医療機関間の「双方向の情報連携」を評価するため【診療情報提供料】を見直し―中医協総会(2)
2019.12.23.(月)
かかりつけのA医療機関が、患者の病状を踏まえて専門性の高いB医療機関へ紹介をした場合、患者の同意を得て診療情報提供をAからBへ提供すれば【診療情報提供料(I)】を算定できる。しかし、「B医療機関からA医療機関への情報フィードバック」を評価する診療報酬項目はない。双方向の情報提供を評価するために、新たな診療報酬項目を設けてはどうか―。
12月20に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、こういった点も議論されました。
医療機能の分化・連携の強化が進む中で、「双方向の情報連携」が極めて重要
Gem Medで簡単にご紹介しましたが、「医療機関間の双方向の情報提供」を評価する診療報酬項目が創設される見込みです。
冒頭に述べたように、例えば、糖尿病患者を診療するA医療機関が、糖尿病網膜症の診断・治療等のために眼科のB医療機関へ患者を紹介する場合、「A→B」への情報提供については【診療情報提供料(I)】での評価が行われます。しかし、「B→A」という情報フィードバックは評価されていません。
厚生労働省保険局医療課の森光敬子課長は、「B→A」の情報提供についても診療報酬で評価する考えを提示。A→B・B→Aと「双方向の情報提供」を評価するもので、医療機能の分化・連携の強化を推進する、極めて重要な提案と言えるでしょう。診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)ともにこの提案を歓迎しました。
具体的な算定要件や点数設定を今後詰めていくことになりますが、「B→A」を評価する診療報酬(例えば、【診療情報提供料(III)】の創設など)は、「A→B」を評価する【診療情報提供料(I)】と言わば「セット」、あるいは【診療情報提供料(I)】が「ベースになる」と考えることができるでしょう。
「A→B」を評価する【診療情報提供料(I)】を算定するためには、患者の同意に基づく情報提供が必要であり、当然、「B→A」を評価する新診療報酬も「患者の同意に基づく情報提供」が算定要件になってくると考えられます。この点、「A→B」「B→A」の双方向の情報提供に関する同意を一度に取得するケースが多い(「A→B」は良いが「B→A」は困る、あるいはその逆のケースは想定しにくい)ことも考えられ、どういった要件設定をするのか、今後の動向に留意が必要です。
産科医療機関と他診療科医療機関との「双方向の情報連携」も診療報酬で評価
この情報提供は、「産科医療機関」と「他診療科医療機関」(例えば内科や精神科など)との間でも非常に重要となってきます。妊婦が糖尿病を合併していたり、精神状態に問題がある場合などに、産科のA医療機関から、専門のB医療機関へ患者を紹介することが考えられます。その際、B医療機関が「患者の病状はどうなのか、どういった治療を行ったのか、産科においてどういった点に留意すべきと考えられるのか」などをA医療機関に情報提供した場合に、新たに診療報酬で評価されることになります。妊産婦への医療提供体制を評価するうえで、非常に重要な診療報酬項目となることでしょう。
ところで、妊産婦への医療提供に当たっては「特別の配慮」が必要となることから、2018年度の前回診療報酬改定で【妊婦加算】(初診料や再診料、外来診療料などへの加算)が創設されました。産科以外の医療機関においても、妊婦への積極的な診療を期待するもので、「妊産婦への医療提供体制確保」を目指すものです。
しかし、「妊婦税ではないか。少子化対策に逆行する」という批判が生じ、与党が一方的に「【妊婦加算】の凍結」を決定。
その後、厚労省は「妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会」を設置し、「妊産婦への医療提供体制確保」に向けた方向性を検討。診療報酬での評価に関しては、「妊婦の偶発合併症を積極的に診療する「産婦人科以外の診療科の医師」に対し、経済的なインセンティブ(例えば診療報酬による評価など)を付与することが必要であり、今後、中医協で具体的な要件等(妊婦に配慮した診療、産婦人科の主治医との連携など)の議論がなされることを期待する。ただし、その際、ディスインセンティブにならないような工夫を検討する必要がある」旨の見解がまとめられました。この検討会見解への返答の一つが、上述した「双方向の情報提供の診療報酬での評価」と言えます。
また情報連携以外にも、▼妊産婦が安心安全に受診できるよう「医師への研修」を実施する▼医師が「妊婦の診療について必要な情報」を得られるよう相談窓口を設置する▼都道府県の医療機能情報提供制度を活用し「妊産婦の診療に積極的な医療機関」を周知する―などの対応も進められます。
ただし、「言わば【妊婦加算】に代わる診療報酬項目の設定」については「2022年度以降の診療報酬改定に向けた宿題」に位置付けられました。診療側の松本委員も「妊産婦を取り巻く環境の変化を踏まえ、継続した議論が必要である」との見解を、支払側の幸野委員も「まず、妊婦が医療を受けやすい環境の整備を進め、環境が一定程度整ってきた時点で『ゼロベースで妊婦診療への診療報酬』論議をすべきである」との見解を示しています。
なお、【妊婦加算】について、「廃止」とするのか「凍結継続」とするのかは決まっていませんが、「診療報酬点数表から削除するか否か」だけの問題であり、「【妊婦加算】を算定できない」状況には変化がなく、本質的な問題ではありません。
また、改正薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)において、一定要件の下で「オンライン服薬指導」が全国で解禁されることになりました。これを調剤報酬で評価するために、【薬剤服⽤歴管理指導料】と【在宅患者訪問薬剤管理指導料】の見直し(オンラインでの服薬指導を評価するような要件等見直し)が検討されました。厚労省保険局医療課の田宮憲一薬剤管理官は「在宅以外の患者」「在宅患者」の双方について、オンライン服薬指導での実施要件等を整理しています。
あわせて、処方箋や薬剤の「郵送」に係るコストについて、実費徴収を認める方向性も示されています。
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