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市場拡大再算定や基礎的医薬品のルールを2020年度改定に向けてどう見直すべきか―中医協・薬価専門部会

2019.11.13.(水)

2020年度の次期薬価制度改革に向けて、基礎的医薬品の要件や、市場拡大再算定等のルールについて一定の見直しを行うべきか―。

11月8日に開催された中央社会保険医療協議会・薬価専門部会で、こういった議論が行われました。

11月8日に開催された、「第159回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」

基礎的医薬品の要件見直し、中医協委員は「慎重」姿勢

2020年度の次期薬価制度改革に向け、薬価専門部会では第2ラウンド論議を本格化させています。11月8日の会合では、▼基礎的医薬品への対応の在り方▼再算定―を議題としました。

前者の「基礎的医薬品」は、▼薬価基準に収載されてから25年以上経過し、かつ成分全体・銘柄の乖離率が「すべての既収載品の平均乖離率」以下▼「⼀般的な診療ガイドラインに記載され、広く医療機関で使⽤されている」など汎⽤性がある▼過去の不採算品再算定品⽬、ならびに古くから医療の基盤となっている病原⽣物に対する医薬品、医療⽤⿇薬、⽣薬、軟膏基剤および⻭科⽤局所⿇酔剤―のすべてに該当する既収載品について、改定前薬価を維持する仕組みです。

基礎的医薬品(中医協・薬価専門部会1 191108)



医療現場で欠かせない基礎的な医薬品の製造・販売を継続するために導入されたルールですが、同様に「医療現場で欠かせない医薬品の価格を下支えする」ルールとして▼最低薬価(剤型に応じて医薬品の最低価格を定める)▼不採算品目再算定(価格が低くなり採算が取れなくなる医薬品について、原価計算方式で薬価設定を可能とする)―があります。

厚生労働省保険局医療課の田宮憲一薬剤管理官は、このうち「不採算品目再算定」ルールについて、▼薬価収載から25年以上経過した医薬品が大勢を占めること(2014年度改定時には対象品目の98.0%、16年度改定時には90.1%、18年度改定時には91.8%が25以上経過)▼一度、不採算品目再算定の対象となった後にも、薬価改定のたびに価格が下がり、また後発品が出現すればG1・G2ルールにより後発品価格に近付くよう薬価が引き下げられること―などを紹介。製薬メーカーサイドは「不採算品目再算定の対象となった直後の薬価改定から、基礎的医薬品として取り扱う、つまり、改定前薬価を維持する」という仕組みを検討してはどうかと提案していることを踏まえ、基礎的医薬品の要件をどう考えるべきかという論点が提示されました。

メーカーサイドの要望(中医協・薬価専門部会2 191108)



この点、「医療上、欠かせない医薬品の安定供給は非常に重要である」ことに疑いはないものの、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)、支払側の吉本俊和委員(全国健康保険協会理事)ともに「なし崩し的な緩和は、それぞれにルールの境界を曖昧にしてしまう。現行ルールで問題となるケースはどの程度あるのかを見て、慎重に検討すべきである」旨の考えを述べました。

田宮薬剤管理官も「差し迫った事態にあるとは認識していない」とコメントしており、ルール見直しの可能性はそれほど高くはなさそうです。

市場拡大再算定ルールなどについて微調整を行う

医薬品の市場が当初の想定を超えて拡大した場合には、▼市場拡大再算定(当初の想定を大きく超えて医薬品の市場が拡大した場合に、薬価を引き下げる仕組み)▼四半期再算定(効能効果追加や用法用量変更があり、市場が大きく拡大した場合に、薬価を迅速に引き下げる仕組み)―などが行われます。

医療保険制度の持続性を担保するための仕組みですが、医薬品を開発・製造するメーカーにとっては「予測可能性を阻害し、経営的に大きな痛手となる」ルールです。しかも、一部ですが「複数回、市場拡大再算定の対象となった品目もあります(メーカーには相当の痛手となる)。

複数回、市場再算定を受けた品目の例(中医協・薬価専門部会3 191108)



この点、田宮薬剤管理官は▼再度、市場拡⼤再算定を受ける品⽬では、前回の再算定の際に下げ⽌めの対象となっていた場合、これを考慮して次の再算定を⾏う(下げ止めがなかったとして年間販売額を算出する)こととしてはどうか▼市場拡⼤再算定と同様に、過去に⽤法⽤量変化再算定(市場規模が変化するものに限る)を受けた品目も、以降に市場拡⼤再算定の適⽤の是⾮を判断する際は、前回の再算定時点における年間販売額を基準にすることを明確化してはどうか―との論点を提示。診療側の松本委員、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)ともに賛意を示しています。

主たる効能が変化した場合の再算定ルールを一部見直し

ある医薬品について効能が追加されることによって「主たる効能・効果」が変更となることがあります。

例えば、従前「下肢整形外科⼿術施⾏患者における静脈⾎栓塞栓症の発症抑制」が主たる効能であった「リクシアナ錠」(エドキサバントシル酸塩水和物)は、「⾮弁膜症性⼼房細動患者における虚⾎性脳卒中および全⾝性塞栓症の発症抑制」の効能が追加され、この市場が大きかったことから、主たる効能が変更となりました。

効能効果再算定の例(中医協・薬価専門部会4 191108)



こうした場合、次の再算定の対象となりえます。

▽効能変化再算定
→変更後の主たる効能・効果に係る類似薬がある場合は、当該類似薬の価格に近づくように薬価を見直す(変更後の主たる効能効果に係る市場規模が、変更前に⽐べて⼤きいほど、変化の程度が⼤きくなる)

▽⽤法⽤量変化再算定
→主たる効能・効果の変更に伴い⽤法・⽤量に変更があり、市場規模が大幅に拡大した場合は、変更前後で「それぞれの主たる効能・効果に関する1日薬価」が同額になるように薬価を見直す



ただし、こうした再算定は▼変更後の主たる効能効果に係る薬理作⽤類似薬が収載されている場合に適用される(効能変化再算定のみ)▼市場規模が10倍以上、100億円を超える場合のみ適用される(両再算定)―という限定があります。

このため「1日薬価が比較薬に比べて高く、市場規模の急激な拡⼤が懸念される」ものの、上記要件に該当しないために、再算定が行われない医薬品が出てきます。これを放置することは、医薬品間のバランスはもちろん、医療保険の持続可能性確保にとって好ましくないことから、診療側委員・支払側委員ともに「制度上の対応が必要」との考えを述べています。たたし、支払側の吉森委員は「具体的に、どういった品目で問題が生じるのかを明示してほしい」とも要請しています。



なお、2020年度にも、市場実勢価格を踏まえた薬価改定が行われます。通常であれば「改定の前年9月を対象とした薬価調査」結果をベースに改定が行われますが、▼2019年10月には消費税対応改定が行われたため、2019年9月のデータは市場の実態を反映しているとは言い難い▼2019年10月以降に調査を行い、その結果を2020年4月の薬価改定に反映させることは時間的に極めて困難である―という問題があります。

この点、田宮薬剤管理官は「通常どおり、2019年度の薬価調査結果をベースに薬価改定を行う」考えを提示。診療側の松本委員、支払側の吉森委員は、「特例的に認めざるを得ない」との考えを示しました。

2020年度の市場実勢価格反映イメージ(中医協・薬価専門部会5 191108)



市場実勢価格を反映した薬価改定は、「市場実勢価格に調整幅2%を上乗せ」して改定後薬価を設定するものと言えます。この点、幸野委員は「2019年度の消費税改定時に2%の調整幅が載せられており、2020年度には不要なのではないか」と指摘しましたが、田宮薬剤管理官は「納入価格は医療機関によって異なるなどの理由で調整幅が置かれている。調整幅を設けなければ流通に支障が出てしまう」と、「調整幅の意味、役割」について理解を求めています。

 
 
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