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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

再生医療等製品、独自の薬価算定ルールを設けるべきか―中医協・薬価専門部会

2019.9.12.(木)

 高額になりがちな再生医療等製品の薬価について、その特殊性を踏まえた「独自の薬価算定ルール」を設けるべきだろうか。また、保険適用後に新たな有用性が客観的に示された場合、改めて補正加算等を上乗せするべきだろうか―。

 9月11日に開催された中央社会保険医療協議会・薬価専門部会で、こういった議論が行われました。

9月11日に開催された、「第155回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」

 

再生医療等製品、流通などで一般的な医薬品とは異なる大きなコストが生じる

 2020年度の薬価制度改革に向けて、中医協では第2ラウンドの議論を開始しました。今後、製薬メーカーなど関係者のヒアリングも交えて議論を深め、年内(2019年内)に改革の骨子を取りまとめる予定です(関連記事はこちらこちらこちら)。

 第2ラウンドの主な検討項目として、厚生労働省保険局医療課の田宮憲一薬剤管理官は▼薬価算定方式の妥当性・正確性の向上▼イノベーションの評価▼新薬創出・適応外薬解消等促進加算▼⻑期収載品の段階的引下げまでの期間の在り方▼再算定▼後発医薬品の薬価の在り方▼基礎的医薬品への対応の在り方▼2020年度改定における実勢価の反映―などを提示。9月11日には、このうち▼薬価算定方式の妥当性・正確性の向上▼イノベーションの評価―の2点について議論を行いました。

 
 まず「薬価算定方式の妥当性・正確性の向上」に関しては、再生医療等製品の価格設定をどう考えるかが重要です。ヒトや動物の細胞に加工を施した再生医療等製品の中には、極めて高額で、医療保険財政に大きな与える影響を与えるものもあるためです。例えば、今年(2019年)5月に保険適用された、画期的な白血病・悪性リンパ腫治療薬である「キムリア点滴静注」は約3349万円の薬価が設定されています(関連記事はこちら)。

 
再生医療等製品は、その特性等に応じて「医薬品として扱う」ケース、「医療材料として扱うケース」がありますが、いずれにおいても類似品のない場合が多く、営業利益や流通経費、原料などの費用を積み上げる「原価計算方式」で価格設定をすることが多くなります。

このうち「流通」について、再生医療等製品では▼変質を防ぐために低温での輸送が必要となる▼患者本人の細胞を原料として当該患者のみに使用できる「自家細胞由来製品」では、大量輸送などができない―ことなどから「高コスト」になりがちです。

また、優れた医薬品については各種の補正加算(画期性加算(70-120%)、有用性加算(5-60%)、小児加算(5-20%)など)が付加されますが、もともとが高額である再生医療等製品では、同じ加算率であっても、付加される加算額は極めて大きくなります。キムリア点滴静注では、補正加算額だけで約276万円が付加されます。

 
こうした状況、さらにこれまでの中医協論議を踏まえて、「再生医療等製品について独自の価格体系を作るかどうか」を検討してほしいと田宮薬剤管理官は中医協委員に要請しました。

この点について製薬メーカー代表として参画する上出厚志専門委員(アステラス製薬株式会社上席執行役員渉外部長)は、「流通の特殊性や、1回の投与で治療が終了する製品が存在するケースがあることなどを踏まえた独自の価格設定ルールを是非検討してほしい」と要望しましたが、支払側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)や今村聡委員(日本医師会副会長)は「再生医療等製品はこれまで4品目しか保険適用されておらず、その特性等もさまざまである。独自の価格設定ルール構築はまだ難しいのではないか」と慎重な姿勢を示しています。また、支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は「費用対効果評価の論議を参考に専門組織などを設け、独自の価格設定ルールの研究を速やかに始めるべき」と提案しています。

なお、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合理事)は補正加算について、「2018年度の前回改定では原価の開示度に応じて補正加算に差を設ける仕組みが導入されたが、加算のベースが製造原価全体に拡大された(従前は営業利益のみ)ため、開示度が低く(つまり加算率が小さい)とも、加算額が大きくなることとなった。このため原価の開示が思うように進んでいない。再生医療等製品など加算額が大きくなるケースでは、補正加算に傾斜を設けるべきである」と主張しています。

保険適用後に有用性が客観的に示された医薬品、改めて補正加算などを付加すべきか

 また、「薬価算定方式の妥当性・正確性の向上」に関して、田宮薬剤管理官は「類似薬効比較方式(I)で算定され、かつ新薬創出・適応外薬解消等促進加算(以下、新薬創出等加算)の対象外である新薬」の薬価について、「新薬創出等加算分を除外すべきかどうか」という論点も提示しました。

 新薬の薬価設定においては、まず「類似薬がある場合には、その医薬品と同じ価格とする(1日薬価を同じくする)」という類似薬効比較方式を探り、類似薬がない場合に原価を積み上げて薬価を考える「原価計算方式」が採用されます。

 ただし、新規性の乏しい新薬については、類似薬の薬価から「新薬創出等加算分を除外」した価格に合わせて薬価が設定されます(類似薬効比較方式(II))。

 
 この点、「新規性がある」として、新薬創出等加算を含めた薬価と同じ価格に設定される新薬(類似薬効比較方式(I))についても、当該医薬品が新薬創出等加算の対象外である場合、あるいは後に加算の対象外となった場合には、類似薬効比較方式(II)と同様に「新薬創出等加算分を除外した価格に合わせて薬価を考えるべきではないか」という点が検討されます。新薬創出等加算の適用には厳格な要件が設定されており、「その要件に合致しない類似の新薬にまで新薬創出等加算分を乗せること問題ではないか」との考えに基づく論点です。

松本委員は「保険適用されてから一定期間の間に有用性等が示されない場合には、しかるべきタイミングで、新薬創出等加算分を除外(過去の加算分を含めて薬価を引き下げる)するべきではないか」との考えを示しました。

また幸野委員は、▼新薬の保険適用時点では新薬創出等加算分を除外して薬価を設定する▼後に効能効果追加等が行われた場合には、その有用性を評価する―という仕組みへの見直しを提案しました。

後者は「イノベーション評価」の論点にも含まれるもので、現在「保険適用後に小児、希少疾病等の効能を新たに追加した薬剤では、薬価改定時に加算を行う」という仕組みを拡大し、「より広範に保険適用後の有用性評価を行う」ことを検討してはどうかという論点です。幸野委員は「後に有用性が確認されれば価格引き上げが行われるので、保険適用時点で新薬創出等加算分を除外した価格設定を行っても問題ないではないか。逆に新薬創出等加算を含めた薬価設定では、当初から『ある程度の有用性を評価』しており、後に有用性を再評価するのでは、評価の重複になるのではないか」との考えを示しました。

 
これに対し上出専門委員は、「保険適用時の評価と、保険適用後の効能効果追加に関する評価とは、別の次元のものである」旨の強い反論を行いました。あるA医薬品の薬価については、▼保険適用時には「類似薬と同じ効能効果」という価値に着目して価格を設定する(類似薬と同一の薬価(新薬創出等加算分を含む)とする)▼効能効果追加がなされた場合には、当初(保険適用時)に判明していなかった新たな価値を別途評価する(加算を付加する)―というもので、評価の対象が異なり、「重複評価には該当しない」との考えです。

専門委員の考え方が論理的と考えられますが、一方で「厳しい医療保険財政」を考慮した場合、幸野委員の指摘を無視することも難しそうです。今後の議論に注目すべきでしょう。

 
 

 

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