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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

2020年度診療報酬改定に向けた議論整理、地域医療構想の実現・働き方改革・オンライン診療などで意見対立―中医協総会

2019.7.24.(水)

 2020年度の次期診療報酬改定に向けた論議が、中央社会保険医療協議会・総会を中心に進められています。

 中医協総会では、今夏(2019年夏)までの第1ラウンドで▼患者の年代別の医療課題▼働き方改革など昨今の医療と関連の深いテーマ―について横断的に議論を行い、秋以降の第2ラウンド(個別テーマ)の議論に結び付けていく方針を決定。厚生労働省保険局医療課の森光敬子課長の「隙間に落ちてしまうテーマ・議論がないようにしたい」「総論時点では、報酬にとらわれ過ぎない議論を行ってもらいたい」との考えによるものです(関連記事はこちら)。

 前回までに第1ラウンド論議を終えており、7月24日の中医協総会では「第1ラウンド論議の整理」が行われました。各項目・テーマ(年代別の課題、昨今の医療と関連の深いテーマ)について▼現状と課題▼論点▼中医協総会で示された主な意見―を整理したものです。すでにお伝えしている内容ですが、秋以降の第2ラウンド論議に備え、ここでは「急性期入院医療に関連の深い項目」を中心にポイントを絞って眺めてみましょう。「既に一定の方向性が見えてきた部分」もあれば、「意見に大きな隔たりがあり、今後も議論を深めるべき部分」もあります。

7月24日に開催された、「第420回 中央社会保険医療協議会 総会」

7月24日に開催された、「第420回 中央社会保険医療協議会 総会」

 

地域医療構想の実現と診療報酬との関係をどう考えるか

 
 まず医療機能の分化・連携の強化として、「地域医療構想」と「診療報酬」との関係が気になるところです。地域医療構想は、2025年における「病床の必要量」を▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期等―の機能別に試算し、これをベースに地域の医療機関が自主的に機能分化・転換等をしていくことを期待するものです。

 この点、「診療報酬で地域医療構想の実現を後押ししていく観点から議論していく必要がある」との指摘がある一方で、「地域によって人口変動や医療提供体制が様々であることから、診療報酬は地域医療構想に寄り添う範囲での対応に留める必要がある」との慎重論もあります。少なくとも、「地域医療構想の実現を診療報酬で積極的に誘導していく」方針は見出されていません(関連記事はこちら)。

秋以降、下部組織「入院医療等の調査・評価分科会」の議論も踏まえて、「入院医療の機能分化・連携の強化」を診療報酬でどう進めていくかが具体的に検討されます。

紹介状なし患者の特別負担、より小規模の病院にも「義務化」していく方向か

機能分化・連携に強く関連する「大病院を紹介状なしに受診する患者の特別負担義務」については、2018年度の前回改定で、従前の「特定機能病院と一般病床500床以上の地域医療支援病院」から「特定機能病院と一般病床400床以上の地域医療支援病院」に拡大されました。まず「地域の診療所や中小病院を受診し、そこから大規模な専門病院を紹介してもらう」という流れを強化するための見直しです。

一方、特別負担徴収が義務化されていない200-399床の病院では、「紹介状なしに受診する患者」から特別負担を徴収することが可能です(病院の判断)。この点、中医協では▼200-399床の病院の9割程度が特別負担を徴収していること▼地域医療支援病院の本来の役割―に照らし、「定額負担徴収義務」をさらに拡大すべきとの指摘が出ています。「300床以上」にまで拡大されるのか、あるいは一気に「200床以上」にまで拡大してしまうのか、秋以降の議論に注目が集まります(関連記事はこちら)。

産科医の負担軽減、診療報酬でどうサポートするか

 また、とりわけ急性期病院にとって重要な▼救急▼小児▼産科領域―に関しては、例えば「人員配置が不十分ながら救急医療を提供する医療機関の評価を検討すべき」「ハイリスク妊産婦指導料の対象について、精神疾患患者のほかにも、合併症としての有病率が高い『妊婦の糖尿病』も対象として検討すべき」「ハイリスク妊婦が増加する一方で、分娩取扱い機関が減少する中で、産科外来への助産師の配置を検討すべき」などの指摘が出ています(関連記事はこちら)。
 
また、後述する働き方改革にも大きく関連する事項であり、「働き方改革実現に向けて、地域における医療提供体制の効率化も進めなければならない」「産科医の過重労働、長時間労働への対応として助産師の関与は重要だが、まず院内助産の地域差の要因を明確にした上で、助産師供給という面からも検討する必要がある」といった指摘が出ています。

この産科医の負担軽減に関連して、2018年度改定では【妊婦加算】が創設されましたが、様々な経緯で「凍結」されています。この点については、「妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会」が「妊婦の偶発合併症を積極的に診療する『産婦人科以外の診療科の医師』に対し、経済的なインセンティブ付与が必要。今後、中医協で具体的な要件等(妊婦に配慮した診療、産婦人科の主治医との連携など)の議論がなされることを期待する。ただし、ディスインセンティブにならないような工夫を検討する必要がある」旨の意見をまとめており、秋以降に「どういった要件設定をするか」などの議論が行われます(単純な【妊婦加算】の復活は、検討会でも否定している、関連記事はこちら)。

CTやMRIなどの「共同利用」を、診療報酬でどう進めていくべきか

 ところで急性期医療を中心に、CTやMRI等の機器を使用した検査・診断が行われます。しかし、我が国では「機器の配置は多いが、1台当たりの稼働が少なく、非効率になっている可能性がある」との指摘があります。国は、▼地域におけるCT・MRI等の配置状況・稼働状況を可視化する▼新規のCT・MRI等設置については「共同利用計画」などについて地域医療構想調整会議で議論を行う▼稼働率が高いなどの要件を満たす場合、CT・MRI等の購入費について特別償却を認める―などの対応をすでにとっています。

これらは「共同利用を推進し、生産性を高める」ことを目指すものですが、中医協総会では、▼かかりつけ医機能を有する医療機関へのCT等配置で、早期発見に寄与し、大病院での検査負担を軽減している▼日本は検査コストが低く、費用対効果はむしろ良い―とし、CT等の広範な配置を継続する考えがある一方で、▼高機能医療機器に高い診療報酬を付けていることが、むしろ高額機器の購入を促すことに繋がっている▼共同利用をする場合としない場合のメリハリをつけて充実と適正化を図るべき―という指摘も出ています。秋以降、エビデンスに基づく議論に期待が集まります(関連記事はこちら)。

新規医療技術、有効性・安全性が既存技術と同等なら、評価も同等に

 また、とくに急性期医療で関連の深い「医療技術」については、▼有効性・安全性が既存技術と同等であれば、新規技術の診療報酬上の評価も同等とする▼ただし、後に有効性等の新たなエビデンスが確認されれば、再評価(点数の引き上げ等)を行うことが重要である▼医療技術の評価を、専門的な立場から公正・中立に行う評価機関を明確にしておく必要がある▼新たな知見の収集に伴い、臨床上の位置付けが変化した技術の評価を見直す(保険給付からの除外も含めて)ことは当然である▼先進的な医療技術については、レジストリ(いわば症例のデータベースへの登録)を要件とするなどの対応が相応しい―といった意見が出されています。この点について、総論時点では診療側・支払側での明確な意見の相違は見られません。円滑に「仕組みづくり」論議が進むことが期待されます(関連記事はこちら)。

医療従事者の働き方改革、診療報酬によって推進していくべきか

さらに、全医療機関に関連する「医療従事者の働き方改革」については、大きく「医療機関の取り組みや増加コストを診療報酬で評価すべき」という意見と、「医師の働き方改革に伴って追加的に生じるコストを患者が負担することについて大きな違和感を覚える」という意見が対立しています(関連記事はこちら)。

働き方改革そのものは、期限(2024年4月から医師に罰則付きの新たな時間外労働上限が課せられる)が決まっており、粛々と進めていくことが求められます。ただし、これを診療報酬でどう後押ししていくのか(後押しすべきか否かも含めて)については、まだまだ方向性は見えていません。

もっとも、診療報酬の届け出・算定上のルールを緩和(例えば人員配置要件による「専従規定」を「専任規定」に緩めるなど)については、医療の質を担保することを絶対条件として「推進すべき」との方向が固まっていると言えます。

オンライン診療、エビデンスに基づいた「拡大」論議に期待

なお、2018年度改定の重要論点の1つとなった「オンライン診療」に関しても、「医療にどうしてもアクセスできない場合に、オンライン診療が活用されるのであって、利便性のみに着目した議論には慎重であるべき」とする意見と、「安全性に支障がない範囲で、緩和できる要件は緩和する方向で検討する必要がある」といった意見との大きな対立軸があります。この点、十分なデータに基づいた議論(現時点では必ずしも十分なデータが収集されていない)が行われることが期待されます(関連記事はこちら)。

   
 
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