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重症患者割合の基準値、急性期1:31%、急性期2:28%、急性期3:25%、急性期4:22%で決定―中医協総会(1)

2020.1.29.(水)

急性期一般病棟入院料における重症患者割合(一般病棟用の重症度、医療・看護必要度を満たす患者割合)を2020年度の次期診療報酬改定で次のように見直す―。

▽急性期1:看護必要度I・31%、看護必要度II・29%
▽急性期2:看護必要度I・28%、看護必要度II・26%
▽急性期3:看護必要度I・25%、看護必要度II・23%
▽急性期4:看護必要度I・22%、看護必要度II・20%

また、許可病床数400床以上の大病院でEF統合ファイルを用いた「看護必要度II」での評価を義務付けるとともに、看護必要度評価に係る所定研修要件を廃止し、医療現場の負担軽減を図る―。

1月29日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こういった基準値が固められました。支払側は「急性期1について35%、急性期4について25%にせよ」と、診療側は「急性期1について27-28%、急性期4について18-19%にせよ」と主張。議論が平行線をたどったため、田辺国昭会長(東京大学大学院法学政治学研究科教授)をはじめとする公益代表による裁定で決定されたものです(関連記事はこちら)。

1月29日に開催された、「第448回 中央社会保険医療協議会 総会」

短冊論議が始まり、2020年度改定論議は直線の叩き合いへ

2020年度の次期改定に向けた議論が最終コーナーを回り、ついに直線の叩き合いの段階に入りました。1月29日には厚生労働省保険局医療課の森光敬子課長から、これまでの議論を踏まえた「2020年度診療報酬改定の個別改定項目」(いわゆる短冊)が提示され、改定内容(基本方針の項目建て)のうち「医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進」および「タスク・シェアリング/タスク・シフティングのためのチーム医療等 の推進」について議論。「患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現」と「効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上」については、次回(1月31日予定)に議論することとなっています。

「2020年度診療報酬改定の個別改定項目」(いわゆる短冊)はこちら(中医協資料)

本稿では、注目される「急性期一般病棟入院料」等における重症患者割合(一般病棟用の重症度、医療・看護必要度に該当する患者の割合)についてお伝えし、他の「医療従事者の働き方改革のサポート」や「地域包括ケア病棟入院料等の見直し」などについては別稿で見ていきます。

重症患者から「A1点・B3点+危険行動」除外するなど、看護必要度の項目・定義見直し

2020年度の次期診療報酬改定に向けて、中医協総会では「看護必要度の項目見直し」論議を行い、次のような見直し項目が固められました。

【A項目】
▽「免疫抑制剤の管理」を除外する(注射剤を除く)

【C項目】
▽入院実施割合が90%以上の手術(2万点以上のものに限る)および検査を追加する
▽評価対象日数を延長する(下図表参照)

【重症患者(看護必要度を満たす患者)の定義】
▽「『A1点以上・B3点以上』で、『診療・療養上の指示が通じる』『危険行動』のいずれかに該当する患者」(いわゆる基準2)を廃止する

▽救急医療管理加算等(加算1・2、夜間休⽇救急搬送医学管理料)の算定患者を重症患者に含める

看護必要度の項目・定義見直し論議を踏まえた試算条件(中医協総会(1)1 200115)



こうした項目・定義の見直しにより、当然、各病院の「重症患者割合」が変化(いわゆる基準2廃止で低下、救急患者の重症患者カウントで上昇など)。急性期一般1や急性期一般4、特定機能7対1などにおける重症患者割合の下位25%タイル値(下から25%に位置する病院の重症患者割合)は次表のように変化することが森光医療課長から示されています。

看護必要度の項目・定義見直しが、各入院基本料の重症患者割合に与える影響。下位25%病院の値が、急性期1では33.5%から30.3%に、急性期4では31.2%から22.9%に下がる(厳格化)(中医協総会(1) 200129)



例えば旧7対1に相当する「急性期一般1」では、重症患者割合の下位25パーセンタイル値は「約30%」であることから、「現行基準の維持」でも、計算上は25%が急性期一般1の施設基準をクリアできなくなることになります。

急性期1の基準値、支払側は35%、診療側は27-28%を提案

この点について診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)や猪口雄二委員(全日本病院協会会長)は、▼2018年度の前回診療報酬改定による入院料の大幅組み換え後に旧7対1である急性期一般1はすでに「1万床」程度、減少している▼2年に一度の診療報酬改定の都度に、病院が右往左往するような激変を起こすことは好ましくない▼200床未満病院では見直しの影響が大きく、十分な配慮が必要である▼診療報酬は全国一律であり、余裕を持った基準とすべき―などと指摘し、次のような基準値設定とともに、「十分な経過措置の確保」を提案しました。

▽急性期1:看護必要度Iで27-28%程度、看護必要度IIでは2ポイント程度低く設定
▽急性期4:看護必要度Iで18-19%程度、看護必要度IIでは2ポイント程度低く設定



これに対し、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、1月15日の会合と同様に、▼旧7対1(急性期1)から急性期2・3への移行が進まない最大の原因は、急性期1の基準値を「30%」(結果として下位25パーセンタイル値)に低く設定した点にあり、より厳しく「下位25-50パーセンタイル値」となる基準値を設定すべき▼急性期1の基準値を低く設定したために、急性期2・3・4の階段が「1ポイント刻み」にとどまった。この階段の幅の狭さが移行が進まない要因の1つであり、階段の幅は「3-4ポイント刻み」とすべき―と指摘し、次のような基準値設定を改めて提案しました。

▽急性期1:看護必要度Iで35%、看護必要度IIでは1ポイント低い34%
▽急性期4:看護必要度Iで25%、看護必要度IIでは1ポイント低い24%

2018年度改定では、結果として下位25パーセンタイル値が重症患者割合の基準値となった(中医協総会(1)6 200115)

項目見直しの影響が大きな急性期4に配慮し、急性期1-4の階段幅を一定程度確保

両側の提案内容は大きくかけ離れており、診療側は支払側に対し「あまりに厳格な基準値を設定すれば急性期入院医療が崩壊し、地域医療構想の実現などは不可能になる」と批判。対して支払側は「2018年度改定では旧7対1と旧10対1を再編・統合し「急性期一般病棟入院基本料」(急性期1-7)に一本化した。この趣旨は、いわゆる『7対1ブランド』からの脱却にあると理解する。急性期入院医療の評価軸は『看護配置』から『重症患者受け入れ実績』へと移っており、相応の点数を設定した急性期2・3への移行を進めていくべきである」と反論するなど、議論は平行線を辿り、着地点が見えてきませんでした。

このため田辺会長は、両側の意見を踏まえた「公益裁定」を行うことを決定。学識者である公益代表委員の議論で次のような基準値案が示され、両側ともに了承しています。

▽急性期1:看護必要度I・31%、看護必要度II・29%
▽急性期2:看護必要度I・28%、看護必要度II・26%
▽急性期3:看護必要度I・25%、看護必要度II・23%
▽急性期4:看護必要度I・22%、看護必要度II・20%

基準値設定に当たっては、まず看護必要度の定義・項目見直しで極めて大きな影響(現行から10ポイント近く低下する試算結果)が出る「急性期4」(旧10対1+加算)に着目。定義・項目見直し後の下位25パーセンタイル値が、看護必要度Iで22.9%と試算されたことなどを踏まえ、「22%」とされました。

急性期一般4・看護必要度Iの重症患者割合に関する変化(中医協総会(1)5 200115)



ここに、支払側の「急性期1から急性期2・3への移行を促すためには適切な幅の階段設定が必要である」旨の指摘を踏まえ、急性期3・2・1にそれぞれ3ポイントの幅を持たせ、急性期3で「25%」、急性期2で「28%」、急性期1で「31%」の基準値が設定されています。

急性期1(看護必要度I)の新基準値「31%」は、2019年4月提出データに基づけば、下位33パーセンタイル値程度に相当すると見られ、計算上は「急性期1の3分の1程度の病院では、急性期1の施設基準クリアが難しくなる」ことになります。もっとも、各病院で重症患者確保等に向けたさまざまな取り組みが行われると予想され、急性期1から急性期2・3への移行は限定的なものとなりそうです。

急性期一般1・看護必要度Iの重症患者割合に関する変化(中医協総会(1)4 200115)



なお公益代表は、入院患者の評価に係る医療従事者(主に看護職)の負担軽減や、長期的に安定した評価の確立を目指し、EF統合ファイルを用いる「看護必要度II」の基準値を先に設定することが「より適切」と考えていますが、看護必要度II採用病院はまだ少数派にとどまっているため、今回は看護必要度評価票を用いる「看護必要度I」の基準値を先行決定。そのうえで「看護必要度IIの活用を推進する観点」も踏まえて、看護必要度IIでは看護必要度Iよりも一定程度低い基準(2ポイント低い)を設定しています。こちらは診療側の意向に沿ったものとなっています。

さらに、基準値を眺めると、診療側提案(急性期1では27-28%)と支払側提案(同35%)の間をとったものとなっており、「折衷案」と判断することができるでしょう。このほか公益代表は「経過措置が許可病床数200床未満の病院で必要であり、とくに影響の大きな急性期4に配慮する」考えも明らかにしています。

また、急性期1-4以外、特定機能病院7対1や急性期5-7などの基準値については今回は示されず、答申(2月7日見込み)時に明らかにされます。

看護必要度評価の所定研修要件を廃止、400床以上病院では看護必要度IIを義務化

また看護必要度については、測定負担を軽減する観点から、「看護必要度測定に関する院内研修は、所定の研修を修了したもの(修了証が交付されているもの)または評価に習熟したものが行う研修であることが望ましい」との規定が削除されます。現在は、高額な所定研修を、多忙な看護職等が受講し、それをベースに院内研修が行われ、院内研修修了者が看護必要度の測定を行うことになっています。この所定研修の受講負担(費用と時間)が不要になるため、看護必要度Iを採用する病院はもちろん、看護必要度IIを採用する病院(B項目については所定研修が望ましいとされている)でも看護職等の負担が軽減されると期待されます。

さらに、許可病床数400床以上の▼急性期1-6取得病院▼特定機能病院7対1取得病院―では、EF統合ファイルを用いた「看護必要度II」での評価が義務付けられます(経過措置あり)。


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中医協・基本小委、支払側が「看護必要度や地域包括ケア病棟などの厳格化」を強く要望
2020年度診療報酬改定に向け、「看護必要度」「地域包括ケア病棟」などの課題を整理―入院医療分科会
ICU、看護必要度とSOFAスコアを組み合わせた「新たな患者評価指標」を検討せよ―入院医療分科会(2)
A項目1点・B項目3点のみ患者、療養病棟で該当患者割合が高いが、急性期の評価指標に相応しいか―入院医療分科会(1)
病院病棟への「介護福祉士配置とその評価」を正面から検討すべき時期に来ている―入院医療分科会(3)
ICUの「重症患者」受け入れ状況、どのように測定・評価すべきか―入院医療分科会(2)
DPC病棟から地域包括ケア病棟への転棟、地ケア病棟入院料を算定すべきか、DPC点数を継続算定すべきか―入院医療分科会(1)
総合入院体制加算、地域医療構想の実現や病床機能分化を阻害していないか?―入院医療分科会(3)
救命救急1・3は救命救急2・4と患者像が全く異なる、看護必要度評価をどう考えるべきか―入院医療分科会(2)
「急性期一般2・3への移行」と「看護必要度IIの義務化」を分離して進めてはどうか―入院医療分科会(1)
【短期滞在手術等基本料3】、下肢静脈瘤手術などは外来実施が相当数を占める―入院医療分科会(4)
診療データ提出を小規模病院にも義務化し、急性期病棟にも要介護情報等提出を求めてはどうか―入院医療分科会(3)
資源投入量が少なく・在院日数も短いDPC病院、DPC制度を歪めている可能性―入院医療分科会(2)
看護必要度の「A1・B3のみ」等、急性期入院医療の評価指標として妥当か―入院医療分科会(1)
回復期リハ病棟でのFIM評価、療養病棟での中心静脈栄養実施、適切に行われているか検証を―入院医療分科会(2)
入院で実施されていない「免疫抑制剤の内服」「膀胱脱手術」など、看護必要度の評価対象から除くべきか―入院医療分科会(1)
回復期リハビリ病棟から退棟後の医療提供、どのように評価し推進すべきか―入院医療分科会(3)
地域包括ケア病棟の実績評価要件、在宅医療提供の内容に大きな偏り―入院医療分科会(2)
点数が「DPC<地域包括ケア」時点にDPC病棟からの転棟が集中、健全なのか―入院医療分科会(1)
療養病棟に入院する医療区分3の患者、退院患者の8割弱が「死亡」退院―入院医療分科会(2)
入退院支援加算1の「病棟への入退院支援スタッフ配置」要件、緩和すべきか―入院医療分科会(1)
介護医療院の整備など進め、患者・家族の「退院後の介護不安」解消を図るべき―入院医療分科会(2)
急性期一般1では小規模病院ほど認知症入院患者が多いが、看護必要度への影響は―入院医療分科会(1)
看護必要度IとIIとで重症患者割合に大きな乖離、要因を詳しく分析せよ―中医協・基本小委
自院の急性期患者の転棟先として、地域包括ケア病棟を選択することは「問題」なのか―入院医療分科会(2)
7対1から急性期2・3への移行は3%強にとどまる、看護必要度IIの採用は2割弱―入院医療分科会(1)
2020年度改定、入院医療では「救急」や「認知症対策」なども重要論点に—入院医療分科会(2)
DPC対象病院の要件を見直すべきか、入院日数やDPC病床割合などに着目して検討―入院医療分科会(1)
2018年度改定で新設された【急性期一般入院料1】を選択する理由はどこにあるのか―入院医療分科会
2020年度の次期診療報酬改定に向け、急性期一般入院料や看護必要度などを調査―入院医療分科会



2020年度に「稼働病床数を1割以上削減」した病院、国費で将来の期待利益を補助―厚労省



医師働き方改革、「新たな医療提供体制に向かうチャンス」の可能性も―社保審・医療部会
2020年度診療報酬改定に向け、「入院時食事療養費」の引き上げを求める声も―社保審・医療部会
「医師の働き方改革」を診療報酬でどうサポートするか、基本方針策定段階でも激論―社保審・医療部会
2020年度診療報酬改定「基本方針」論議始まる、病院薬剤師の評価求める声多数―社保審・医療部会



2020年度診療報酬改定を了承、「医師の働き方改革推進」を重点課題に据える―社保審・医療保険部会
2020年度診療報酬改定、「医師の働き方改革」だけでなく「制度の持続可能性」も重点課題とせよ―社保審・医療保険部会
2020年度診療報酬改定、「医師働き方改革」だけでなく「効率化」や「機能分化」なども重点課題ではないか―社保審・医療保険部会
2020年度診療報酬改定、「効率化・合理化の視点」「働き方改革の推進」「費用対効果評価」なども重要視点―社保審・医療保険部会