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紹介状なし外来受診患者からの特別負担徴収義務、地域医療支援病院全般に拡大―中医協総会(1)

2019.12.11.(水)

大病院では、紹介状なしに外来を受診する患者について、初診時は5000円以上、再診時は2500円以上の特別負担を徴収する義務が設けられているが、大病院の範囲を「特定機能病院」と「一般病床200床以上の地域医療支援病院」(現在は許可病床数400床以上)に拡大する―。

紹介率・逆紹介率の低い大病院における「初診料・外来診療料の減算」についても同様に対象病院を拡大する―。

12月11日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こういった方向が概ね固められました。

12月11日に開催された、「第440回 中央社会保険医療協議会 総会」

「一般病床200床未満の地域医療支援病院」は徴収義務対象から除外

2020年度の次期診療報酬改定に向けて、社会保障審議会の医療保険部会医療部会で「基本方針」が策定されるなど、改定論議はまさに佳境に入りつつあります。12月11日の中医協総会では、▼オンライン診療料等▼情報共有・連携の推進▼外来医療―など幅広いテーマについて議論を行いました。本稿では、これらの中から「紹介状なしの大病院外来受診」に焦点を合わせます。



多くの軽症患者が大病院外来を受診すれば、「重症の高度医療が必要な患者への医療提供が阻害される」「軽症の外来患者に医療従事者が忙殺され、過重な負担から解放されない(医療従事者の働き方改革に反する)」などの弊害が生じてしまいます。そこで、「大病院は紹介・専門外来に特化し、一般外来は診療所や中小病院が担う」という「外来医療の機能分化」が重要テーマの1つとなります。

健康保険法では「200床以上の病院では、紹介状なしの外来受診患者から特別負担を徴収できる」というルールが設けられていますが、2016年度の診療報酬改定では、「紹介状なしに大病院の外来を受診する患者に一定額以上の特別負担を課す(徴収しなければならない)」という、さらに強いルールが導入されています(関連記事はこちら こちらこちらこちら)。

2018年度の前回診療報酬改定で対象病院を拡大し、現在は「特定機能病院」および「許可病床400床以上の地域医療支援病院」において、紹介状を持たずに外来を受診する患者から、▼初診:5000円(歯科は3000円)以上▼再診:2500円(歯科は1500円)以上―の特別の定額負担を徴収しなければなりません(通常の3割負担とは別に徴収しなければならない)。

このルール創設により「紹介状なしに大病院の外来を受診する患者」は減少傾向にありますが、2017年時点では▼700床以上病院で54.7%▼500-699床病院で57.8%▼400-499床病院で69.8%▼300-399床病院で72.9%▼200-299床病院で77.7%―という具合に「依然として、紹介を受けずに大病院外来を受診している患者が非常に多い」状況です。

紹介状なしに大病院外来を受診する患者は依然として多い(その1)(中医協総会(1)1 191211)

紹介状なしに大病院外来を受診する患者は依然として多い(その2)(中医協総会(1)3 191211)



この点、10月30日の中医協総会で「対象病院の拡大」が議論され、診療側委員からも「地域医療支援病院全般に拡大してよいのではないか」との意見が出ていました(第1ラウンドにおけるこのテーマの記事はこちら)。

今般、こうした意見も踏まえて、厚生労働省保険局医療課の森光敬子課長は次のような対象病院拡大案を提示し、概ね了承されました。

▽特定機能病院(従前どおり)

▽地域医療支援病院(一般病床200床未満を除く)



対象病院拡大により、新たに250施設程度(200-399床の地域医療支援病院)に特別負担徴収義務が課される見通しです。

紹介状なし患者からの特別負担徴収義務対象病院の病床規模別状況(中医協総会(1)1 191211)



地域医療支援病院は「原則200床以上」という病床数要件が設けられていますが、都道府県知事の判断により「200床未満の病院」でも指定が可能です。2018年12月の厚労省調査によれば、200床未満の地域医療支援病院は20施設あり(上図)、これらは徴収義務対象から除外されることになります。

地域医療支援病院には、病床数に係る要件が設けられている(中医協総会(1)4 191211)



また200床以上の地域医療支援病院の中には、「一般病床200床未満」の施設も一部あり、これらも徴収義務対象から除外されます。



なお、この見直しに関連して診療側の猪口雄二委員(全日本病院協会会長)は「地域密着型の地域医療支援病院もある」ことを強調し、「一定の配慮」を求めています。今後、▼医療資源の少ない地域に配慮した評価(病院単位での配慮として「基準緩和」などを実施する)▼定額負担を求めなくても良い場合の除外(患者単位での配慮)―などを詰めていくことになるでしょう。



特別負担徴収について、一般患者には理解されないケースも多く、医療機関の窓口等でトラブルが生じることもあります。新たに特別負担徴収義務が課される200-399床の地域医療支援病院では、早めに対策を立て、準備をしておくことが必要です。

紹介率・逆紹介率に着目した減算規定も地域医療支援病院全般に拡大

また、外来医療の機能分化の一環として「紹介率・逆紹介率が著しく低い大病院において、初診料・外来診療料(言わば大病院の再診料)を減算する」仕組みが設けられています。現在は、紹介率50%未満かつ逆紹介率50%未満の「特定機能病院および許可病床400床以上の地域医療⽀援病院」が減算対象ですが、この対象も上記の徴収義務対象病院と同様に拡大する方向が概ね固められました。



地域医療支援病院には、指定要件の1つとして紹介率・逆紹介率要件(▼紹介率80%以上▼紹介率65%超かつ逆紹介率40%超▼紹介率50%超かつ逆紹介率70%超―のいずれか)が設けられており、今回の見直しが大きな影響を及ぼすことは考えにくいと思われますが、200-399床の地域医療支援病院では、今一度、自院の紹介率・逆紹介率を確認しておく必要があるでしょう。

地域医療支援病院には、紹介率・逆紹介率に係る要件が設けられている(中医協総会(1)5 191211)



仮に「逆紹介率50%以上を満たしていない」場合には、早急に地域医療機関と協議するなどし、「安定した逆紹介先」の確保を急ぐ必要があります。
 
 
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