伝子パネル検査は開発中ですが、診断・予後予測・治療法選択の各段階で有用であると考えられており、指針では疾患別に各段階における遺伝子パネル検査の推奨度を整理—。

あわせて、造血器腫瘍患者の相当数が「がんゲノム医療中核拠点病院・がんゲノム医療拠点病院・がんゲノム医療連携病院『以外』の病院で治療を受けている」現状に鑑みて、新たにパネル検査の患者説明・検体準備、結果説明、治療を造血器腫瘍に限って実施できる【造血器がんゲノム医療連携病院】」(仮称)を設けることも提言しています—。

早期に「造血器腫瘍に対する遺伝子パネル検査」が保険適用され、臨床現場に浸透することに注目が集まります。

固形腫瘍では治療法選択が主眼だが、造血器腫瘍では診断・予後予測も含めた活用が可能

ゲノム(遺伝情報)解析技術が進み、「Aという遺伝子変異の生じたがん患者にはαという抗がん剤投与が効果的である」「Bという遺伝子変異のある患者にはβ抗がん剤とγ抗がん剤との併用投与が効果的である」などの知見が明らかになってきています。こうしたゲノム情報に基づいて最適な治療法(抗がん剤)の選択が可能になれば、がん患者1人1人に対し「効果の低い治療法を避け、効果の高い最適な治療法を優先的に実施する」ことが可能となり、▼治療成績の向上▼患者の経済的・身体的負担の軽減▼医療費の軽減―などにつながると期待されます。

2019年6月から、がん患者における複数(百以上)の遺伝子変異を包括して検出できる「遺伝子パネル検査」が保険適用され(関連記事はこちらこちら)、我が国でもがんゲノム医療が保険診療の中で実施可能となりました。その後も▼検査手法の拡大▼リキッドバイオプシーの保険適用(血液を検体とする遺伝子パネル検査、関連記事はこちら)▼遺伝子パネル検査の保険点数改善(関連記事はこちら)▼遺伝子パネル検査で最適な抗がん剤が見つかったが、保険適用されていない場合の「患者申出療養」の活用促進(関連記事はこちら)—など、がんゲノム医療が普及してきています。

ただし、白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などの造血器腫瘍(血液がん)については、現在、遺伝子パネル検査手法が開発途上にあり、患者・家族からは「早期の遺伝子パネル検査開発」「早期のゲノム医療実施」を望む声が高まっています。この点、保険適用を目指して、国立がん研究センターなどで開発が進められています(関連記事はこちら)。

この点、日本血液学会の造血器腫瘍ゲノム検査ガイドラインでは、造血器腫瘍に対するパネル検査が「診断・予後予測・治療法選択の各段階において有用である」と指摘。臨床経過の各段階(診断・予後予測・治療法選択など)においてゲノム検査仕様の推奨度、疾患・遺伝子ごとの臨床的有用性を提示しています。

固形がんにおいては、遺伝子パネル検査が「治療法選択」(分子標的薬の選択)が主な目的であることと、やや状況が異なります。日本臨床腫瘍学会・日本癌治療学会・日本癌学会の3学会による次世代シークエンサー等を用いたパネル検査に基づくがん診療ガイダンスにおいても、「造血器腫瘍と固形がんでは対象となる遺伝子や活用方法が異なるため、今回のガイダンスの対象としない」とされています。

今後「造血器腫瘍の遺伝子パネル」が開発され、保険適用申請が行われます。その際には、学会による科学的エビデンスに基づいた推奨度に加えて、▼造血器腫瘍のゲノム医療に対応可能な検査体制・施設体系を整備する(検査体制が整っていなければ絵に描いた餅に終わってしまう)▼造血器腫瘍への遺伝子パネル検査に対応可能なエキスパートパネル(病院内の専門家会議)開催の実現可能性、想定される各施設における実務的負荷を考慮する▼医療経済に及ぼす影響(医療費が急騰してしまわないかなど)—を考慮する必要があります(中央社会保険医療協議会で、こうした点を評価し、最終決定する)。

こうした状況を踏まえ、「造血器腫瘍における遺伝子パネル検査の提供体制構築およびガイドライン作成」班(厚生労働科学研究費補助金)が、▼造血器腫瘍臨床の特殊性▼我が国における現行の造血器腫瘍臨床体系—などに鑑みた「造血器腫瘍における遺伝子パネル検査体制のあり方とその使用指針」を発出しました。新たなパネル検査が保険適用された暁に、すぐさま臨床現場で適切に利活用できるような下準備を進めておく意味合いもあります(日本血液学会、日本小児血液・がん学会等の 関連学会との協働作成)。

●指針はこちら
●指針の別紙(推奨度など)はこちら



指針では、▼造血器腫瘍・類縁疾患における遺伝子パネル検査の有用性と意義(診断・予後予測・治療法選択の各段階)▼造血器腫瘍に対するがんゲノム医療提供体制に関する提言▼パネル検査から得られるゲノム情報の管理と活用▼造血器腫瘍・類縁疾患に関連した生殖細胞系列の病的バリアント▼遺伝子パネル検査結果に基づいた治療薬選択と治療薬へのアクセス▼造血器腫瘍・類縁疾患におけるパネル検査実施ガイドライン▼保険診療下での造血器腫瘍パネル検査使用指針—などを整理しています。

このうち、医療提供体制に関しては、「造血器腫瘍患者の4割程度が、がんゲノム医療中核拠点病院・がんゲノム医療拠点病院・がんゲノム医療連携病院『以外』の病院で治療を受けている」現状(下図参照)に鑑みて、新たにパネル検査の患者説明・検体準備、結果説明、治療を造血器腫瘍に限って実施できる【造血器がんゲノム医療連携病院】(仮称)を設けることを提言しています。固形腫瘍・造血器腫瘍のいずれにも遺伝子診断・治療を行える「がんゲノム医療中核拠点病院・がんゲノム医療拠点病院・がんゲノム医療連携病院」と、造血器腫瘍についてのみ遺伝子診断・治療を行う「造血器がんゲノム医療連携病院」(仮称)とを整備するイメージです。

造血器腫瘍患者の治療施設内訳



あわせて「造血器腫瘍に対するパネル検査に対応できるエキスパートパネル(専門家会議)」の設置も求めています。現在のエキスパートパネルでは、上述のように「固形腫瘍に対する分子標的薬選択」を主な所掌としますが、造血器腫瘍に対するエキスパートパネルは、分子標的薬の選択にとどまらず、診断・予後予測にも所掌が大きく拡大されるイメージです。

このため指針では、日本血液学会の「造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン2021年度版」において推奨度が最も高い(SR::strong recommendation)疾患・病期を、▼造血器腫瘍のゲノム医療に対応可能な検査体制・施設体系▼造血器腫瘍パネル検査に対応可能なエキスパートパネル開催の実現可能性・想定される各施設における実務的負荷▼医療経済に及ぼす影響—という「保険適用で重要となる観点」からさらに検討し、保険診療下でパネル検査を実施することが最優先で強く推奨される状況を「SR_A」、強く推奨される状況を「SR_B」として下表のように定義しました。

疾患別/診断時・予後予測・治療法選択の遺伝子パネル検査推奨度



また、近い将来、造血器腫瘍に対する遺伝子パネル検査が保険適用される際には「診療報酬」(検査料など)の設定を行う必要があります。

現在の固形腫瘍に対する遺伝子パネル検査では、▼がんゲノムプロファイリング検査:4万4000点(検査実施を評価する)▼がんゲノムプロファイリング評価提供料:1万2000点(エキスパートパネルによる抗がん剤選択・説明などを評価する)—という2つの点数が設定され、これを組み合わせることになっています(関連記事はこちら)。指針では「造血器腫瘍治療の特殊性」(例えば診断後、直ちに入院するなど)を踏まえた点数や算定要件などの設定を行うよう求めています。

がんゲノムプロファイリング検査の評価見直し(2022年度診療報酬改定)



さらに固形腫瘍の遺伝子パネル検査においては「奏効が期待される分子標的薬がみつかっても、我が国で開発・保険適用されてない」事態が圧倒的多数を示しています(9割程度)。指針では、造血器腫瘍でも同様の課題に直面することを指摘し、対応策の検討・実施を早急に行うべき必要性を強調しています(関連記事はこちら)。



白血病などの造血器腫瘍治療においても、「遺伝子パネル検査により最適な抗がん剤(分子標的薬)を選択し、投与できる」環境の整備が一刻も早く整うことに期待が集まります。

【更新履歴】疾患・病期別の推奨度記載について異なる表を掲載しておりました。本文・図表を差し替えております。大変失礼いたしました。お詫びして訂正いたします。記事は訂正済です。



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