健保組合の後発品割合、調剤ベースでは83%台に乗っているが、伸び悩んでおり、地域格差も大きい—健保連
2022.6.17.(金)
今年(2022年)1月時点で、健康保険組合における後発医薬品の使用割合(調剤ベース)は83.3%である—。
ただし「昨年(2021年)11月以降、伸び悩みが生じている」こと、「地域格差が大きく、依然として80%をクリアできていない県もある」ことなどの課題もある—。
健康保険組合連合会がこのほど発表した「後発医薬品の普及状況」(数量ベース)【令和4年1月診療分】から、こういった状況が明らかになりました(健保連のサイトはこちら)。
後発品割合の伸び悩みの背景には「長引く後発品の供給不安」があり、「安定供給」に向けた関係者のさらなる努力が切望されています。
医科・歯科・DPCなど含めれば後発品割合は低くなり、課題はより深刻である
医療技術の高度化(例えば脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)、白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)などの超高額薬剤の保険適用が相次ぎ、さらにキムリアに類似した、やはり超高額な血液がん治療薬も次々に登場)が進み、医療費は膨張を続けています。
また、少子高齢化の進展(今年度(2022年度)から団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となる。その後2040年度にかけて高齢者の増加ペース自体は鈍化するが、現役世代人口が急速に減少する)により、「医療費の膨張」と「支え手の減少」が同時に進んでいきます。
このように、我が国の医療保険財政は厳しさを増しており、「医療費の伸びを、我々国民が負担可能な水準に抑える」ための取り組み(医療費適正化)が欠かせない状況となっています。
政府は、▼平均在院日数の短縮による入院医療費の適正化(入院基本料や特定入院料、DPCの包括点数は「1日当たり」の支払い方式であり、在院日数の短縮が入院医療費の縮減に効果的である)▼後発医薬品(ジェネリック医薬品、後発品)の使用促進による薬剤費の圧縮▼病院の機能分化推進と連携の強化▼地域差(ベッド数、外来受療率、平均在院日数など)の是正▼保健事業の充実による健康寿命の延伸―など、さまざまな角度から医療費適正化に向けて取り組んでいます。
このうち後発品に関しては、一昨年(2021年)6月18日に閣議決定された骨太方針2021(経済財政運営と改革の基本方針2021)の中で「後発品の数量シェアを、2023年度末までに全ての都道府県で80%以上とする」との目標を確認しています。
主に大企業の会社員とその家族が加入する健康保険組合全体でも後発品割合の向上に向けて取り組んでおり、今般、今年(2022年)1月時点では「83.3%」であることが明らかにされました(調剤分)。
この数字を見ると「調剤ベースでは80%をクリア」できていることが分かりますが、手放しでは喜べません。次のような2つの課題があるのです。
(1)調剤ベースの健保組合後発品割合は、昨年(2021年)11月から83%台に到達した(昨夏に下落し、持ち直した)が、その後、伸び悩み、再び「停滞」期に入っている
(2)都道府県別にみると依然として大きなバラつきがあり、調剤ベースでも80%以上をクリアできていない県がある(徳島県:79.0%)
さらに、これらの数字は「調剤」ベースであり、調剤・医科・DPC・歯科分の合計でみると「低くなる」ことから、(1)(2)の課題はより深刻に捉える必要があります。
なお、Gem Medで報じているとおり、(1)の問題の背景には「後発品の供給不安」があります。後発品をめぐっては「一部メーカーによる不祥事」(関連記事はこちらとこちら)などに端を発し、供給停止・出荷調整が頻発しています(A医薬品が出荷停止になると、代替薬であるA1医薬品のニーズが高まり品薄になる、そして次なる代替品A2医薬品のニーズが高まり・・・と連鎖していく)。このため医療機関・薬局の努力では解決できない事情により「後発品割合を維持・向上することが困難」な状況が生じています。厚労省は診療報酬上の手当て(供給不安になっている品目を加算算定のベースから除外することを認めるなど、関連記事はこちら)を行っていますが、「供給不安そのものを解消するための取り組み」が切望されています。
また(2)の都道府県間のバラつきは、協会けんぽ(主に中小企業の会社員とその家族が加入)でも同様で、例えば▼後発品割合が進んでいる地域(沖縄県など)の取り組み内容を参考にする▼医療機関や薬局での情報提供、働きかけを強化する―などの対応を強化していくことがさらに重要となってきています(関連記事はこちら)。
上述のように「医療保険の安定的な運営確保」という重要テーマが根底にあることへの理解を関係者全員が深めることが必要不可欠です。
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