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外来診療 経営改善のポイント 看護必要度シミュレーションリリース

薬剤8.0%、材料5.8%の価格乖離、実勢価格改定でどの程度の国庫縮減可能か―中医協総会(2)

2019.12.4.(水)

2019年における薬価と市場実勢価格との平均乖離率は約8.0%、同じく材料価格と市場実勢価格との平均乖離率は約5.8%であった―。

このような結果が、12月6日に開催された中央社会保険医療協議会・総会に報告されました。この数字をもとに薬価・材料価格の引き下げが行われることになり、薬剤費を10兆円・材料費を1兆円・医療費国庫負担割合を25%と仮置きすると、「国庫負担を1545億円縮減できる」と推計できますが、ここから今年(2019年)10月に実施された「消費税対応改定」における薬価引き下げ分を控除することになります。

12月4日に開催された、「第438回 中央社会保険医療協議会 総会」

市場実勢価格と償還価格との差を埋める

医療機関は、医療用医薬品や特定保険医療材料を卸業者から購入し【A】、それを用いた診療を行い、審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会)に費用請求(毎月の医療費請求・レセプト請求)を行います【B】。

医療用医薬品と特定保険医療材料については、保険償還価格(薬価、材料価格)が設定されており、【B】の医療機関に支払われる費用はそれに沿ったものとなります(同じ医薬品等であれば、どの医療機関で使用されても同じ価格で償還される)。

一方、【A】の医療機関等が卸業者から医薬品や医療材料を購入する価格(市場実勢価格)は、自由取引であるため「区々」となっています(医療機関等や卸業者ごとに価格が異なる)。

この保険償還価格【B】と市場実勢価格【A】の差が、いわゆる薬価差・材料価格差であり、かつてはこの差益が大きく、「縮小」が大きな政策課題となっていました。

医薬品などを低価格で卸から購入すれば、その差は医療機関等の利益になります(いわゆる薬価差益等)。しかし、保険診療は国民の納めた税金や保険料などで賄われており、医療機関などに支払われる薬剤費・材料費も最終的には国民が負担していることから、「実際に医療機関のコストとなる市場実勢価格が低ければ、国民負担となる薬価・材料価格もそれに応じて引き下げていく」必要があるのです。これが、2年に一度(今後は毎年)行われる薬価改定・材料価格改定の重要な役割の1つとなっています。

改定に当たっては、医薬品や医療材料を医療機関がいくらで購入しているのか(裏を返せば卸業者がいくらで販売しているのか)、つまり市場実勢価格を把握する必要があり、厚生労働省は改定の前年に大規模な調査(薬価本調査、材料価格本調査)を行っています。

今般、調査結果の速報値が中医協総会に示され、医薬品については、市場実勢価格と薬価との乖離率が平均で約8.0%であることが分かりました。消費税対応改定前に実施された2018年度調査では「約7.2%」、2018年度の前回改定前に実施された2017年度調査では「9.1%」、2016年度改定前に実施された2015年度調査では「8.8%」でしたので、消費税対応改定前に比べると「価格の乖離は広がっている」状況です。

投与形態別に見ると、▼内用薬:9.2%(2017年度調査では10.1%、2018年度調査では8.2%)▼注射薬:6.0(同7.2%、同5.2%)▼外用薬:7.7(同8.2%、同6.6%)―なっています。歯科用薬剤については、マイナス4.6(同マイナス4.0%、同マイナス5.7%)となっており、前回調査に続き「薬価よりも高い価格で歯科医療機関が医薬品を購入している」状況です(歯科用薬剤(特に麻酔)を使用すると、当該医療機関は赤字になる形)。

また薬効群別に見ると、▼高脂血症用剤:13.9%(同12.7%、同12.2%)▼血圧降下剤:13.4%(同13.3%、同11.7%)▼消化性潰瘍剤:12.3%(同13.1%、同10.8%)▼精神神経用剤:10.0%(同10.8%、同8.1%)―などで乖離率が大きくなっています。

また、後発医薬品の使用割合(数量ベース)は約76.7%で、2017年度調査(65.8%)に比べて10.9ポイント、2018年度調査(72.6%)に比べて4.1ポイント上昇しました。政府は「2020年9月に80%以上とする」との後発品使用促進目標を掲げており、達成まであと3.3ポイントに迫っています。

なお、地域医療機能推進機構(JCHO)病院と、いわゆる4大卸(メディセオ・アルフレッサ・スズケン・東邦薬品)との間の取り引きにおいて、4大卸が価格調整(談合)を行っていた疑惑が生じており(現在、公正取引委員会が調査中)、これら取り引き分は調査データから除外されています。

●薬価本調査結果の概要(中医協資料)



一方、医療材料については、平均乖離率が約5.8%となりました。2017年度調査では7.0%、2018年度調査では4.2%でした。

●材料価格本調査結果の概要(中医協資料)

薬価・材料価格の引き下げで1545億円程度の国庫負担縮減に

この調査結果を踏まえて、薬価と医療材料は来年(2020年)4月から引き下げられることになります(もちろん、薬価算定ルールの見直しを踏まえた引き下げ・引き上げも行われるが、ここでは考慮しない)。

現行ルールでは、「乖離分をすべて引き下げる」のではなく、一定の調整幅(流通経路や取り引き量の違い、さらに廃棄分を考慮する)を残した上で、引き下げを行うことになっています。薬価については調整幅が2%とされており、「乖離率8.0%-調整幅2.0%」=6.0%の引き下げ、材料価格については調整幅が4%とされており、「乖離率5.8%-調整幅4.0%」=1.8%の引き下げ、となる見込みです。

これが医療保険財政にどのような影響を及ぼすのかを考えてみましょう。医療費を40兆円、その4分の1が薬剤費であると仮定し、薬剤費を「およそ10兆円」と仮置きしてみましょう。すると「10兆円×6.0%の引き下げ」によって、薬剤費は6000億円減少する計算になります。薬剤費における国庫負担割合を4分の1(25%)と仮置きすれば、2020年度には1500億円程度の国費縮減が可能と考えられます。

また材料費を1兆円と仮置きすると、同様に「1兆円×1.8%の引き下げ」により材料費は180億円減少し、国費はその4分の1の45億円縮減できると考えられます。

したがって、薬価・材料価格の市場実勢価格を踏まえた価格引き下げにより、合計1545億円程度の国費支出縮減が見込まれます。ただし、この調査の後に「消費税対応改定」(薬価等については実勢改革を踏まえた引き下げ)がすでに行われており、その分(薬分490億円程度、材料分10億円程度)の扱いがどうなるのかも注目されます。

もっとも薬価制度については、新薬創出・適応外薬解消等促進加算をはじめとするさまざまな見直しが行われ、材料価格についても同じく見直しが行われることから、国費縮減額は制度改革内容に大きく左右されます。

通常、この薬価引き下げ財源を、診療報酬本体(医科・歯科・調剤の各点数)の引き上げ財源に充てています。昨今の診療報酬改定では「薬価引き下げ分は国民に還元すべき」との指摘が財務省等から強くなされており、2020年度改定で、どこまでが診療報酬本体に充てられるのか、今後の予算編成の動きを注視する必要があります。

【更新履歴】2019年10月の消費税対応改定分を考慮していない記述となっておりました。お詫びして訂正いたします。本文は追記済です。
 
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