中小企業経営者、自身・従業員のがん対策(検診)に「大いに関心がある」割合は14%にとどまる—厚労省
2025.2.7.(金)
中小企業経営者、自身・従業員のがん対策(検診)に「大いに関心がある」割合は14%にとどまっている(ただし、「関心がある」割合は61%)—。
「経営者のがんへの関心が高い」ほど「検診実施率が急激に高くなる」—
厚生労働省が2月3日に公表した「中小・小規模企業での『がん対策』調査結果報告」から、こうした状況が明らかになりました(厚労省サイトはこちら)。
「経営者のがんへの関心が高い」ほど「検診実施率が急激に高くなる」
厚労省は2020年度から、大同生命社と共同して「中小・小規模企業での『がん対策』調査」を行っており、2024年度には7999社を対象にアンケート調査が行われました。
まず中小企業経営者自身のがん検診受診率を見ると約70%。検診の種類は、▼胃がん:53%(バリウム27%、胃カメラ26%)▼大腸がん:45%(検便(便潜血検査)31%、内視鏡検査14%)▼肺がん:25%▼乳がん:4%(マンモグラフィ2%、超音波検査2%)▼子宮頸がん:2%—などとなっています。
また、中小企業経営者が「自身も含め、従業員のがん対策(検診)に関心をもっているか」を見ると、▼大いに関心がある:14%▼関心がんある:61%▼あまり関心がない:21%▼全く関心がない:4%—で、ここ5年間で大きな変化はありません。「大いに関心がある」経営者が14%にとどまっている点が気になります。
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中小企業経営者で「自身・従業員のがん対策(検診)に大いに関心がある」割合は14%にとどまる
次に、「従業員のがん検診を実施」状況を見ると、▼実施:50%▼未実施:22%▼「会社では実施していないが、個人での受診を推奨」:28%—となっています。厚労省では「5割ほどの中小企業では従業員の検診を実質行っていない」と見ていますが、実施企業は徐々に増加しています。
また、「経営者のがんへの関心が高い」ほど「検診実施率が急激に高くなる」ことも分かりました。
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従業員のがん検診を実施した中小企業経営者は増加しているが、5割にとどまる
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中小企業経営者の「自身・従業員のがん対策(検診)への関心度」と「従業員へのがん検視実施度合い」は相関する
このほか、次のような状況も明らかになりました。
▽従業員のがん検診受診の実態を把握できている企業が増えてきている(いる
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従業員のがん検診実施状況を把握する中小企業経営者が増えている
▽従業員のがん罹患者は増加傾向であるが、勤務継続率は変わらっておらず、「約3割は退職」している
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中小企業において、がん罹患者の3分の1は退職している
▽子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)については、61%が「接種は任意であり、すべて個人の判断だと思う」と答え、誤ってはいないが「接種による感染防止・がんり患減少に大きく役立つ」などの情報が深く浸透していない
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HPVの理解度は必ずしも十分とは言えない
中小企業経営者における「がん対策」への意識がさらに向上し、「従業員の健康・生命を守る」中小企業が増加することに期待が集まります。
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