胃がんの原因の1つとなる「ピロリ菌」の感染検査、「核酸増幅法」による場合も保険診療の中で実施可—厚労省
2022.11.4.(金)
胃がんの原因の1つとなる「ピロリ菌」の感染検査について、新たに「核酸増幅法」によって実施することを保険診療の中で認め、その際の検査料算定ルールを整理する—。
厚生労働省は10月31日に通知「『ヘリコバクター・ピロリ感染の診断及び治療に関する取扱いについて』の一部改正について」を発出し、こうした点を明らかにしました。11月1日から適用されています(厚労省サイトはこちら)。
ピロリ菌感染の検査料、保険診療の中で実施する場合のルールを一部見直し
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は胃がんの原因の1つであり、診断・治療に関する検査が保険適用されています(現在は、D012【感染症免疫学的検査】の▼9 ヘリコバクター・ピロリ抗体定性(70点)▼12 ヘリコバクター・ピロリ抗体(80点)▼24 ヘリコバクター・ピロリ抗原定性(142点))。
このピロリ菌感染検査については、厚労省の発出した通知「ヘリコバクター・ピロリ感染の診断及び治療に関する取扱いについて」に沿って行うべきことが、診療報酬点数の解釈通知で規定されています。そこには次のような点が定められています。
(1)対象患者
▽▼内視鏡検査・造影検査で胃潰瘍・十二指腸潰瘍の確定診断がなされた▼胃MALTリンパ腫である▼特発性血小板減少性紫斑病である▼早期胃がんに対する内視鏡的治療後である▼内視鏡検査において胃炎の確定診断がなされた—患者のうち「ヘリコバクター・ピロリ感染が疑われる」者
(2)除菌「前」の感染診断
▽一定の検査法のうち、いずれかで実施した場合に1項目のみ算定可
▽検査の結果「ヘリコバクター・ピロリ陰性」となった患者に対し、異なる検査法で再度検査を実施した場合に限り、さらに1項目に限り算定可
→複数検査法を同時実施した場合の算定ルールあり
(3)除菌の実施
▽(2)の感染診断で「陽性」が確認された対象患者に対し、ピロリ除菌・除菌補助が効能として承認されている薬剤を3剤併用・7日間投与し除菌治療を行う
(4)除菌後の潰瘍治療
▽ 除菌終了後の抗潰瘍剤投与は、薬事法承認事項に従い適切に行う
(5)除菌「後」の感染診断(除菌判定)
▽(3)の除菌終了後、4週間以上経過した患者に対し「ピロリ除菌判定」のために(2)のいずれかの検査法でピロリ感染検査を実施した場合に1項目のみ算定可
▽検査の結果「陰性」となった患者に対し、異なる検査法により再度検査を実施した場合に限り、さらに1項目に限り算定可
→複数検査法を同時実施した場合の算定ルールあり
▽除菌後の感染診断の結果、「陽性」の患者に対し再度除菌を実施した場合は、1回に限り▼再除菌に係る費用▼再除菌後の感染診断に係る費用—を算定可
(6)留意事項
▽ランソプラゾールなど「ピロリ静菌作用を有するとされる薬剤」が投与されている場合には、「偽陰性となるおそれ」があるので、除菌前・除菌後の感染診断の実施は「当該静菌作用を有する薬剤の投与中止・終了後2週間以上経過している」ことが必要
▽除菌「後」の感染診断を目的として抗体測定は、(3)の除菌終了後6か月以上経過した患者に対し実施し、かつ、除菌前の抗体測定結果との定量的な比較が可能である場合に限り算定可
(7)レセプト摘要欄への記載
▽(1)の患者で内視鏡検査を行った場合、所見・結果等を記載する
▽(2)の除菌前感染診断、(5)の除菌後感染診断において、「検査の結果『ピロリ陰性』となった患者」に対する再度検査の場合、各々の検査法・検査結果を記載する
▽(5)の除菌後感染診断を算定する場合、除菌終了年月日を記載する
▽(6)の前段「静菌作用を有する薬剤を投与していた患者」に対する検査を実施する場合、「当該静菌作用を有する薬剤投与の中止・終了年月日」を記載する
▽(6)の後段「除菌後の抗体測定」を実施した場合、除菌前・除菌後の抗体測定実施年月日・各測定結果を記載する
(8)その他
▽関係学会のガイドラインを参考にする
今般の通知では(2)の「除菌『前』診断」のルールを一部見直しています(これに伴い(5)の除菌「後」診断ルールなども自動的に見直される)。
除菌前診断については、上記のとおり▼一定の検査法のうち、いずれかで実施した場合に1項目のみ算定可▼検査の結果「陰性」となった患者に対し、異なる検査法で再度検査を実施した場合に限り、さらに1項目に限り算定可—とされ、「一定の検査法」に関しては、これまで次の6種類が規定されていました。
(a)迅速ウレアーゼ試験
(b)鏡検法
(c)培養法
(d)抗体測定
(e)尿素呼気試験
(f)糞便中抗原測定
今般、「一定の検査法」に新たに「核酸増幅法」が追加され、ルールが次のように見直されました。胃がん予防等に向けた体制がさらに一歩進んだと言えるでしょう。
(改)▽上記6項目+新たな「核酸増幅法」の7項目のうち、いずれかで実施した場合に1項目のみピロリ感染検査料を算定できる
(改)▽従前の6項目(上記(a)から(f))の検査の結果「ピロリ陰性」となった患者に対し、異なる検査法で再度検査を実施した場合に 限り、さらに1項目に限りピロリ検査料を算定できる
(新)▽新たな「核酸増幅法」検査の結果「ピロリ陰性」となった患者について、胃粘膜にピロリ感染症特有の所見が認められているなど、ピロリ感染症を強く疑う特有の所見がある場合に、異なる検査法で再度検査を実施した場合に限り、さらに1項目に限りピロリ検査料を算定可
→この場合は、医療上の必要性をレセプトの摘要欄に記載する
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