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救命救急1・3は救命救急2・4と患者像が全く異なる、看護必要度評価をどう考えるべきか―入院医療分科会(2)

2019.9.27.(金)

 2018年度の前回診療報酬改定で、【救命救急入院料1・3】において「特定集中治療室用の重症度、医療・看護必要度に係る評価票」で患者の状態を測定・評価することとなった。重症患者割合を見ると、【救命救急入院料2・4】では9割弱だが、【救命救急入院料1・3】では3-4割にとどまっており、「評価の在り方をどう考えるべきか」を検討する必要がある―。

また2018年度改定では【特定集中治療室管理料】において、「専門性の高い看護師の配置」を要件化した。経過措置期間中にも関わらず、9割程度のユニットで配置が完了しており、2020年度の次期改定で「経過措置の延長」は必要ないのではないか―。

 9月26日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)で、こういった議論も行われました(関連記事はこちら)。

9月26日に開催された、「令和元年度 第8回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

 

救命救急1・3、ICU用の看護必要度評価票を用いることは妥当なのか

 2018年度の前回診療報酬改定では、特定集中治療室(ICU)などについて、「ユニットにおける医療の質向上」を目指した次のような見直しが行われました。

(1)【救命救急入院料1・3】、【脳卒中ケアユニット入院医療管理料】において、「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)の測定を要件とする
(2)【特定集中治療室管理料】算定患者について、入退室時の生理学的スコア(SOFAスコア)をDPCデータの報告対象とする
(3)【特定集中治療室管理料1・2】の施設基準に「専門性の高い看護師配置」要件を設ける
(4)特定集中治療室において、多職種による早期離床・リハビリの取り組みに係る評価(【早期離床・リハビリテーション加算】、1日につき500点)を新設する

 
9月26日の入院医療分科会には、(1)(3)(4)の効果に関する調査結果が報告されました((2)のSOFAスコアのデータ提出状況は別途示される予定)。

まず(1)の看護必要度について見てみましょう。

今般の特別調査結果から、重症患者割合を見ると「【救命救急入院料1・3】で著しく低い」ことが分かりました。従前より「重症患者割合」要件(80%または70%以上)が導入されている【救命救急入院料2・4】では9割近いにもかかわらず、【救命救急入院料1・3】では3-4割程度にとどまっています。

 
この点について牧野憲一委員(日本病院会常任理事、旭川赤十字病院院長)は「【救命救急入院料1・3】においては、『特定集中治療室用の看護必要度評価票』(以下、ICU看護必要度評価票)が相応しくないのではないか」との考えを示しました。

【救命救急入院料2・4】では、従前よりICU看護必要度評価票での評価が求められており、2018年度改定では、これに倣って【救命救急入院料1・3】でもICU看護必要度評価票での測定が義務付けられました。しかし牧野委員は「【救命救急入院料2・4】と【救命救急入院料1・3】とは全く別種のユニットであり、患者像が全く異なる」と強調。ICUの施設基準が敷かれている【救命救急入院料2・4】には、まさに一刻を争う重篤な患者が入室しますが、【救命救急入院料1・3】には、例えば「一般病棟での管理は難しい」といった状態の患者が入室することも多いと指摘されます。

牧野委員は、「ICU看護必要度評価票では、【救命救急入院料1・3】の入室患者の状態を上手に拾えていないのではないか」と述べ、「まず患者像の確認から始める必要がある」と提案しています。

 
 また、石川広巳委員(日本医師会常任理事)も牧野委員の指摘に理解を示すとともに、ICU看護必要度評価票と「ハイケアユニット用の重症度、医療・看護必要度に係る評価票」(HCU看護必要度評価票)との違いに着目。親組織である中央社会保険医療協議会・総会での議論に期待を寄せました。

 
【救命救急入院料1・3】、【脳卒中ケアユニット入院医療管理料】においては「看護必要度の測定・評価」が要件化されているのみですが、将来的には、一般病棟や【特定集中治療室管理料】などと同じく「重症患者(看護必要度満たす患者)割合」要件が施設基準に盛り込まれると考えられます。この問題をどう考えるべきでしょう。【救命救急入院料1・3】において、ICU看護必要度評価票を用いた場合に「重症患者割合が著しく低い」という点については、(A)施設基準における重症患者割の基準値を低く設定する(【救命救急入院料2・4】では80%・70%であるが、【救命救急入院料1・3】では例えば40%とするなど)(B)ICU看護必要度の評価項目を見直す(C)【救命救急入院料1・3】ではICU看護必要度評価票とは異なる指標(例えばHCU看護必要度評価票や一般病棟看護必要度評価票など)を採用する―などの対応が考えられそうです。

 しかし、(A)には「【救命救急入院料1・3】の重症患者割合が大きくバラついているため、カットオフ値(基準値)設定の議論も難しい」(牧野委員)、(B)には「評価項目の見直しには、相応の調査が必要で、時間がかかる」、(C)には「HCU看護必要度導入の妥当性などを再度検証する必要がある」という具合に、それぞれに課題があります。

 
 2020年度の次期診療報酬改定で、【救命救急入院料1・3】に「重症患者割合」要件を導入することは時期尚早のように思えます。

 
 また、【脳卒中ケアユニット入院医療管理料】では、一般病棟用の看護必要度評価票が導入され、全体の重症患者割合は全体で60-70%程度となっており、「重症患者割合」要件を導入すべきかどうかについて具体的な方向はまだ見えてきていません。

 
 なお、この問題に関連して神野正博委員(全日本病院協会副会長)は「HCUをよりさまざまな病院・病棟に設置できるようにし、そこ(HCU)の評価を手厚くすることで、他の病棟(例えば急性期一般)の評価を低くするという選択肢も考えられる。HCUの上手な活用を考えていくべき」と指摘しています。「HCUの設置を認め、点数を高く設定すれば、病院経営者は、他の病棟の点数を低くすることを容認するのではないか」との考えです。

「専門性の高い看護師」、経過措置中にもかかわらず9割のICUで配置し

 また(3)の「専門性の高い看護師配置」は、「集中治療を必要とする患者の看護に従事した経験を5年以上有し、集中治療を必要とする患者看護に係る適切な研修(日本看護協会の認定看護師教育課程「集中ケア」など)を修了した『専任』の『常勤』看護師を、ユニットに週20時間以上配置する」ことを要件化したものです。専門性の高い看護師の確保に苦労が予想されたことから、「2020年3月31日まで」は経過措置(配置しなくともよい)が設けられています。

 しかし、今般の特別調査では、経過措置期間中にも関わらず(つまり配置しなくてもよいにも関わらず)、9割超のICUで、すでに専門性の高い看護師が配置されていることが分かりました(【救命救急入院料2・4】でも9割弱)。

 
さらに、ユニットでの勤務時間は▼ICU1(特定集中治療室管理料1)では37.6時間▼ICU2(特定集中治療室管理料2)では35.6時間―、1ユニット当たりの配置人数は▼ICU1では1.60人▼ICU2では1.70人―となっており、すでに「大きな戦力」として稼働し、医療の質を引き上げている状況が伺えます。

 
また、未配置の1割程度のユニットでは「経過措置期間中ゆえに配置していない」との回答をしており、武井純子委員(社会医療法人財団慈泉会相澤東病院看護部長)は「経過措置延長の必要はない」と指摘しました(結論は中医協総会で出します)。

ICUの【早期離床・リハビリ加算】、取得のハードルはリハビリ専門職の確保

 一方、(4)は超早期のリハビリ提供を促すもので、ICUの1・3・4では「約5割」、ICU2では「約8割」が加算を届け出ており、▼計画的な離床への取り組み実施▼チーム医療の推進▼患者ケアの質の向上―などに効果があると現場は考えています。


 
ただし、加算未取得の理由として「早期離床・リハビリテーションに係る理学療法士、作業療法士を確保できない」という声が多く出ています。

 
「なぜリハビリ専門スタッフを確保できないのか」という理由は明らかになっていませんが、池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)は「公立病院では、人員の定数問題でリハビリスタッフ確保が難しいようだ」とコメント。これが多くの公立病院に当てはまるのであれば、診療報酬での解決は極めて困難です。

 
 
 

 

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