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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

総合入院体制加算、地域医療構想調整会議の合意あれば「産科、小児科」の標榜・入院医療提供せずとも可―厚労省

2020.3.5.(木)

お伝えしているとおり、厚生労働省は3月5日に、2020年度診療報酬に関する関係告示の交付・通知の発出を行いました。

Gem Medでは、順次、告示・通知内容をお伝えしていきます。前回は「急性期一般病棟」に焦点を合わせており、今回は関連の深い「総合入院体制加算」に関連する事項を眺めてみましょう。

2020年度診療報酬改定に関する厚労省サイトはこちら(告示・通知・関係資料などが無料でダウンロードできます)

地域における医療機能の集約を図るために、産科・小児科の標榜等要件を弾力化

【総合入院体制加算】は、総合的かつ専門的な急性期医療を提供する一般病院を評価する加算です。一時は「特定機能病院並みの医療提供を行う一般病院」を評価するものとも説明され、高い点数(加算1:240点、加算2:180点、加算3:120)が設定され、すべての入院患者について入院期間中、毎日算定可能となります。2020年度改定では、大きく次のような見直しが行われます。

なお、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の見直しに合わせて、総合入院体制加算における重症患者割合の基準値も、▼加算1・2:看護必要度Iで35%以上(従前から変更なし)、看護必要度IIで33%以上(同3ポイント増)▼加算3:看護必要度Iで32%以上(同変更なし)、看護必要度IIで30%以上(同3ポイント増)―と見直されます。

(1)加算1-3の共通基準として「内科、精神科、小児科、外科、整形外科、脳神経外科および産科・産婦人科を標榜し、それらに係る入院医療を提供している」「精神科につき24時間対応できる体制があること」が求められているが、地域医療構想調整会議の合意を条件として産科・産婦人科と小児科の要件を弾力化する

(2)「医療従事者の負担軽減・処遇改善計画」の規定を見直す



まず(1)の「各科標榜等」要件は、上述の「総合的かつ専門的な急性期医療を提供する」という加算の趣旨に鑑みて設定されているものです。

しかし、地域にA・B病院があり、両方が【総合入院体制加算】を届け出ていたとします。少子化が進む中で、小児科や産科の患者数が減少し「A病院に小児科・産科機能を集約することが必要」という地域医療再編計画が持ち上がるケースも少なくありませんが、その際にB病院では「小児科・産科機能がなくなれば【総合入院体制加算】を届け出られなくなる。これでは収益が大きく減少してしまう」と考え、この計画に躊躇してしまうのではないかという問題が地域で生じていると指摘されます。これでは、地域の医療機能を集約することができません。医療機能の集約が進まなければ症例が分散してしまいます。Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)と米国メイヨークリニックとの共同研究では「症例数と医療の質とは相関する」ことが分かっており、症例の分散は「医療の質」向上も阻害してしまいます。

人工膝関節置換術における症例数と術後合併症の関係



そこで、2020年度改定では、「地域において質の高い医療提供体制を確保する観点から、医療機関間で医療機能の再編・統合を行うことについて地域医療構想調整会議で合意を得た場合に限り、『小児科、産科また産婦人科の標榜および当該診療科に係る入院医療の提供』を行っていない場合であっても、施設基準を満たしているものとする」との見直しが行われます。

この点、施設基準の解釈通知(基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて)を眺めると、「加算1のみ」の特例のように見えますが、加算1-3のすべてが対象となります。近く厚労省から「修正」の通知が示される見込みです。

総合入院体制加算の見直し1(2020年度改定告示・通知(2)1 200305)

「特定行為研修を修了した看護師の配置・活用」を総合入院体制加算取得病院で進める

また【総合入院体制加算】を届け出るためには、▼医療従事者の負担軽減・処遇の改善に関し、勤務状況を把握し、その改善の必要性等を提言する責任者の配置▼「医療従事者の負担軽減・処遇改善に資する計画」の作成―などが求められるなど、「医師にとどまらず、医療従事者全体の負担軽減・処遇改善を評価する」側面も併せ持った加算となっています。

医師をはじめとする医療従事者が、非常に過酷な勤務環境にあり、健康・生命の確保が重要とされていることから、2020年度改定では「医師、医療従事者の働き方改革・負担軽減」が重要課題に据えられました。

この1方策として、(2)のように【総合入院体制加算】における「医療従事者の負担軽減・処遇改善」要件についても見直しが行われるものです

まず、管理者によるマネジメントを推進する観点から、「多職種からなる役割分担推進のための委員会・会議」において、年1回以上当該病院の管理者が出席することが要件とされます。これは、【医師事務作業補助体制加算】、処置・手術の【休日加算1】【時間外加算1】【深夜加算1】についても同様です。



また、「医療従事者の負担軽減・処遇改善計画」の内容と項目数が見直されます。

内容については、現在、▼外来診療時間の短縮、地域の他医療機関との連携などの外来縮小(許可病床数400床以上の病院では必須)▼院内保育所の設置(夜間帯の保育や病児保育を含むことが望ましい)▼医師事務作業補助者の配置による病院勤務医の事務作業の負担軽減▼病院勤務医の時間外・休日・深夜の対応の負担軽減・処遇改善▼看護補助者の配置による看護職員の負担軽減―の5項目ですが、ここに▼特定行為研修修了者である看護師の複数名配置および活用による医師負担軽減▼院内助産・助産師外来の開設による医師負担軽減―の2項目が追加されます。

現在「5項目中の2項目実施」が届け出要件となっていますが、2項目の追加により「7項目中の3項目実施」が新たな届け出要件となります。

総合入院体制加算の見直し2(2020年度改定告示・通知(2)2 200305)



このうち「特定行為研修を修了した看護師」は、医師または歯科医師の包括的指示の下で、手順書(プロトコル)に基づいて38の診療上の補助(特定行為)を実施することが認められているもので、勤務医の働き方改革の中で「医師からのタスク・シフティング先」として極めて大きな期待を集めています。

今年(2020年)2月時点では、特定行為研修施設が44都道府県・191機関に拡大されており、さらに今般「特定行為研修を修了した看護師」の活躍の場が広まることで、「養成の拡充」→「活躍の場の拡大」→「さらなる養成の拡充」という正のスパイラルが動き出すと期待できます。なお、「特定行為研修を修了した看護師」は麻酔管理の場においても診療報酬上の評価がなされます。

緩和ケア病棟等を併設する場合、「屋外の喫煙所設置」も可能に

なお、【総合入院体制加算】のうち「緩和ケア病棟入院料、精神病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料(精神病棟に限る)、精神科救急入院料、精神科急性期治療病棟入院料、精神科救急・合併症入院料、精神療養病棟入院料または地域移行機能強化病棟入院料を算定している病棟を有する場合」について、現在は「分煙でも差し支えない」とされているところ、改定後には「敷地内に喫煙所を設けても差し支えない」と見直されます。

健康増進法の規定にあわせたもので、この場合(敷地内の喫煙所設置)には、▼喫煙場所から非喫煙場所にたばこの煙が流れないことを必須とする▼適切な受動喫煙防止措置を講ずるよう努める▼喫煙可能区域を設定した場合には、禁煙区域と喫煙可能区域を明確に表示し、周知を図り、理解と協力を求める▼喫煙可能区域に未成年者や妊婦が立ち入ることがないように措置を講ずる(たばこの煙への曝露があり得ることを注意喚起するポスター等を掲示するなど)―ことが求められます。さらに厚労省はQ&Aの中で「敷地内の喫煙所は『屋外』に限定される」ことを明確にしています。



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2020年度改定論議スタート、小児疾患の特性踏まえた診療報酬体系になっているか―中医協総会(1)
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中医協・基本小委、支払側が「看護必要度や地域包括ケア病棟などの厳格化」を強く要望
2020年度診療報酬改定に向け、「看護必要度」「地域包括ケア病棟」などの課題を整理―入院医療分科会
ICU、看護必要度とSOFAスコアを組み合わせた「新たな患者評価指標」を検討せよ―入院医療分科会(2)
A項目1点・B項目3点のみ患者、療養病棟で該当患者割合が高いが、急性期の評価指標に相応しいか―入院医療分科会(1)
病院病棟への「介護福祉士配置とその評価」を正面から検討すべき時期に来ている―入院医療分科会(3)
ICUの「重症患者」受け入れ状況、どのように測定・評価すべきか―入院医療分科会(2)
DPC病棟から地域包括ケア病棟への転棟、地ケア病棟入院料を算定すべきか、DPC点数を継続算定すべきか―入院医療分科会(1)
総合入院体制加算、地域医療構想の実現や病床機能分化を阻害していないか?―入院医療分科会(3)
救命救急1・3は救命救急2・4と患者像が全く異なる、看護必要度評価をどう考えるべきか―入院医療分科会(2)
「急性期一般2・3への移行」と「看護必要度IIの義務化」を分離して進めてはどうか―入院医療分科会(1)
【短期滞在手術等基本料3】、下肢静脈瘤手術などは外来実施が相当数を占める―入院医療分科会(4)
診療データ提出を小規模病院にも義務化し、急性期病棟にも要介護情報等提出を求めてはどうか―入院医療分科会(3)
資源投入量が少なく・在院日数も短いDPC病院、DPC制度を歪めている可能性―入院医療分科会(2)
看護必要度の「A1・B3のみ」等、急性期入院医療の評価指標として妥当か―入院医療分科会(1)
回復期リハ病棟でのFIM評価、療養病棟での中心静脈栄養実施、適切に行われているか検証を―入院医療分科会(2)
入院で実施されていない「免疫抑制剤の内服」「膀胱脱手術」など、看護必要度の評価対象から除くべきか―入院医療分科会(1)
回復期リハビリ病棟から退棟後の医療提供、どのように評価し推進すべきか―入院医療分科会(3)
地域包括ケア病棟の実績評価要件、在宅医療提供の内容に大きな偏り―入院医療分科会(2)
点数が「DPC<地域包括ケア」時点にDPC病棟からの転棟が集中、健全なのか―入院医療分科会(1)
療養病棟に入院する医療区分3の患者、退院患者の8割弱が「死亡」退院―入院医療分科会(2)
入退院支援加算1の「病棟への入退院支援スタッフ配置」要件、緩和すべきか―入院医療分科会(1)
介護医療院の整備など進め、患者・家族の「退院後の介護不安」解消を図るべき―入院医療分科会(2)
急性期一般1では小規模病院ほど認知症入院患者が多いが、看護必要度への影響は―入院医療分科会(1)
看護必要度IとIIとで重症患者割合に大きな乖離、要因を詳しく分析せよ―中医協・基本小委
自院の急性期患者の転棟先として、地域包括ケア病棟を選択することは「問題」なのか―入院医療分科会(2)
7対1から急性期2・3への移行は3%強にとどまる、看護必要度IIの採用は2割弱―入院医療分科会(1)
2020年度改定、入院医療では「救急」や「認知症対策」なども重要論点に—入院医療分科会(2)
DPC対象病院の要件を見直すべきか、入院日数やDPC病床割合などに着目して検討―入院医療分科会(1)
2018年度改定で新設された【急性期一般入院料1】を選択する理由はどこにあるのか―入院医療分科会
2020年度の次期診療報酬改定に向け、急性期一般入院料や看護必要度などを調査―入院医療分科会



2020年度に「稼働病床数を1割以上削減」した病院、国費で将来の期待利益を補助―厚労省



医師働き方改革、「新たな医療提供体制に向かうチャンス」の可能性も―社保審・医療部会
2020年度診療報酬改定に向け、「入院時食事療養費」の引き上げを求める声も―社保審・医療部会
「医師の働き方改革」を診療報酬でどうサポートするか、基本方針策定段階でも激論―社保審・医療部会
2020年度診療報酬改定「基本方針」論議始まる、病院薬剤師の評価求める声多数―社保審・医療部会



2020年度診療報酬改定を了承、「医師の働き方改革推進」を重点課題に据える―社保審・医療保険部会
2020年度診療報酬改定、「医師の働き方改革」だけでなく「制度の持続可能性」も重点課題とせよ―社保審・医療保険部会
2020年度診療報酬改定、「医師働き方改革」だけでなく「効率化」や「機能分化」なども重点課題ではないか―社保審・医療保険部会
2020年度診療報酬改定、「効率化・合理化の視点」「働き方改革の推進」「費用対効果評価」なども重要視点―社保審・医療保険部会



医師の働き方改革は「勤務医の負担軽減」のアウトカムに着目せよ、フォーミュラリは医師の処方権を侵害するものでない―中医協・支払側
「病院」単位の機能分化を進める診療報酬改定、働き方改革支援する【地域医療体制確保加算】新設に期待―四病協・日医



北大病院、東大病院、済生会福岡総合病院など57機関を看護師特定行為研修機関に新指定、44都道府県で191機関が指定済―厚労省