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外来診療 経営改善のポイント 看護必要度シミュレーションリリース

薬価中間年改定論議が決着、9300品目の薬価引き下げ、全不採算品の薬価引き上げ、新薬創出等加算品の臨時特例も—中医協・薬価専門部会

2022.12.16.(金)

来年度(2023年度)の薬価中間年改定では、前回2021年度中間年改定と同じく「平均乖離率の0.625倍を超える品目」(今回は乖離率4.375%超)を対象に行う。およそ9300品目が薬価引き下げの対象となる—。

前回中間年改定のような「新型コロナウイルス感染症対応に配慮した一律0.8%緩和」のような措置は行わないが、医薬品の安定供給確保・イノベーション評価の視点から「すべての不採算品(約1100品目)について薬価を引き上げる」「新薬創出・適応外薬解消等促進加算の対象品目のうち、薬価が下がってしまうものがあるが、従前の薬価と遜色ない水準とする措置を行う」といった臨時特例対応をとる—。

さらに急激な為替変動に対応する意味もこめて、【薬価基準収載後の外国平均価格調整】ルールを適用する—。

12月16日に開催された中央社会保険医療協議会・薬価専門部会で、このような「2023年度薬価改定の骨子」案が議論され、方向性について概ね了承されました。今後、改定内容を整理した「骨子」取りまとめ論議に入っていきます。

厚労相・財相によって「改定の対象範囲を広くし、改定幅を緩やかにする」方針を決定

来年度(2023年度)の中間年薬価改定に向けた議論が中医協で続けられています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。

ただし、薬価改定で生まれる「国費財源」については、他の社会保障施策充実にも振り向けられるため、中医協だけで結論を出すことはできません。

この点、12月16日に加藤勝信厚生労働大臣・鈴木俊一財務大臣・松野博一内閣官房長官の3大臣で最終調整・合意が行われ、次のような改定方針が固められました。

(1)国民負担軽減の観点から、「平均乖離率7.0%の0.625倍(=乖離率4.375%)を超える品目」を2023年度薬価改定の対象とする

(2)急激な原材料費の高騰、安定供給問題に対応するため不採算品再算定について臨時・特例的に全品を対象に適用するとともに、イノベーションに配慮する観点から新薬創出等加算の加算額を臨時・特例的に増額し、従前の薬価と遜色ない水準とする対応を行う



これを受けて薬価改定の具体的なルールを決定することとなり、今般、厚生労働省保険局医療課の安川孝志薬剤管理官から「改定の骨子」案が同日の中医協・薬価専門部会に提示されました。

まず改定対象品目は上記(1)のとおり「平均乖離率7.0%の0.625倍(=乖離率4.375%)を超える品目」です。2021年度の前回中間年改定と同じ考え方となりました。

後述する臨時・特例ルールも加味すると、▼薬価引き下げがなされる品目:全体の48%・約9300品目▼薬価が維持される品目:全体の46%・約9000品目▼薬価が引き上げられる品目:全体の6%・約1100品目—となります。これにより薬剤費がどの程度変化するのかは、別途、示される見込みです。

この対象品目について、薬価の引き下げ(「市場実勢価格+2%(調整幅)」となるように新薬価を設定する)が行われます。前回中間年改定で行われた「新型コロナウイルス感染症対策の特例として、引き下げを一律0.8%緩和する」措置はなされません。



また3大臣合意の(2)に対応するため、次の2つの臨時・特例的な対応が行われます。

(a)急激な原材料費の高騰、安定供給問題に対応するため、急激な原材料費の高騰で不採算となっている全品目(不採算状況調査の1100品目)について、「不採算品再算定」を実施して薬価を引き上げる

→不採算品再算定では「成分規格が同一である類似薬の全てが該当する場合に限る」旨の適用制限があるが、今回は適用しない(1品目のみ不採算で、類似薬が不採算でない場合にも、再算定が行われ、薬価が引き上げられる)

→同時に、安定供給を製薬企業に求め、そのフォローアップを実施する

不採算の状況(薬価専門部会1 221207)

不採算の原因調査結果(薬価専門部会2 221207)



(b)新薬創出等加算の対象品目のうち「薬価が下がるもの」について、イノベーションに配慮し、新薬創出等加算の適用後に「現行薬価との価格差の相当程度を特例的に加算し、従前の薬価と遜色ない水準とする」臨時特例的な対応を行う

→新薬創出等加算で下図「灰色の矢印」のように薬価が引き上げられるが、区分II・IIIの品目(新薬創出実績等が相対的に低いメーカーの医薬品など)では「灰色の矢印」の加算があっても薬価が下がってしまう。これを今回、臨時・特例的に「緑色の矢印」の対応を行い、薬価を「従前の薬価と遜色ない水準」とするまで引き上げる(結果、薬価は維持はされず一定程度下がる(上述の「薬価を引き下げる9300品目」の中に含まれる)が、通常改定時よりも下げ幅が相当程度小さくなる)

→具体的な対応方法(どこまで薬価を引き上げるかなど)は、今後の2023年度予算案編成の過程で調整される

2023年度薬価改定では、新薬創出等加算品でも薬価が下がってしまう品目に対する臨時特例措置を行う(中医協・薬価専門部会1 221216)



また、2021年度の前回中間年改定と同じく、2023年度には「市場実勢価格に連動する薬価算定ルール」が適用されますが、安川薬剤管理官は「【薬価基準収載後の外国平均価格調整】ルールについて、薬価収載時に参照できる外国価格がないなど一定の要件を満たす品目について薬価改定の際に1回に限り外国平均価格調整を行うもの(言わば「外国における実勢価格が明らかになる」と言え、実勢価格連動ルールの1つとみなせる)であり、今回の改定において実施する」考えを明らかにしました。為替変動等で外国価格と国内価格に大きな変動が出ることへの対応効果もあるものと考えられます。

2023年度改定では「収載後の外国平均価格調整」も行う(中医協・薬価専門部会2 221216)



他方、これまで薬価部会では「医薬品の安定供給確保は、産業構造・ビジネスモデルの再構築をしなければ解決できない」「日本の医薬品市場の魅力がなくなっており、早急に対応しなければ、優れた医薬品に日本国民がアクセスできなくなる」などの、大きな問題も論点にあがりました。安川薬剤管理官は、これらのテーマについては、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」での議論も踏まえ、2024年度改定に向けて検討していく、との考えを示しています。

なお、医薬品の安定供給確保に向けて、今後、これまでの対応(供給情報開示の徹底など)に加え、今後▼2023年度薬価改定で対応する(上記(a))▼製薬業界と国とで連携しつつ、各医薬品の正確な供給状況について、できる限り迅速に把握・提供する取り組みをを実施する▼安定供給に向けた産業構造を含めた課題について「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」において議論、検討を実施する—考えも安川薬剤管理官から報告されています。

医薬品の安定供給確保に向けた総合的な取り組みを行う(中医協・薬価専門部会3 221216)



委員からは次のようなコメントが出ていますが、こうした骨子案に反対意見は出ていません。今後、改定内容を整理した「骨子」取りまとめ論議に入っていきます。

【改定対象品目について】
▽医薬品の供給不安が長引き拡大するなかで、多くの医薬品が改定対象に据えられたことは厳しい。今後、供給不安が拡大することが懸念される(診療側の長島公之委員:日本医師会常任理事)

▽改定対象が広く設定され残念である。毎年度多くの医薬品の薬価が下がり、薬局在庫の価値も下がっていくことは厳しい(診療側の有澤賢二委員:日本薬剤師会常務理事)

前回中間年改定並みの水準は確保され、「国民負担の抑制・軽減」という中間年改定の最大目的は果たされた(支払側の松本真人委員:健康保険組合連合会理事)

【算定ルール、臨時特例対応など】
▽臨時特例措置はやむを得ないが、供給不安の原因は一部メーカーのGMP違反に端を発しており、医薬品の産業構造・ビジネスモデル構築を同時並行で進めることを要件とすべき。また薬価引き上げにより「安定供給に責任を持てない企業が参入」してきては本末転倒であり、国が監視すべき(長島委員)

▽臨時特例の内容は評価できる。供給不安解消は薬価だけではできないが、「まず薬価で手当てする」点に意味がある。根本的な解決は、有識者検討会の意見も踏まえ、2024年度の薬価制度改革に向けて中医協で具体案を議論すべき(有澤委員)

▽算定ルールについては、健保連の考えとかけ離れており残念である。臨時特例対応は「今回限りの措置」として理解する(松本委員)

▽医薬品の供給不安はますます拡大し、長期化が懸念される。2024年度の薬価制度改革に向け、安定供給確保に向けた「本質的、根本的な議論」を行うべき(支払側の安藤伸樹委員:全国健康保険協会理事長)



なお、診療側の長島委員は「医薬品の供給不安は、医療機関等の負担増につながっている(処方変更の説明など)。薬価だけでなく、医療提供体制・医薬品供給体制全体のパッケージとしての対応を検討すべき」とも訴えましたが、支払側の松本委員は「診療報酬本体の引き上げであれば、それは認められない。処方変更など医療機関の負担も増えていると思うが、最も影響を受けているのは患者である。中には『従前よりも高い医薬品』にやむなく変更された患者もおり、診療報酬本体の引き上げによる患者負担増は認めらない」とすぐさま釘を刺しています。2024年度の次期診療報酬改定に向けても、この点が検討テーマの1つになってくる可能性があります。



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