入院患者のPET検査、他院実施での「入院料減額措置」を緩和し共同利用推進―中医協総会(3)
2019.12.19.(木)
PET検査についても共同利用の拡大・推進を目指し、「入院患者が他医療機関を受診した場合の、入院料等の減額措置」緩和を適用する―。
12月18日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、こういった点も議論されました。
小児等へのCT撮影の加算、学会ガイドラインに沿うことを要件化し、評価を引き上げ
2020年度の次期診療報酬改定に向けて、基本方針が固められ(社会保障審議会に基本方針策定論議に関する記事はこちらとこちら)、改定率も決まり、中医協における個別テーマ論議も大詰めを迎えています。12月18日の中医協総会では「医師の働き方改革への診療報酬でのサポート」や「オンライン診療料等の見直し」のほか、技術的事項や調剤報酬に関する議論も行われました(働き方改革とオンライン診療料等については、すでにGem Medでお伝え済です)。
まず技術的事項に関しては、▼医療機器の効率的かつ有効・安全な利⽤▼義肢装具の提供に係る医療機関と義肢装具事業者との連携―が議題となりました。 10月23日の中医協総会でも議論されたテーマです。
前者の「医療機器の効率的かつ有効・安全な利⽤」に向けて、厚生労働省保険局医療課医療技術評価推進室の岡田就将室長は具体的な見直し案を提示しています。
まず限られた施設でしか実施できない【ポジトロン断層撮影】(PET検査)については、共同利用しやすい環境の造成に向けて「入院患者が他施設で高度な放射線治療機器を利用する場合の『入院料の減額』緩和措置」と同様のルールを設けることが提案されました。
入院患者が他施設での診療を受けた場合、入院料等の種類に応じて「入院料等の減額」が行われます。理論的には「当該診療中には入院医療機関の投下コストが減少する」ことを踏まえたものです。
しかし、これは入院医療機関における「減収」を意味することから、「自院でより多くの医療提供が行えるように設備整備を進める」ことを促進してしまいがちです。一方、高度な放射線治療機器を数多くの病院で実施することは、症例の分散による「非効率」「医療の質の低下」を招いてしまうため「集約化し、共同利用を進める」方針が、第3期がん対策推進基本計画の中で明確にされました。これを受けて診療報酬上、「入院料等の減額措置の緩和」が2018年度の前回診療報酬改定で行われています。
岡田医療技術評価推進室長は、PET検査についても「共同利用」を進める必要があることから、同様の減額措置緩和ルールを設けることを提案したものです。この提案に異論は出ていません。
また、岡田医療技術評価推進室長は【コンピューター断層撮影診断料】の新生児、乳幼児および幼児加算について、「小児の頭部外傷に対する頭部CT検査に関する日本医学放射線学会の画像診断ガイドライン」に沿うことを要件に追加し、さらに▼意識状態の確認▼判定に係る専門性や労力―について更なる評価を検討することを提案しました。
10月23日の中医協総会でもこのテーマについて議論。「ガイドラインに沿ってCT撮影等を行った場合(逆にCT撮影を行わないことを、患者・家族に丁寧に説明した場合)に、診療報酬で評価すべきか否か」が論点となりましたが、診療側から「医療安全の面からは丁寧な画像診断が求められるのではないか」、支払側から「ガイドライン準拠は当然のことではないか」との指摘が出されていました。
そこで岡田医療技術評価推進室長は、「ガイドラインではCT撮影に当たり意識障害の状況判定を求めているが、患者が小児の場合、『より高い専門性』が求められ、『非常に困難』であり、『成人と比べて労力を要する』こと」を踏まえて、上述のように提案変更を行ったものです。あわせて「小児に対する頭部CT検査の実施状況等を把握するため、『撮影に至った理由』を摘要欄の選択肢から選択する」ことも提案されました。
この方向に異論は出ていませんが、当初提案であった「診療行為(ここではCT撮影)を行う必要がない場合には、その理由等を患者や家族に懇切丁寧に説明したうえで、診療行為を行わないこと」を診療報酬でどう評価すべきか、というテーマは将来の非常に重要な検討テーマ(いわば今後の宿題)として残っていると言えるでしょう。
また超音波検査の活用に関しては、▼POCUS(Point-of-care ultrasound)として実施される在宅での超音波検査について、臨床的意義や短期間に繰り返し実施されることなどを踏まえ、新たな評価の枠組みを設ける▼超音波検査の実態を把握するため、検査を実施した臓器や領域等について摘要欄での選択を求める―という新たな提案が行われ、中医協委員も概ね了承しています。当初は「臓器別・領域別の評価」も検討されましたが、「まずデータを収集する」ことに落ち着いた格好です。
なお、義肢装具の提供に係る医療機関と義肢装具事業者との連携に関しては「医療機関と義肢装具事業者との連携の実態を踏まえ、それぞれの役割に応じた新たな評価体系を構築する」方向が固められています。
「同一薬局の活用」拡大を期待し、薬剤服用歴管理指導料を見直し
また調剤報酬については、厚労省保険局医療課の田宮憲一薬剤管理官から次のような提案が行われています。12月4日になされた提案を一部進化させています。
(1)患者が同じ薬局を繰り返し利⽤することを推進する観点から、【薬剤服⽤歴管理指導料】の点数が低くなる規定(【調剤基本料1】取得薬局で、一定期間(6か月以内)の再度来局で点数を低く設定し、患者の再来局を促す)について、患者の薬局の来局頻度を踏まえつつ、再度の来局の期間を6か⽉から⼀定程度短縮する
(2)喘息患者・COPD患者について、医師の求めや患者等の申し出があって医師に了解を得た場合に「デモ機等を⽤いて吸⼊指導を⾏う」ことを評価する(お薬手帳や文書等により結果を処方医に報告することを要件とする)
(3)退院後に簡易懸濁法(錠剤を粉砕等せず、ぬるま湯での崩壊・懸濁を待ち、経管栄養で当該薬剤を投与する方法)を新たに開始する患者に対し、医師の求めや家族等の申し出があって医師に了解を得た場合に、「薬局において薬剤選択の提案、家族等に対し簡易懸濁法の説明・指導を⾏う」ことを評価する
(4)重症低血糖の原因薬剤がインスリンやSU剤であるとの報告を踏まえ、これらの薬剤の適正使用を推進する観点から、医師が必要と認めて指示がなされた場合や患者等の申し出があって医師に了解を得た場合に、「調剤後に電話等により服⽤上の注意等について改めて指導等を⾏う」ことを評価する(お薬手帳や文書等により処方医にフィードバックすることを要件とする)
(5)医療機関と薬局が連携しつつ、複数医療機関を受診する患者の⾎液検査等の結果を処⽅医に共有し、処⽅薬の⽤法・⽤量を最適化する取組を推進する観点から、「⾎液検査値等の活⽤により処⽅内容が変更となった場合の評価」を拡充する
このうち(1)は、「一定期間内に同じ薬局を利用すれば自己負担が安くなる。この薬局をまた利用しよう」と患者に動機づけることを期待するものです。この期間を短縮した場合には「同じ薬局を利用しよう」と考える患者が減少するものの、「複数の医療機関にかかっており、それまで各医療機関の近くの薬局を利用していたが、まとめて自宅近くの薬局を利用しよう」という行動変容が生じることを田宮薬剤管理官は期待しています。
中医協委員からは「見直しにより同一薬局活用が進むのか疑問もある。期間設定を慎重に行うべき」(診療側の松本吉郎委員:日本医師会常任理事)、「期間短縮とともに更なる薬剤服用歴管理指導料の引き下げなどを行ってはどうか」(支払側の吉森俊和委員:全国健康保険協会理事)などの意見も出ていますが、方向そのものへの明確な反対意見は出ていないようです。
また(2)(3)提案には明確な反対意見は出ていませんが、(4)(5)提案については診療側委員の納得は十分に得られていないようです。今後の検討内容を注目する必要があります。
なお、来年(2020年)3月までの特例措置として「国家戦略特区において、対面で情報提供や指導を行った薬局において引き続き『遠隔服薬指導』(オンラインでの服薬指導)を行った場合にも、暫定的に【薬剤服用歴管理指導料】の算定を認める」ことも了承されました。すでに離島等で認められている遠隔服薬指導について、一部要件を厳格化し、次期改定までの「暫定的な特例」を認めるものです。
遠隔服薬指導については、改正薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)で一定要件の下で解禁されます。調剤報酬での対応については別途検討されます。
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