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心臓血管外科手術でのアンデキサネット アルファ投与で、ヘパリン抵抗性が生じ人工心肺使用が困難となる事例散発—心臓血管麻酔学会他

2025.7.22.(火)

心臓血管外科手術の術前・術中に「アンデキサネット アルファ」を投与した後、「著明なヘパリン抵抗性」を呈し、手術遂行に重大な支障を来してしまうという事例が複数報告されている—。

「アンデキサネット アルファ」を使用するかどうかについては、多職種協議によって決定することが重要であり、▼人工心肺装置稼働中の投与は避ける▼人工心肺離脱後の止血困難に対して「一律の投与」は避ける—ことなどが推奨される—。

さらに各医療機関の診療科・診療部門間で「著明なヘパリン抵抗性」が生じた場合の対応方法などをあらかじめ検討・策定・共有しておくことが推奨される—。

日本心臓血管麻酔学会・日本胸部外科学会・日本心臓血管外科学会・日本体外循環技術医学会が先頃、「アンデキサネット アルファの周術期投与に関する提言」を示し、こうした考えを強調しました(日本心臓血管麻酔学会のサイトはこちら)。

副作用を踏まえれば「糖尿病治療医と肥満症治療医の連携」などが強く求められる

「アンデキサネット アルファ」(販売名:オンデキサ静注用200mg)は、アピキサバン(販売名:エリキュース錠)、リバーロキサバン(同イグザレルト錠ほか)、エドキサバン(リクシアナ錠)などの直接作用型第Xa因子阻害薬(以下Xa阻害薬)を服用中の患者において「生命を脅かす出血、または止血困難な出血が発現した際の抗凝固作用の中和」を効能効果としする医薬品です(2022年5月から本邦で保険適用)。

しかし、ヘパリンを用いる心臓血管外科手術の術前・術中に「アンデキサネット アルファ」を投与した後、「著明なヘパリン抵抗性」を呈し、手術遂行に重大な支障を来してしまうという事例が複数報告されています。これを受け、日本心臓血管麻酔学会は2023年に「アンデキサネット アルファの周術期投与に関する注意喚起」を発出しました(関連して厚生労働省は同剤について「使用上の注意」改定をメーカーに2024年3月に指示し、医療現場に注意喚起している)。

しかし、その後も類似の事例が継続して報告されていることを重視し、4学会は「同剤の投与により生じうるヘパリン抵抗性について、医療現場への一層の周知が必要」であると考え、次の5つの提言を発出し、医療現場に注意喚起しました。

(1)「アンデキサネット アルファ」の投与により、高度な「ヘパリン抵抗性」を惹起する可能性がある
→Xa阻害薬内服中の患者に対し「アンデキサネット アルファ」を投与した後、ヘパリン抵抗性によって「人工心肺装置の使用が困難」となった事例が多数報告されている
→「アンデキサネット アルファ」の投与は、結果として「患者に必要な治療の実施を妨げる」可能性がある
→Xa阻害薬内服中の患者に対する緊急処置に際しては、「アンデキサネット アルファ」を安易に第1選択とせず、緊急手術を含む治療全体の方針を多角的かつ総合的に検討した上で、その適応を慎重に判断することを強く推奨する



(2)「アンデキサネット アルファ」の使用に際しては、多職種による協議を経て適応を決定することが望ましい
→治療に関与する他科の医師、臨床工学技士、薬剤師など「多職種による協議」を経た上で決定されるべきである



(3)「アンデキサネット アルファ」を人工心肺中に投与することは避け、人工心肺離脱後の止血困難に対する投与判断でも慎重な検討を要する
→人工心肺装置稼働中の投与は、装置の使用に著しい支障を来す可能性があるため、避けるべきである
→人工心肺離脱後の止血困難に対して「アンデキサネット アルファ」を一律に投与することは推奨されない
→血算(血液中の赤血球、白血球、血小板などの細胞成分数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値などを測定する検査)、凝固検査、血液粘弾性検査等の結果をもとに「Xa阻害薬以外の凝固障害の原因」を除外し、さらに、「再度、人工心肺を導入する可能性がない」ことを確認した上で「アンデキサネット アルファ」の投与を判断することが推奨される



(4)「アンデキサネット アルファ」により惹起されるヘパリン抵抗性への対応法は確立されていない
→ヘパリンの追加投与のみでは活性化凝固時間(ACT)の延長を得られないことが多い
→現時点では、血液凝固阻止剤の「アンチトロンビン」(販売名:アコアラン静注用)の単独投与、または同剤とヘパリンとの併用、あるいはタンパク分解酵素阻害剤の「ナファモスタット」の投与が、ACT延長に一定の効果を示す可能性がある



(5)本提言は、各医療機関内での共有と体制整備を通じて活用されるべきである
→「アンデキサネット アルファ」の使用、およびそれに伴うヘパリン抵抗性への対応法を、各医療機関の診療科・診療部門間で共有し、院内での運用体制をあらかじめ策定しておくことが推奨される



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