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小児抗菌薬適正使用支援加算、算定対象を3歳以上にも広める一方で算定要件厳格化を模索―中医協総会(2)

2019.10.21.(月)

抗菌薬の適正使用を推進するために、内服抗菌薬投与が多い「3-6歳」の小児にも【小児抗菌薬適正使用支援加算】の算定を認めるべきではないか。ただし、同一患者に対し、同じ月に2度、加算を算定しているるケースも一部あり、それが適正かどうかを検討していってはどうか―。

また【超急性期脳卒中加算】について、「複数施設で連携してrt-PA療法を実施している」医療現場の動きや、学会の最新ガイドラインなどを踏まえて、施設基準等を見直し、さらなるrt-PA療法の普及を図るべきではないか―。

10月18日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、こういった議論も行われています。

10月18日に開催された、「第426回 中央社会保険医療協議会 総会」

3歳以上児にも【小児抗菌薬適正使用支援加算】の算定認め、抗菌薬の適正使用を推進

10月18日の中医協総会では、▼抗菌薬の適正使用▼脳卒中対策▼医師働き方改革―をテーマに検討を深めました。Gem Medでは、すでに「医師働き方改革」について別稿でお伝えしており、ここでは「抗菌薬の適正使用」「脳卒中対策」論議を見てみましょう。

「抗菌薬の適正使用」に関しては、国際的にも問題となっている「薬剤耐性菌」を制御するために、厚生労働省は薬剤耐性(AMR)対策アクションプランとして「広域抗菌薬(▼経口セファロスポリン▼フルオロキノロン▼マクロライド—)の使用量を2020年までに半減し、抗微生物薬全体の使用量を3分の2(33%減)とする」との目標を掲げています。この目標を実現するために、2018年度改定では、例えば「急性気道感染症や急性下痢症の3歳未満患者に、診察の結果、抗菌薬使用の必要性がない場合には、その旨を文書を用いて懇切丁寧に説明する」ことなどを評価する【小児抗菌薬適正使用支援加算】を新設しました。

【小児抗菌薬適正使用支援加算】の概要(中医協総会(2)1 191018)



急性上気道感染症はゼロ歳児・1-4歳児が罹患する疾患の上位に位置しており、また内服抗菌薬が調剤されているレセプトが最も多い「ゼロ歳から3歳未満の小児」を、最重要ターゲットとして「抗菌薬の適正使用」を進める考えがあったものと考えられます(2018年度改定では、【感染防止対策加算】の上乗せとして【抗菌薬適正使用支援加算】も創設されており、国民全般を対象に抗菌薬適正使用を進めると同時に、中でもゼロ歳から3歳児を対象により強力に適正使用を進めている)。

この加算は、1か月(2018年5月)当たり24万件程度算定され、医療現場に相当程度浸透しているなど、大きな効果を上げていると考えられ、厚労省保険局医療課の森光敬子課長は、ゼロから3歳未満児に次いで内服抗菌薬調剤が多い「3歳から6歳未満」を次なる抗菌薬適正使用のターゲットに据え、さらなる抗菌薬使用の適正化を図る考えを示しています。この方向について、診療側・支払側ともに賛意を示しています。

内服の抗菌剤投与は小児で多い(中医協総会(2)2 191018)



ただし、【小児抗菌薬適正使用支援加算】は、3歳未満児を対象とする【小児科外来診療料】と【小児かかりつけ診療料(ただし3歳未満から継続診療している患児は、3歳以上も対象)】の加算であり、これら診療料の対象年齢見直しも別途検討されることとなるでしょう。

同一月に複数回の【小児抗菌薬適正使用支援加算】算定は、果たして「適正」か

一方で、【小児抗菌薬適正使用支援加算】については、「算定件数が多すぎる可能性もある(1か月当たり24万件程度)」「月に2回算定しているレセプトが5%程度ある」という問題もあります。森光医療課長は「算定要件の厳格化」も検討テーマとして考えているようです。

同一月に2回、【小児抗菌薬適正使用支援加算】を算定しているレセプトが一部ある(中医協総会(2)3 191018)



この点、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)や吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は「【小児抗菌薬適正使用支援加算】は初診時でなければ算定できないはずだ。同じ月に急性期気道感染症と急性期下痢症なり、都度、抗菌薬使用の必要性がないことを説明していると思われるが、両者は一体として評価すべきではないか」して、算定要件の厳格化(例えば同一患者には同一月には1度しか算定を認めないとするなど)を行うよう要望。併せて「抗菌薬の適正使用は、かかりつけ医の本来業務であることも加味した議論を行う必要がある」と付言しています。後者は「支払側としては、『抗菌薬適正使用は基本診療料の中で評価済』と考えており、加算での評価を『認めてあげている』点を診療側も踏まえてほしい」との厳しい考えを示すものです。

対して診療側の今村聡委員(日本医師会副会長)と松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は「小児が同じ月に急性気道感染症と急性期下痢症にかかることは珍しくない。この場合、疾患や薬が異なることも多く、1人1人の患者の状態を診て、改めての抗菌薬適正使用に向けた説明が必要となる。多忙な小児科医の負担を考慮してほしい」と理解を求めています。

【超急性期脳卒中加算】の施設基準等見直し、rt-PA療法のさらなる普及目指す

また【超急性期脳卒中加算】は、脳梗塞患者への発症から4.5時間以内のrt-PA(組織プラスミノーゲン活性化因子、血栓溶解作用を持つ)投与を評価する診療報酬項目です。超早期の適切治療を推進するインセンティブとなっていますが、▼届け出施設数は横ばい▼算定件数は微増―と伸び悩み、また地域によっては「rt-PA療法を実施できる病院がない」(9.7%の2次医療圏)という課題があります。

【超急性期脳卒中加算】の概要(中医協総会(2)4 191018)



この背景について森光医療課長は、次の2点を指摘。

▽【超急性期脳卒中加算】の施設基準は、日本脳卒中学会のガイドライン(rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法適正治療指針第3版)に対応していない

▽Drip and Ship法(遠隔診療等で「脳卒中治療にに精通した医師」の指示下にrt-PA療法を開始した上で、より専門的な診療が可能な施設(血管内治療が可能な施設を含む)に脳梗塞患者を搬送する手法)の場合、いずれの施設でも【超急性期脳卒中加算】を算定できない

前者は、日本脳卒中学会が「rt-PA療法が普及しない要因の1つに、旧ガイドライン(第2版)が厳しすぎた」と考え、人員配置や設備整備などを緩和した新ガイドラインを2016年9月に制定したものの、【超急性期脳卒中加算】の施設基準はこの新ガイドラインに対応しておらず、「人員配置や構造設備が厳しすぎるまま」となっているという問題点です。

現行の【超急性期脳卒中加算】は日本脳卒中学会の新ガイドランに対応していない(中医協総会(2)5 191018)



また後者は、できる限り早期のrt-PA治療実施に向けて「1次搬送施設でrt-PA治療を開始し、そこから専門的な医療機関に2次搬送する」(Drip and Ship法)割合が増えているにも関わらず、いずれの施設においても【超急性期脳卒中加算】を算定できない(1次搬送施設では入院していないので、入院基本料等加算である【超急性期脳卒中加算】を算定できず、2次搬送施設ではrt-PA治療を発症から4.5時間以内に開始していないので同様に算定できない。ただし、薬剤料や入院料は算定可能)という問題です。

drip & ship法によるrt-PA療法では、現行の【超急性期脳卒中加算】は算定できない(中医協総会(2)6 191018)



rt-PA治療のより普及を目指し、今後、中医協でこうした課題を改善するための「施設基準等見直し」が検討される見込みです。森光医療課長は「現在、【超急性期脳卒中加算】の届け出は800施設ほどだが、rt-PA療法を行っている施設は1000施設ほどあり、施設基準等見直しで200施設ほどが新たに【超急性期脳卒中加算】の届け出が可能になるのではないか」と見通しています。

【超急性期脳卒中加算】の施設基準等見直し方向に対しては、診療側・支払側ともに明確に異論を唱えておらず、今後「具体的な見直し案」を詰めていくステップに入ることになる模様です。

 
 
 
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