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2021年度に初の中間年度「薬価改定」、市場実勢価格連動ルールのみ適用するなどの骨子了承―中医協総会(2)

2020.12.18.(金)

2020年の薬価調査結果を踏まえて、乖離率が5%を超える品目(1万2180品目、医療用医薬品の69%)について、来年度(2021年度)に薬価改定(薬価の引き下げ)を行う。ただし、新型コロナウイルス感染症と闘う医療現場の負担等に配慮し、薬価の引き下げ幅について、通常よりも緩やかなものとする―。

また改定にあたって適用するルールは、最低薬価や新薬創出・適応外薬解消等促進加算の加算部分のみとするなど「市場実勢価格に連動するもの」に限定する―。

12月18日に開催された中央社会保険医療協議会・総会および薬価専門部会では、このような「2021年度薬価改定の骨子」も了承しました。

なお、薬剤費が包括されているDPC点数などについての見直しは行われません。

厚労相・財相によって「改定の対象範囲を広くし、改定幅を緩やかにする」方針を決定

2018年度からスタートした薬価制度抜本改革の一環として、「市場実勢価格を適時に薬価に反映して国民負担を抑制するために、従前2年に1度であった薬価改定について、中間年度においても必要な薬価の見直しを行う」【毎年度薬価改定、中間年度改定】方針が明確化されています。

来年度(2021年度)が、初の中間年度となりますが、新型コロナウイルス感染症の対応に追われる医療現場の負担等を考慮し、▼中間年度改定を実施すべきか▼実施する場合には改定ルールをどう考えるか―という議論が行われてきました(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。

この点について12月17日に行われた田村憲久厚生労働大臣と麻生太郎財務大臣との来年度(2021年度)予算案編成に向けた折衝の中で、次のような改定方針が固められました。

(1)「国庫負担軽減の観点からできる限り対象範囲を広くする」ことが適当である状況の下、乖離率5%(平均乖離率8.0%の0.625倍(0.5-0.75倍の中間)に相当)を超える品目を薬価改定の対象とする

(2)新型コロナウイルス感染症の影響を勘案し、薬価の削減幅を0.8%分緩和する(通常の「2%の調整幅」に加えて「0.8%の一定幅」を市場実勢価格等に乗せて、新薬価を決定する)

2021年度の薬価改定では、新型コロナウイルス感染症対応に配慮した特例的なものである(中医協総会(2) 201218)



これを受けて、薬価改定の具体的なルールを決定することとなり、今般「改定の骨子」案が中医協に提示されたものです。

まず改定対象品目は上記(1)のとおり、新薬価算定式は上記(2)のとおりです。この点、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)や有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)らは「新型コロナウイルス感染症で厳しさを増す医療機関等の経営に配慮し、改定影響が最小限になるように対象品目を限定すべきであったが、広範に設定されたことは遺憾である」と批判。これに対し支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「後発品に偏らず、新薬も一定程度改定対象に含まれ、バランスの取れた薬価改定が行われる(後述)」と評価しました。ただし、同じく支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は「一定幅(上述(2))の議論などは中医協でなされていないにも関わらず設定されており遺憾である」と指摘しています。

なお、改定対象品目数は1万2180品目となり、医療用医薬品全体の69%に相当します。また内訳を見ると、▼新薬:1350品目(新薬の59%)▼うち【新薬創出・適応外薬解消等促進加算】の対象品目:240品目(加算対象品目の40%)▼長期収載品:1490品目(長期収載品の88%)▼後発品:8200品目(後発品の83%)▼その他(昭和42年以前収載品目):1140品目(その他品目の31%)―となっています。



また、適用する薬価算定ルールについては、市場実勢価格に連動する▼基礎的医薬品(2020年度改定時に「基礎的医薬品」とされた品目すべてに適用する、など)▼最低薬価(薬剤の剤形ごとに設定)▼新薬創出・適応外薬解消等促進加算の加算のみ(累積控除は行わない)▼後発医薬品等の価格帯―となります。これらは、市場実勢価格に連動するもので、2019年度の消費税対応改定時と同じ内容です。

このほか、▼規格間の価格逆転を防止する調整を行う▼薬価調査で取り引きが確認されなかった医薬品については類似薬を参考に判断する▼2021年度改定は「薬価改定の回数」にはカウントしない―ことも決まりました。

この点、支払側の幸野委員は、かねてから主張している「新薬創出・適応外薬解消等促進加算の累積控除」が盛り込まれない点について、「本来は実施すべきであり、残念である」とコメント。ただし、今後に向けて「薬価改定の在り方そのものをゼロベースで議論すべき」と幸野委員・吉森委員は強く求めたうえで、骨子案に賛成しました。



一方、診療側の松本委員は薬価専門部会では、骨子案への賛否を保留しましたが、別報の「2021年度における診療報酬上の臨時特例措置」と組み合わせて骨子案に賛成しています。薬価が下がる分、医療機関の収益・利益が減ります(現在でも当然のことながら薬価差益があり、これが減少する)が、診療報酬上の臨時特例措置により、その一部が医療機関に還元される点を踏まえたものと言えるでしょう。



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