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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

がん拠点病院等の指定期間を6年とし「がん対策推進基本計画」と整合性確保、ゲノム医療連携病院でのEP開催認める―がん診療提供体制検討会

2024.1.16.(火)

がん診療連携拠点病院等の整備指針(指定要件)について、現在は「4年毎の見直し」を行っているが、がん対策推進基本計画との整合性を確保するために「6年毎の見直し」とする。もっとも小児がん拠点病院・がんゲノム医療中核拠点病院については、各種課題への対応や技術進展への対応の重要性に鑑みて、柔軟な整備指針(指定要件)見直しを可能とする—。

がん患者の遺伝子変異情報を踏まえて最適な抗がん剤を選択するゲノム医療が推進しており、最適な抗がん剤選択は専門家会議(エキスパートパネル)で行われる。現在、専門家会議(エキスパートパネル)はがんゲノム医療中核拠点病院・がんゲノム医療拠点病院で開催しているが、知識・スキル・体制が整えられた連携病院でも開催を認める—。

1月15日に開催された「がん診療提供体制の在り方に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった内容が了承されました。各整備指針(指定要件)等について近く見直しが行われる見込みです。

「がん拠点病院の指定要件」と「がん対策推進基本計画」との整合性をさらに確保

「日本全国のどの地域に住んでいても、優れたがん医療を受けられる体制を整える」(均てん化)という方針の下、我が国では、▼高度ながん医療を提供する「がん診療連携拠点病院」等▼小児特性に踏まえた高度がん医療を提供する「小児がん拠点病院」等▼ゲノム解析結果を踏まえて適切ながん医療提供を目指す「がんゲノム医療中核拠点病院」等―の整備が進められています。

がん医療の高度化(例えば新たな医療技術の開発・普及など)、患者ニーズの多様化など、がん医療を取り巻く環境は絶えず変化するため、指定要件(整備指針)については定期的に見直すことが求められ、現在は「4年に一度の見直し」が行われることとなっています。

しかし、我が国のがん対策の礎となる「がん対策推進基本計画」は6年計画となっていることから、「がん対策推進基本計画」と「がん診療連携拠点病院等の整備指針(指定要件)」との期間のズレが生じています。

そこで厚生労働省は1月15日の検討会において「基本計画と整備指針(指定要件)との整合性をとるために、整備指針(指定要件)の見直しを現在の『4年に一度』から『6年に一度』に見直す」ことを提案し、了承されました。

昨年(2023年)4月から新たながん診療連携拠点等が指定され、その期限は「2026年度まで」となっています。がん対策推進基本計画(現在の第4期計画が2023-28年度、次の第5期計画が29-34年度)と平仄を併せるため、厚労省は▼がん診療連携拠点病院の次の指定期間を2027-28年度の2年間とする▼2029年度から「6年指定」とする—考えも併せて提示しています。これにより、移行は6年毎に「がん対策推進基本計画の見直し」と「がん診療連携拠点病院等の整備指針(指定要件)見直し」が同時に行われることになります。

がん診療連携拠点病院の指定スケジュール案(がん診療提供体制検討会1 240115)



なお、この見直しの背景には「がん診療連携拠点病院制度のスタートから20年が経過し、これまでのような頻回な見直しが必要なくなってきた」(制度が成熟してきた)面もあります。

一方、小児がん拠点病院等については「小児がん連携病院の指定要件、小児がん拠点病院の数や地域ブロックごとの分布」などに課題があり、またがんゲノム医療中核拠点病院等については「技術開発の進展とそれに伴う新規がん遺伝子パネル検査の導入、や患者数の増加等による求められる医療提供体制の変化への対応」という課題があり、「必要に応じて柔軟に整備指針(指定要件)を見直す」ことが可能とされました。

小児がん連携病院は、国の指定する小児がん拠点病院が「地域ブロックの状況を踏まえて指定する」こととなっていますが、「病院間の格差がある」ことや「小児がん拠点・連携病院だけでは小児がん患者をカバーできていない」などが課題が指摘されており、現在、研究班で「課題解決に向けた対応」の研究・検討が進められています。近い将来、研究結果を踏まえた整備指針(指定要件)見直しが行われる見込みです。

一定要件満たすがんゲノム医療連携病院でエキスパートパネル開催を認める

また1月15日の検討会では、がんゲノム医療提供体制見直しに関する議論も行われました。

ゲノム(遺伝情報)解析技術が進み、▼Aという遺伝子変異の生じたがん患者にはαという抗がん剤投与が効果的である▼Bという遺伝子変異のある患者にはβ抗がん剤とγ抗がん剤との併用投与が効果的である―などの知見が明らかになってきています。こうしたゲノム情報に基づいて最適な治療法(抗がん剤)の選択が可能になれば、がん患者1人1人に対し「効果の低い治療法を避け、効果の高い、最適な治療法を優先的に実施する」ことが可能となり、▼治療成績の向上▼患者の経済的・身体的負担の軽減▼医療費の軽減―などにつながると期待されます。

我が国でも、多くの遺伝子変異を一括確認できる「遺伝子パネル検査」の保険適用が進み(関連記事はこちらこちら)、▼患者の同意を得た上で、患者の遺伝子情報・臨床情報を、「がんゲノム情報管理センター」(C-CAT、国立がん研究センターに設置)に送付する → ▼C-CATで、送付されたデータを「がんゲノム情報のデータベース」(がんゲノム情報レポジトリー・がん知識データベース)に照らし、当該患者のがん治療に有効と考えられる抗がん剤候補や臨床試験・治験などの情報を整理する → ▼がんゲノム医療中核拠点病院・がんゲノム医療拠点病院の専門家会議(エキスパートパネル)において、C-CATからの情報を踏まえて当該患者に最適な治療法を選択し、これに基づいた医療を提供する―という【がんゲノム医療】の実施が始まり、充実・拡大が図られています。
がんゲノム医療拠点病院等指定要件ワーキンググループ1 190527

がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議2 190308



こうしたがんゲノム医療は、▼「がん遺伝子パネル検査の医学的解釈」を自施設で完結できる体制を整備した「がんゲノム医療中核拠点病院」「がんゲノム医療拠点病院」(中核拠点病院は人材育成・他院の診療支援・治験や先進医療の主導・研究開発の機能も求められる)▼中核拠点・拠点病院と連携してパネル検査解釈を行う「がんゲノム医療連携病院」—で主に実施されます。

がんゲノム医療中核拠点病院などの概要(がんゲノム拠点病院指定要件WG1 231201)



がんゲノム医療中核拠点病院等の指定要件(整備指針)は昨年(2022年)8月に見直され(関連記事はこちら)、この新指定要件(新整備指針)に基づいて、本年(2023年)11月1日時点では▼中核拠点病院:13施設▼拠点病院:32施設▼連携病院:211施設—が指定されています(関連記事はこちらこちら、連携病院は中核拠点・拠点病院が指定する)。

がんゲノム医療中核拠点病院などの指定状況(がんゲノム拠点病院指定要件WG3 231201)

がんゲノム医療中核拠点病院などの指定要件見直しポイント(がんゲノム拠点病院指定要件WG2 231201)



上述のように2019年6月に遺伝子パネル検査の保険適用が行われ、2021年8月にはリキッドバイオプシー(血液を検体としてがん患者の複数の遺伝子変異を一括して検出する「遺伝子パネル検査」)の保険適用も行われました(関連記事はこちらこちら)。現在、遺伝子パネル検査は月間1600-1800件程度実施され、本年(2023年)10月末までに6万4047名分の遺伝子情報がC-CATに蓄積されています。

遺伝子パネル検査の実施状況(がんゲノム拠点病院指定要件WG4 231201)



ところで現在、連携病院は「中核拠点病院・拠点病院の開催する専門家会議(エキスパートパネル)に参加」して患者に最適な抗がん剤を選択することになっています。

しかし、がんゲノム医療を進める中で、▼連携病院の知識・スキル・体制も向上し、自前で専門家会議(エキスパートパネル)を開催できる施設も現れている▼従前、拠点病院として自前で専門家会議(エキスパートパネル)を開催していた連携病院もある—ことから、一定の要件をクリアした連携病院では「自前でエキスパートパネルを開催する」ことを認めてはどうかとの考えが浮上していきます。連携病院が自前で専門家会議(エキスパートパネル)を開催できれば▼がんゲノム医療の間口がより広がる▼連携拠点病院の患者に、より早く解析結果・最適な抗がん剤候補の提示が行える(より早期の治療が可能になる)▼中核拠点・拠点病院の負担も軽減される—というメリットが期待されます。

こうした状況を受け、昨年(2023年)12月1日の「がんゲノム医療中核拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」(以下、ワーキング)では、「一定の要件満たした連携病院において、自前で専門家会議(エキスパートパネル)開催を認める」方針が固められました(関連記事はこちら)。

がんゲノム医療連携病院の一部を「エキスパートパネル実施可能がんゲノム医療連携病院」とする1(がん診療提供体制検討会2 240115)

がんゲノム医療連携病院の一部を「エキスパートパネル実施可能がんゲノム医療連携病院」とする2(がん診療提供体制検討会3 240115)



この方針を1月15日の検討会でも議論しています。「自前で専門家会議(エキスパートパネル)を開催できる」連携病院(エキスパートパネル実施可能がんゲノム医療連携病院)の要件としては、次のような点があげられています。

厚労省通知「エキスパートパネルの実施要件について」に示すエキスパートパネル実施要件を満たす

▽次の実績を有する
▼がん遺伝子パネル検査の出検数が年間50件以上ある
▼中核拠点病院・拠点病院にエキスパートパネルを依頼する前に、「厚労省通知「エキスパートパネルの実施要件について」で定めるエキスパートパネルの全出席者により事前に検討し、その結果を中核拠点病院・拠点病院に報告」した実績を有する
→前年度まで拠点病院であった場合は「前年度のエキスパートパネルでの検討実績」が50例以上である
▼エキスパートパネルで推奨された治療を実施した症例が年間3例以上である
▼遺伝性腫瘍に関する遺伝カウンセリング数が年間20例以上である

▽自施設で判断に迷う場合は、連携する中核拠点病院・点病院にエキスパートパネルを依頼できる体制を有する

▽自施設の症例のみをエキスパートパネルの対象とし、「他の連携病院の症例」を検討することは求めない



中核拠点病院・拠点病院が、こうした要件をクリアする連携病院を選定(あわせて厚労省に報告)します。さらに毎年度「当該連携病院がエキスパートパネルが適切に実施できているかを確認し、評価を行う」という運用方針案も示されました。評価の結果「不十分」となれば、「自前でエキスパートパネルを開催」は認められなくなります。



また、「自前でエキスパートパネルを開催」後も中核拠点病院・拠点病院による一定のサポートが必要と考えられ、厚労省は「引き続きのサポート」(適切なエキスパートパネル開催の実施サポート、事例の把握・確認、人材育成など)を中核拠点病院・拠点病院に求めていく考えです。



こうした内容に検討会構成員から異論・反論は出ていませんが、「暦年によって症例数にバラつきが出ることも考えられ、1年毎にエキスパートパネル開催の可否が変わっては困る。例えば実績要件について『数年間で●症例以上』という基準を検討したり、また一定のブレがあっても『翌年までに実績を満たせば良し』とするなどの対応も検討してはどうか」(藤也寸志構成員:九州がんセンター院長)といった注文がついています。今後の運用の中で検討していくことになります。

また、がんゲノム医療全体について、「病院間で治療薬到達の状況にも格差があるようだ。治験情報収集などの取り組みをがんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院・連携病院全体で進め、底上げを図る必要がある」(土岐祐一郎座長:大阪大学大学院医学系研究科外科系臨床医学専攻、外科学講座消化器外科学教授)、「がんゲノム医療中核拠点病院等でない、一般病院で遺伝性腫瘍治療を受ける患者も少なくないが、遺伝カウンセリングなどが十分に行われているとはいいがたい。がんゲノム医療中核拠点病院等とリモートで遺伝カウンセリング受けられるような体制を検討していくべき」(天野慎介構成員:全国がん患者団体連合会理事長)といった要望が出されています。

前者の「治療薬到達度合(現在、日本全体で9.4%)の向上」に向けては、ワーキング座長でもある中釜斉構成員(国立がん研究センター理事長)から「各エキスパートパネルに示されるC-CATからのレポートの中に治験情報などの記載を行っている。またエキスパートパネルの構成員はいずれも専門家であり、経験を積むことでより適切かつ迅速な判断が可能になる」との考えが示されました。経験蓄積の中で治療薬への到達率が向上し、病院間格差も解消していくと期待されます。

また後者の「一般病院での遺伝カウンセリング」については、がんゲノム医療中核拠点病院等と一般病院とをオンラインで結び「リモート遺伝カウンセリングを実施できる」体制等が今後の検討テーマになる旨が厚労省から示されています。

なお、昨年(2023年)12月1日のワーキングでは、厚労省通知「エキスパートパネルの実施要件について」に関して、▼エキスパートパネルにおける「専門家配置の緩和」▼「エキスパートパネルの持ち回り開催」の基準明確化—の方針も固められています(本年度(2023年度)内に厚労省通知「エキスパートパネルの実施要件について」が改正される見込み)。



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