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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

認知症治療薬「レケンビ」(レカネマブ)、保険適用後の販売実績踏まえた「特別の薬価調整」は日本市場の魅力を損ねるのではないか—中医協

2023.11.14.(火)

新たな認知症治療薬「レケンビ点滴静注200mg」「同点滴静注500 mg」(一般名:レカネマブ(遺伝子組み換え))について、市場規模が極めて巨大になる可能性があり、「特別の薬価調整」ルール検討案が浮上している。しかし、こうした特別ルールは企業側の予見可能性を阻害し、日本の医薬品市場の魅力を損ねる点を考慮すべきである—。

11月8日に開催された中央社会保険医療協議会の薬価専門部会・費用対効果評価専門部会(合同部会)で、こうした議論が行われました。ほどなく「レケンビの薬価設定ルール」が固められ、薬価算定組織での値決め案をもとに12月24日までに薬価基準収載が決まる見込みです。

費用対効果評価にあたっては、抗がん剤のような配慮を認知症治療薬にも行ってほしい

Gem Medで報じているとおり、9月25日に新たな認知症治療薬「レケンビ点滴静注200mg」「同点滴静注500 mg」(一般名:レカネマブ(遺伝子組み換え))が薬事承認され、市場規模が極めて巨大になる可能性があることなどを踏まえ「特別ルールを設けるべきか否か」という議論が中医協で進められています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

新たな認知症治療薬「レケンビ」が薬事承認され、今後、保険適用することになる(中医協総会(1)1 230927)



これまでに議論を重ね、概ね次のような方向が固まりつつあります。

▽薬価算定時(当初の薬価設定)には通常ルール(類似薬があれば類似薬効比較方式を採用し、なければ原価計算方式を採用)で対応することとし、詳細は薬価算定組織で判断する(判断理由を中医協に報告する)

▽薬価算定に用いるデータについては、メーカーから提出された資料に基づき「既存のルール」に従って有用性等の評価を行う(「介護費縮減効果」について既存の補正加算では評価する項目はなく、後述するように「費用対効果評価」の中での対応を研究・検討する)

▽薬価基準収載後の価格調整に関しては、▼今後、より簡便な適応・副作用等判定の検査などが登場し、患者が想定よりも増加する可能性がある▼投与期間が長期に及ぶ可能性もある(延べ患者数が増加する)—ことから「特別ルール」の必要性も考えられる。ただし、不確定要素の多い現時点では具体的な特別ルールの検討は困難であり、保険適用後の状況(販売実績など)も見ながら対応が必要となった場合に改めて検討する

▽アルツハイマー型認知症を対象とする別の抗体医薬品を保険適用(薬価基準収載)することになった場合には、必要に応じて中医協で「本剤を含む取り扱い」を改めて検討する

▽「保険適用(薬価基準収載)後の費用対効果評価」における「介護費縮減効果の勘案」には課題も多く、今後、研究を継続する



11月8日の合同部会では、こうした内容について業界団体(日本製薬団体連合会、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA))から意見を聴取。そこでは次のような考え方が示されました。

(薬価制度について)
▽薬価等の検討に際しては「イノベーションの適切な評価」「患者さんの早期アクセスの確保」「企業の予見性の確保」を大前提とし、丁寧に進めてほしい

(認知症対策について)
▽認知症対策には製薬業界も強力に協力していく

▽認知症は身近な疾患で、社会的影響も大きなため、治療薬の負担については「国の認知症施策の中で幅広く検討する」ことも考えられる

(当初の薬価設定について)
▽アルツハイマー病のアンメット・メディカル・ニーズの高さや治療薬の開発難易度などを考慮し、当該企業の意見を十分に踏まえて薬価を算定してほしい

認知症治療薬の開発は極めて難易度が高い(中医協・合同部会 231108)



(保険適用後の価格調整)
▽薬価基準収載後の価格調整について「本剤に関する別の取り扱い」を検討するにあたっては、現行の薬価・価格調整ルールとの関係も踏まえつつ、必要性を含めて慎重に検討すべきである(すでに市場拡大再算定などが存在しており特別ルールは不要ではないか。都度都度と「特別ルール」を設ければ、企業側の予見可能性を阻害し、日本の医薬品市場の魅力が低下する)

(介護費用縮減効果の勘案)
▽費用対効果評価の中で、「家族・介護者にかかる介護費用等を含めた分析結果を用いた評価」の実施を積極的に検討してほしい

▽費用対効果の分析結果、アルツハイマー病の特性や社会的影響、海外における閾値の調整などを踏まえて「総合的評価(アプレイザル)においての配慮」などを引き続き検討してほしい。認知症治療薬では「QOL改善効果」が出るまでに長期間を要するため、例えば抗がん剤のように「ICERの基準値を調整する」(価格引き下げ基準を緩和する)などの配慮も検討してほしい

費用対効果評価制度では「抗がん剤」などについて配慮を行っている



▽関連して、費用対効果評価における価格調整範囲の拡大(現在の「加算部分」からの「薬価本体」への拡大)は、薬価本体(比較薬・原価相当の水準)を割り込むことになり、薬価制度と矛盾するため受け入れられない



こうした意見に対しては、中医協委員から「認知症治療薬の負担について、国が認知症施策の中で検討するべきとの考えには同意できる。薬剤開発を断念するメーカーへの配慮なども含めて適切な場での検討が必要であろう。費用対効果評価において認知症治療薬は、希少疾患治療薬のような『特別な配慮』の対象にはならないと考える」(長島公之委員:日本医師会常任理事)、「介護費縮減効果の勘案とは『薬価の引き上げ』を期待しているものと推測するが、医療保険者では『薬剤費の適正化』を重視している点を理解してほしい」(松本真人委員:健康保険組合連合会理事)などの指摘がなされています。



こうした業界団体意見も参考に、ほどなく合同部会・中医協総会で「レケンビの薬価設定ルール」等が固められます。

その後、決定されたルールに基づいて薬価算定組織(薬価算定ルールに基づいて個別医薬品の薬価案を作成する中医協の下部組織)で具体的な「レケンビの薬価案」を作成。それを中医協総会で審議し、遅くとも12月24日までに薬価基準収載が行われる見込みです。



なお「費用対効果評価における価格調整範囲」については、「薬価算定ルールと費用対効果評価制度との違いに鑑み、加算部分にとどめなければならない」とするメーカーサイドと、「薬価算定ルール本体に拡大することも十分に考えられる」とする中医協委員との間に大きな考え方の乖離があることが再確認されました。今後、費用対効果評価制度改革論議の中でさらに議論が続けられます(関連記事はこちら)。

現行の費用対効果評価制度では、価格調整は有用性加算を対象に行われている(中医協・費用対効果評価専門部会 230712)



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