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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

「合併で400床以上となった病院」での地域包括ケア病棟設置、調整会議の合意等を要件に認める―中医協総会(1)

2020.6.10.(水)

地域における医療機能の分化・連携の強化を推進するために、病院の再編・統合が進んでいる。これを阻害しないよう、複数病院の合併で許可病床数が400床以上になる場合には、▼合併前にいずれかの病院が地域包括ケア病棟を有していた▼合併後の病院が地域包括ケア病棟を保有することについて地域医療構想調整が合意している―ことなどを条件に、「1病棟に限って地域包括ケア病棟を設置する」ことを認める―。

6月9日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こういった見直し方針が承認されました。

近く関連通知(基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて)の改正が行われ、そこからの適用となる見込みです。

2020年度改定で「400床以上病院」では地域包括ケア病棟の新設が不可に

2020年度の診療報酬改定では、地域包括ケア病棟について次のような非常に大きな見直しが行われました(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。

(1)許可病床数400床以上の病院に設置する「地域包括ケア病棟」について、入院患者のうち同一医療機関内の一般病棟から転棟した患者の割合が6割以上である場合に入院料を減額する
(2)許可病床数400床以上の病院について、地域包括ケア病棟の新設を認めない(ただし既に保有する地域包括ケア病棟は維持できる)
(3)同一保険医療機関内のDPC病棟から地域包括ケア病棟(ここは病棟のみ、病室は除外)に転棟した患者について、DPC点数表の入院期間IIまでの間、DPC点数を算定する
(4)地域包括ケア病棟入院料1・3の実績に係る基準を見直す
(5)地域包括ケア病棟入院料の施設基準において「入退院支援・地域連携業務を担う部門の設置」を要件(義務化)とする
(6)地域包括ケア病棟における疾患別リハビリテーション提供について「患者の入棟時に測定したADLスコア結果等を参考にリハビリの必要性を判断すること」を要件とする
(7)地域包括ケア病棟入院料の施設基準において「適切な意思決定支援に関する指針(いわゆるACP)を定めていること」を要件とする

地域包括ケア病棟の見直しの概要(2020年度改定告示・通知(7)1 200305)

地域包括ケア病棟入院料等の新施設基準概要(2020年度改定告示・通知(7)2 200305)



このうち(2)の見直しは、「病院・病棟の機能分化を進める」という視点に立ったものです。

従前から中医協において「大規模な公立・公的病院が、旧7対1(現急性期一般1)を維持するために地域包括ケア病棟を設置することは好ましくないのではないか」との指摘があります。旧7対1病棟の一部を地域包括ケア病棟に転換し、そこに「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度を満たさなくなった患者」を転棟させることで、旧7対1の重症患者割合(2020年度改定で看護必要度Iでは31%以上、看護必要度IIでは29%以上)を維持しようという手法が考えられますが、「目に余る。重症を脱した患者は地域の回復期機能を持つ病院へ『転院』させることで、地域における医療機能の分化・連携の強化が適正に進む。大病院が地域包括ケア病棟を持つために、この流れが阻害されてしまっている」という指摘があるのです。

また、地域医療構想の実現に向けた議論を行う「地域医療構想に関するワーキンググループ」(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)でも、「大規模な公立・公的病院は、財政的な優遇(補助金投入や税制優遇)を受けており、原則として(地域にその病院しかない場合などを除く)公立・公的でなくても果たせる回復期・慢性期の機能(地域包括ケア病棟もその1つに位置付けられる)を持つべきではない」という指摘が出ています。

このため2016年度の診療報酬改定では、「許可病床数500床以上(その後、400床以上に見直し)の病院では、地域包括ケア病棟の新設は1病棟のみ認める」との制限が設けられました。

さらに、2020年度の今回改定では、この制限を一歩押し進め「許可病床数400床以上の病院では、地域包括ケア病棟の新設は認めない」(ただし、すでに保有(2020年3月1日までに届け出あり)している地域包括ケア病棟の廃止までは求めない)こととされました。

病院の再編・統合が進む中で「400床以上病院での地ケア病棟新設不可」がネックに

一方、この見直しによって、地域では、例えば次のような問題が浮上していることが明らかとなりました。

▽350床の公立病院と150床の民間病院とが合併し、450床の新公立病院を新設する(50床減少となる)際に、400床以上となる新病院では地域包括ケア病棟が設置できない(上記(2))。合併は、地域における救急医療・小児医療・在宅医療へのニーズに十分に対応できる医療提供体制の整備を目指すものだが、地域包括ケア病棟が設置できないため、医療提供体制の見直しが妨げられてしまう―。

病院の再編・統合において「400床以上病院における地域包括ケア病棟の新設制限」がネックとなる事例が生じている(中医協総会(1)1 200609)



限られた医療資源を効果的・効率的に提供するためには、医療機能の集約化が必要になるケースが少なくありません(例えば救急医療や周産期医療などについて、散在する医療資源(医師や看護師、助産師など)を特定の医療機関に集中させるなど)。こうした集約化には、▼医療の質の向上(Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンと米国メイヨー・クリニックとの共同研究では「症例数の増加により、医療の質が向上する」ことが分かっている)▼医療スタッフの負担軽減(つまり働き方改革の実現)―などのメリットもあります。

人工膝関節置換術における症例数と術後合併症の関係



しかし、例えば医療資源が非常に限られている地域では、1つの公立・公的病院が「高度急性期から回復期、慢性期までさまざまな機能を持たなければならない」状況が生まれます。また、在宅医療提供を行う際には「急変時の後方病床」確保が重要となり、その後方病床として地域包括ケア病棟が重要な役割を果たします(いわゆるsub acute患者では、一般病棟ではなく、地域包括ケア病棟への入棟が好ましいケースが少なくない)。

そうした中で、上記(2)の見直しによる制限が、「地域における医療提供体制改革、とりわけ病院の再編・統合を妨げる」方向に作用している可能性があるのです。これを放置すれば、地域における医療提供体制改革がストップしてしまうことも生じえます。

地域医療構想調整会議の合意等を条件に、合併後病院での地域包括ケア病棟新設を認める

こうした点を踏まえて厚生労働省保険局医療課の森光敬子課長は、次のような見直し案を提示しました。

▽地域医療構想の実現のため、再編・統合によって許可病床数が400床以上となる場合には、下記3点を要件として「地域包括ケア病棟入院料の届け出」を1病棟に限って認める

【要件】
(i)複数の病院の再編・統合を伴う医療提供体制の見直しであること
(ii)再編・統合対象となる病院のいずれかが地域包括ケア病棟を有していること(地域包括ケア病棟を有さない病院同士の合併後に、地域包括ケア病棟を新設することは認められない)
(iii)地域医療構想調整会議において「再編・統合後の病院が引き続き地域包括ケア病棟を有する必要がある」点について合意を得ていること



この見直し提案に対し、診療側の島弘志委員(日本病院会副会長)は「『これまでに地域包括ケア病棟を有していない病院同士の合併では、地域包括ケア病棟の新設は不可』とし、地域包括ケア病棟保有の必要性を地域医療構想調整会議で確認することを求めている。さらに保有可能な地域包括ケア病棟は1病棟に限定されており、これまでの改定内容等とも整合性が取れ、理に適っている」と賛成。

また支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)も、この提案に賛意を示したうえで「地域医療構想調整会議における議論や同意の内容を見える化する必要がある」と指摘。例えば、 A200【総合入院体制加算】について、地域医療構想調整会議の合意を条件として「小児科、産科または産婦人科の標榜・入院医療提供を行わない」ことが認められており(これも地域における医療機能の分化・連携の強化を推進するため)、その際には施設基準の届け出にあたって「合意を得た会議の概要を書面(届け出医療機関による作成で可)にまとめたものを提出する」ことが求められている点などを参考にするよう幸野委員は求めています。

この点、森光医療課長は「届け出手続きの中で対応したい」と答弁しており、厚労省保険局医療課の担当者も中医協終了後の記者会見で「総合入院体制加算の取り扱いに倣う」考えを示しています。



なお、病院の再編・合併を推進する方策として、2020年度の厚労省予算では「複数の病院が合併し、合併後に総病床数が1割以上削減されるケースなどについて、補助(言わば逸失利益の補填)を行う」こととされています(2021年度以降も消費税財源を用いた新たな支援の仕組みを構築する)。今回の地域包括ケア病棟設置特例においては「合併後に総病床数を削減(減床)する」などの要件は設けられておらず、より柔軟に再編・統合を支援するものとなりそうです。ただし、個別の合併事例について地域医療構想調整会議で「地域包括ケア病棟の保有が好ましいか」を判断するために、「従前、地域包括ケア病棟を保有していたので、合併後も自動的に保有できる」という単純な構図にはならないでしょう(逆に合併後に増床となる(200床病院と200床病院が合併し、450床病院を新設するなど)ものの「地域包括ケア病棟の設置が必要」と判断されるケースも想定される)。



ところで、許可病床数が400床以上の病院における地域包括ケア病棟には、上記(1)のとおり「入院患者のうち同一医療機関内の一般病棟から転棟した患者の割合が6割以上である場合に入院料を減額(1割の減額)する」(ただし今年(2020年)9月30日までの経過措置あり)こととなっている点に留意が必要です。当然、今回の見直しで「許可病床数400床以上の合併後病院に地域包括ケア病棟の設置」が認められたケースでも、(1)の減算規定が適用されます。地域包括ケア病棟を保有する病院(とりわけ許可病床数400床以上の病院)では、▼自院の急性期病棟の在り方を見直す▼地域包括ケア病棟等を持つ他の医療機関との連携を強化する▼自院の機能(急性期を維持するのか)、規模を改めて見直す―ことが極めて重要になってきています。合併を含めた再編・統合に当たっても、こうした点を十分に検討することが重要です。



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がんゲノム医療の推進に向け、遺伝子パネル検査を6月から保険収載―中医協総会(1)
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診療報酬で生活習慣病の重症化予防、治療と仕事の両立をどう進めていくか―中医協総会(2)
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中医協・基本小委、支払側が「看護必要度や地域包括ケア病棟などの厳格化」を強く要望
2020年度診療報酬改定に向け、「看護必要度」「地域包括ケア病棟」などの課題を整理―入院医療分科会
ICU、看護必要度とSOFAスコアを組み合わせた「新たな患者評価指標」を検討せよ―入院医療分科会(2)
A項目1点・B項目3点のみ患者、療養病棟で該当患者割合が高いが、急性期の評価指標に相応しいか―入院医療分科会(1)
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ICUの「重症患者」受け入れ状況、どのように測定・評価すべきか―入院医療分科会(2)
DPC病棟から地域包括ケア病棟への転棟、地ケア病棟入院料を算定すべきか、DPC点数を継続算定すべきか―入院医療分科会(1)
総合入院体制加算、地域医療構想の実現や病床機能分化を阻害していないか?―入院医療分科会(3)
救命救急1・3は救命救急2・4と患者像が全く異なる、看護必要度評価をどう考えるべきか―入院医療分科会(2)
「急性期一般2・3への移行」と「看護必要度IIの義務化」を分離して進めてはどうか―入院医療分科会(1)
【短期滞在手術等基本料3】、下肢静脈瘤手術などは外来実施が相当数を占める―入院医療分科会(4)
診療データ提出を小規模病院にも義務化し、急性期病棟にも要介護情報等提出を求めてはどうか―入院医療分科会(3)
資源投入量が少なく・在院日数も短いDPC病院、DPC制度を歪めている可能性―入院医療分科会(2)
看護必要度の「A1・B3のみ」等、急性期入院医療の評価指標として妥当か―入院医療分科会(1)
回復期リハ病棟でのFIM評価、療養病棟での中心静脈栄養実施、適切に行われているか検証を―入院医療分科会(2)
入院で実施されていない「免疫抑制剤の内服」「膀胱脱手術」など、看護必要度の評価対象から除くべきか―入院医療分科会(1)
回復期リハビリ病棟から退棟後の医療提供、どのように評価し推進すべきか―入院医療分科会(3)
地域包括ケア病棟の実績評価要件、在宅医療提供の内容に大きな偏り―入院医療分科会(2)
点数が「DPC<地域包括ケア」時点にDPC病棟からの転棟が集中、健全なのか―入院医療分科会(1)
療養病棟に入院する医療区分3の患者、退院患者の8割弱が「死亡」退院―入院医療分科会(2)
入退院支援加算1の「病棟への入退院支援スタッフ配置」要件、緩和すべきか―入院医療分科会(1)
介護医療院の整備など進め、患者・家族の「退院後の介護不安」解消を図るべき―入院医療分科会(2)
急性期一般1では小規模病院ほど認知症入院患者が多いが、看護必要度への影響は―入院医療分科会(1)
看護必要度IとIIとで重症患者割合に大きな乖離、要因を詳しく分析せよ―中医協・基本小委
自院の急性期患者の転棟先として、地域包括ケア病棟を選択することは「問題」なのか―入院医療分科会(2)
7対1から急性期2・3への移行は3%強にとどまる、看護必要度IIの採用は2割弱―入院医療分科会(1)
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2018年度改定で新設された【急性期一般入院料1】を選択する理由はどこにあるのか―入院医療分科会
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