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市町村国保、2023年度には1288億円の赤字決算、積立金は1兆3375億円(保険給付の1.9か月分)にとどまる―厚労省

2025.8.28.(木)

自営業や無職者が加入する「国民健康保険」(市町村国保)では、2023年度には1288億円の赤字決算となった。大災害などで保険料収入が途絶えた場合に備える積立金は1兆3375億円に減少し、「2023年度保険給付の1.9か月分」にとどまっている—。

このような状況が、厚生労働省が8月25日に公表した2023年度の「国民健康保険(市町村国保)の財政状況について」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら

大災害など不測の事態に備える積立金は1兆3375億円に減少

市町村国保は、主に自営業者や無職者が加入する公的医療保険制度です。

まず、2023年度における市町村国保の収入(前年度からの繰越金などを除く単年度収入)は23兆3876億円で、前年度に比べて1311億円・0.6%の減少(減収)となりました。内訳を見ると、▼保険料(税)収入の減少(前年度から816億円・3.3%の減少)▼一般会計からの法定外繰り入れ(市町村による財政補填)の減少(同1267億円・3.8%の減少)—などが目立ちます。



一方、支出(同じく単年度)は23兆5164億円で、前年度に比べて1215億円・0.5%の減少となりました。保険給付費(市町村国保加入者の医療費支出の7割)は929億円・1.1%減少していますが、後期高齢者支援金(75歳以上の後期高齢者の医療費支出支援)は1217億円・8.1%も増加しています。2022年度から、人口の大きなボリュームゾーンを占める「いわゆる団塊世代」が75歳以上の後期高齢者となっており、そこへの支援金が増加していることが影響しています(団塊世代は2025年度に全員が後期高齢者となるまで、この動きは2025年度まで続く見込み)。



この結果、2023年度(単年度)の収支差は「1288億円の赤字」となりました。赤字幅は前年度に比べては96億円・8.1%拡大(悪化)しています。

また、国庫支出金を精算した後の収支を見ても「582億円の赤字」です(前年度から263億円・82.5%の拡大・悪化)。不測の事態(大災害などで収入がない場合でも医療機関等に医療費を支払わなければならない)に備える積立金は2020年度には「1兆3375億円」で、前年度から621億円・4.4%減少してしまいました。

2023年度の保険給付費(加入者の医療費の7割)は8兆5315億円で、1か月あたりに単純計算する(12で除す)と「7110億円弱」となります。すると、不測の事態が生じて保険料収入が途絶えた場合に、1兆3375億円の積立金では「1.9か月分」しか賄うことができないことが分かります。さらなる財政基盤の強固に向けた努力が必要でしょう。

市町村国保の決算状況



なお、「短時間労働者の社会保険加入」等により、市町村国保から被用者保険への加入者移行が進んでいます(加入者数は2022年度→23年度に104万人・4.3%減少)。これは「保険料収入の減少、保険給付費の減少」だけでなく、「市町村国保の財政基盤が不安定になる」ことを意味します(加入者が多ければ、突発的な医療費増を多くの加入者で吸収し、1人当たりの負担増を小さく抑えることができるが、加入者が少なくなるほど、この効果が小さくなってしまう)。今後の医療保険改革において重要な検討テーマの1つとなります(関連記事はこちら)。

市町村国保の被保険者(加入者)数の推移



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