【2020年度診療報酬改定総点検1】大病院の地域包括ケア病棟に厳しい改定に、急性期一般は年明けから重症患者割合を検討!
2019.12.31.(火)
2020年度の次期診療報酬改定に向けて、年明けから中央社会保険医療協議会で具体的な点数設計論議に入ります。これまでに厚生労働省からさまざまな論点が提示されており、一体、どこまで議論が進んでいたのか?とお感じの方もいらっしゃると思います。
Gem Medでは、年明けからの詰めの議論に備えて、これまでの中医協論議についてポイントを絞ってお浚いしてみます。初回は「入院料」に焦点を合わせてみます。
目次
急性期一般、年明け明けから重症患者割合の設定論議へ
急性期一般病棟入院基本料については、重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)について次のような見直しが検討されてきました。年明けからは、これらの見直しが重症患者割合(看護必要度を満たす患者割合)にどう影響するのかを試算。さらに「どこまでの厳格化を行うべきか」を議論の上で、重症患者割合の基準(急性期一般1では現在、看護必要度Iで30パーセント以上、看護必要度IIで25%以上)を見直していきます。
(1)のA・B・C項目の見直し
▽A項目:「内服の免疫抑制剤の管理」を評価項目から除外する
▽B項目:▼移乗▼口腔清潔▼食事摂取▼衣服の離脱―について「患者の状態」と「介助の実施」に分けて評価する
▽C項目:入院での実施割合が9割以上、かつ「侵襲度が高い」(≒診療報酬点数が高い(例えば3万点以上など))手術等を評価項目に追加し、「重症患者にカウントされる日数」を伸ばす
(2)「A1・B3かつ危険行動等」を重症患者の評価対象から除外する
(3)認知症・せん妄を合併した患者に対する適切なケアを行う体制が確保されるよう、看護必要度とは分けて体制の評価を拡充する(「標準的なせん妄予防の取り組み」を行っている病棟の体制評価など)
また、特定機能病院については「回復期リハビリテーション病棟入院料の届け出」が不可能となる見込みです。リハビリ実施を阻害するものではなく、「看護配置を薄い病棟の設置」を禁止するものです。
病院によって入院患者の構成が異なるため(1)(2)によって重症患者割合がどう動くかは変わってきます。結果として見直し内容が「厳格化」になる病院、「緩和」になる病院が出てくるため、今から「可能な限りの試算」を各病院で行っておくことが重要です。この点、Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンが開発した病院ダッシュボードχを用いれば、さまざまな試算が行えます。
特に大規模な公立・公的病院の地域包括ケア病棟、将来的に厳しい方向に
地域包括ケア病棟については、次のような見直し方向が固まりつつあります。
(1)許可病床数200床以上病院の地域包括ケア病棟において、「自院の一般病棟からの転棟割合」に制限(上限値)を定める
(2)許可病床数400床以上病院の地域包括ケア病棟の新設について、現行の「1病棟」のみ制限を継続するとともに、新たに「設置について地域医療構想調整会議の意見を求める」(許可等は不要)こととする
(3)DPC病棟(急性期病棟)から地域包括ケア病棟への転棟について、▼DPC期間IIまでDPC点数を継続算定する▼DPC期間IIIは地域包括ケア病棟の点数を算定する―形とする(地域包括ケア入院医療管理料については、現行どおりDPC点数の算定継続とする)
(4)許可病床数200床未満病院の地域包括ケア病棟における「在宅患者受け入れ」等の実績について、実態に合わせた基準値へ見直す
(5)患者にADL評価結果などを示し、「リハビリの必要性を患者に説明する義務」を設ける
(6)【入退院支援加算】等について取得の努力義務を課す
(7)ACP(Advanced Care Planning、人生の最終段階で受けたい、あるいは受けたくない医療・ケアについて患者・家族・医療者間で十分に議論を行う)について全病棟で義務化する
大病院の地域包括ケア病棟において厳しい見直しが検討されています。なお、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は「大規模(400床以上)の公立・公的病院では、地域包括ケア病棟の設置を認めるべきではない」ともコメントしており、2020年度の今回改定はもちろん、2022年度改定以降にも大きな見直しが予想されます。
回復期リハビリ病棟、「リハビリの質」確保を重視した見直し
回復期リハビリテーション病棟入院料については、次のような方向が固まってきています。
(1)FIM評価結果を患者へ提示し「適正性」を確保する
(2)入院料1・3・5について「リハビリ実績指数」の基準値引き上げを検討する(とくに3と5で階段をつけることを重視する)
(3)管理栄養士の配置について、入院料1では「義務化」、それ以外は「努力義務化」を検討する
(4)外来リハ等の実施を推進する
(5)許可病床数200床未満病院の回復期リハビリ病棟入院料5・6にも「データ提出」を義務付ける
言わば「リハビリの質」確保に着目した見直しが予定されています。
ICU、2022年度以降の厳格化に向けた「布石」
療養病棟入院基本料については、次のような見直しが予定されています。
(1)医療区分3に該当する「中心静脈栄養」について、▼毎月末に、IVHを必要とする状態に該当しているか確認し、結果を診療録等に記載する▼患者・家族等に、「長期間実施の感染リスク」「他に胃瘻や腸瘻などの栄養摂取方法があること」などを丁寧に説明する―ことを要件化する
(2)許可病床数200床未満病院の療養病棟にも「データ提出」を義務付ける
(3)経過措置2を廃止する
(4)長期間の膀胱留置カテーテル実施を避けるため、【排尿自立指導料】の取得を推進する(「下部尿路機能障害を有する患者の診療について経験を有する医師」要件の緩和などを検討する)
また、ICU(特定集中治療室管理料)については次のような見直しが検討されています。
(1)生理学的スコア(SOFAスコア)測定義務の管理料3・4への拡大を検討する
(2)専門性の高い看護師の配置に係る経過措置を廃止する(専門性の高い看護師配置がない場合、管理料届け出ができなくなる可能性大)
(3)「管理栄養士による48時間以内の介入」を加算などで評価する
2022年度改定以降への布石と考えられます。「一部に重症患者の受け入れが十分に行われていないICUがある」との指摘を踏まえた、例えば(1)からは、「看護必要度+SOFAスコアで重症患者を規定する」などの大きな見直しが将来的に行われることを予感させます。2022年度以降に向けて、今から「自院のユニットには重症患者が入室しているのか」をきちんと把握していくことが重要です。
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