物価高騰・円安により「病院での食事提供」が困難を極めている!政府に緊急の対応を要望へ—四病協
2022.11.4.(金)
昨今の物価高騰・円安により「病院での食事提供」が困難を極めている。補助金による緊急対応も含めた「要望」を行う—。
11月2日に開催された四病協団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)の総合部会で、こうした点が固められたことが、日本医療法人協会の加納繁照会長から報告されました。
電子処方箋、コロナ病床確保料調整には問題があり、改善が必要である
Gem Medで報じているとおり、例えば、入院時食事療養費(I)については、1997年の消費税率引き上げ(3%→5%)に伴う臨時の診療報酬プラス改定において「1900円→1920円」(1日当たり)に引き上げられたものの、その後「1日当たり→1食当たりに見直す」「患者負担を引き上げる」などの見直しが行われているのみで、「金額自体は25年も据え置かれている」状況です。
その一方、この25年間で人件費や材料費などの水準は高騰しており、2018年度診療報酬改定に向けた議論の中でも「給食部門は全面委託・一部委託・直営といった運営形態を問わず赤字である」ことが厚生労働省から報告されています(関連記事はこちら)。
さらに現下の物価上昇や為替変動(円安)により、給食材料費等の水準が急激に上昇しており、医療現場からは「1食あたり640円・1日当たり1920円では、食事提供に必要なコストを賄えない。このままでは入院患者の治療において極めて重要な食事提供がかなわなくなる」と悲鳴が上がっています。
こうした状況を放置すれば「給食内容の悪化等」が生じ、「医療水準の低下」にもつながりかねません。
そこで四病協では、改めて厚生労働省に「要望」を行う考えを固めました。例えば「入院時食事療養費の引き上げ」などが考えられそうですが、対応のタイミングが「次期2024年度診療報酬改定」時となり、1年半先となってしまいます。加納・医法協会長は「2024年度改定となると遅すぎる(1年半待たなければならない)。補助金での対応なども含め、また病院の窮状に関するデータも踏まえて、四病協の中で要望案を早急に固める」との考えを示しました。
また、11月2日の四病協・総合部会では▼来年(2023年)1月から電子処方箋が全国展開される予定だが(関連記事はこちら)、十分な準備(インフラ整備、制度的対応など)が進んでおらず、医療現場は混乱している▼新型コロナウイルス感染症に係る病床確保料の調整(コロナ患者受け入れが少なく、収益が大きな病院での補助金減額)について問題・課題がある—点を確認、厚労省担当者に状況を伝え「改善を求めていく」方針も固めています。
コロナ感染症の新規患者数が再び急増しており、今冬にはインフルエンザとの同時流行も懸念されています。このため医療提供体制の強化が重要となりますが、上述した物価上昇・円安により病院のコストは大きく膨らんでいます。一般企業と異なり、コストを価格に転嫁できない(公定価格である診療報酬が決まっている)ことから病院経営は厳しさを増しています。「難局」を乗り越えるために、病院がどう動き、これに厚労省はじめ政府がどう応えるのか、今後の動きを注目する必要があります。
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