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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

「病院の食事療養費は30年近く据え置かれ、物価高騰に対応できない」状況を患者・国民に改めてPRし、理解を得たい—四病協

2023.6.1.(木)

入院時食事療養費は30年近く据え置かれたままであり、昨今の物価・光熱水費・人件費急騰の中で「給食の継続・維持」が極めて困難な状況である。こうした状況を患者・国民に広く知ってもらうため、改めて院内にポスター掲示を行う—。

少子化対策・子育て支援の財源について、「医療費・介護費の縮減」により捻出する案が出ており、病院団体として「医療の質の維持」に強い不安を抱えている。今後、政治家への陳情などの行動を積極的に行っていく—。

5月31月に開催された四病院団体協議会の総合部会で、構成団体である日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会がこうした考えで一致したことが日病の相澤孝夫から明らかにされました。

5月31日の四病院団体協議会・総合部会後の記者会見に臨んだ、日本病院会の相澤孝夫会長

「少子化対策財源のための医療費・介護費削減」を回避するため、政治へ働きかける

医療、とりわけ入院医療においては「食事による栄養補給」が治療の重要な1要素となります。このため、医療保険からも「入院時食事療養費」が給付されます(現在、一般的なケースでは「1食当たり640円の食費を、患者が460円、医療保険が180円と分担して負担」する)。

ところで、入院時食事療養費(I)については、1997年の消費税率引き上げ(3%→5%)に伴う臨時の診療報酬プラス改定において「1900円→1920円」(1日当たり)に引き上げられましたが、その後「1日当たり→1食当たりに見直す」「患者負担を引き上げる」などの見直しが行われているものの「金額自体は30年近く据え置かれている」状況です。

しかし、この30年間近くの間に当然、食材費や人件費は上がっており、さらに昨今の「物価、光熱水費、人件費の急騰」により、病院からは、「適切な質・内容の給食を維持・継続することが困難」な状況に陥ってるとの悲鳴が上がっています。

しかも、公的医療保険制度の下では、「コスト増をサービス単価に上乗せ」することは許されません(入院時食事療養費も、診療報酬と同じく「公定価格」であり、医療機関が勝手に動かすことはできない)から、物価・光熱水費・人件費の増加といったコスト増は「病院」や「委託業者」が負担せざるを得ません(その結果、給食業務を受託してれる業者が激減しているとも指摘される)。

こうした状況を受け四病協では、昨年に続き「食事提供に関する病院の窮状を理解してもらうためのポスター」を作成(日精協が作成)。院内に掲示することで、患者・国民に広く「病院の窮状」を知ってもらうことを目指します。

ポスターでは、「物価が上がる一方で、入院時食事療養費は30年近く据え置かれたままである」点を強調したうえで、「病院給食の質を維持するために、政府に入院時食事療養の引き上げを求める」考えを示しています。

入院時時食事療養費の引き上げは、患者負担増につながります(保険給付分を引き上げる手法もあるが、この場合でも間接的に患者負担増になる)。このため厚労省は、従前より「入院時食事療養費の引き上げには患者負担増が伴い、そこへの理解を得ることが難しい」として二の足を踏んでいる部分もあります。そこで四病協では、まず「患者・国民に対し病院の窮状を理解してもらう」ことが重要と考え、こうしたポスター掲示などを行うもの(▼患者・国民に「安定した食事提供継続のためにわずかな負担増を容認してほしい」と訴え、理解を得る → ▼患者・国民の理解をベースに、国が「入院時食事療養費を引き上げる」―ことを期待するもの)と言えます。

食事提供にかかる病院の窮状を訴えるポスター1

食事提供にかかる病院の窮状を訴えるポスター2



他方、岸田文雄内閣の掲げる「異次元の少子化対策」の財源として、「一部を医療・介護などの社会保障費改革で捻出し、一部を社会保険料へ上乗せして確保する」案が浮上しきています。

社会保障改革とは、すなわち「医療費・介護費の縮減」を意味し、「医療・介護サービスの維持」「医療機関や介護事業所等の経営維持」「医療・介護職員の給与維持」などに大きな支障が出るのではないかと心配されています。四病協も含めた医療・介護団体ではすでに連名で「こども・子育て、少子化対策は極めて重要であるが、その財源捻出のために、病や障害に苦しむ方々のための財源を切り崩してはならない」との声明を示しています。

さらに5月31日の四病協・総合部会では「すでに政治マターになっており、各団体で国会議員を中心とした政治家に積極的に働きかけていく」方針を確認しました。

6月上旬の、いわゆる「骨太方針2023」において少子化対策財源確保に関する考え方が固められることになり、今後の動きに要注目です。



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