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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

急性期一般1の「重症患者30%以上」等の施設基準、中医協の支払側委員は「低すぎる」と強調

2019.10.21.(月)

2018年度の前回診療報酬改定後の状況を見ると、旧7対1一般病棟から、新設された急性期一般病棟入院料2・3への移行はあまり進んでいない。こうした点を踏まえて、急性期一般病棟の実績評価指標である「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」について項目の見直しや、重症患者割合の基準値厳格化を検討すべきか―。

10月18日に開催された中央社会保険医療協議会・診療報酬基本問題小委員会(以下、基本小委)では、こういった議論が行われました。

支払側委員は「厳格化が必要である」と早くも強い調子で訴えており、今後の改定論議でも熱い火花が飛び散りそうです。

10月18日に開催された、「第197回 中央社会保険医療協議会 診療報酬基本問題小委員会」

診療側委員は「重症患者割合30%以上は妥当」と強く反論、早くも火花散る

Gem Medで詳しくお伝えしているとおり、中医協の下部組織である「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)で「入院医療の報酬見直し」に向けた技術的課題の整理・分析が行われています。この分析結果を受けて、中医協で「2020年度診療報酬改定」論議が本格化するのです(入院医療について)。

10月18日の基本小委には、入院医療分科会で実施した「2019年度調査」(2018年度診療報酬の効果を見るための特別調査)結果速報が報告されました(入院医療分科会に関する記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。詳細は入院医療分科会の記事に譲りますが、基本小委ではとくに「旧7対1一般病棟の動向」に注目が集まりました。

「旧7対1から急性期一般2・3への移行」は、2018年度調査では▼急性期一般2への移行は2.6%▼急性期一般3への移行は0.5%―、今回の2019年度調査では▼急性期一般2への移行は3.2%▼急性期一般3への移行は0.2%―にとどまっています。




支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、この結果について「高齢化等で地域の患者構成が変化する中で、旧7対1と旧10対1との間に中間的な評価である【急性期一般入院料2】と【急性期一般入院料3】を設け、そこへの移行を期待する」という2018年度改定の目的が達成されていないと指摘。さらに、「急性期一般1の重症患者割合を見ると、ほとんどの病棟で基準値(看護必要度1:30%以上・看護必要度II・25%以上)を大きく上回っている。重症患者割合の基準値は、2018年度診療報酬改定において公益裁定で決定したが、それが低すぎたことが原因である」と分析し、2020年度診療報酬改定に向けて厳格化を検討する必要があると訴えました。




これに対し診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「旧7対1に相当する急性期一般1は、2018年6月から11月の5か月で3ポイント減少している。病床数で考えれば1万床程度の減少と考えられ、稼働率も加味すれば2018年度診療報酬改定の効果は相当程度現れている。重症患者割合の基準値が低いと指摘されるが、基準値と実績値との間に一定の余裕がなければ継続した病院経営は困難である」と強く反論。早くも厳しい舌戦が始まっています。


また、入院医療分科会では、急性期一般2・3について看護必要度の測定方法が「DPCデータ(EF統合ファイル)に基づく看護必要度IIで行わなければならない」という点が移行へのハードルになっているのではないか、とも指摘されます。この点、診療側の島弘志委員(日本病院会副会長)は、「すべての病院で電子カルテを導入しているわけではなく、また看護必要度IIに対応したシステムを構築できているわけでもない」と現状を紹介。松本委員も「急性期一般2・3でも看護必要度IとIIの選択を認めたほうが、移行が進むのではないか」との考えを示していますが、幸野委員は「看護必要度IIのみ」との基準値には反対の意向を示しています。

看護必要度をめぐっては、例えば▼重症患者割合の基準値をどう考えるか(急性期一般1の「30%以上」などを厳格化するのか)▼評価項目のうち「A1点・B点、ただし危険行動などを伴う」患者を重症患者にカウントするのか▼評価項目のうちA・B・C項目の内容をどう精査していくのか▼看護必要度IIの導入をどう推進していくのか―など様々な論点があります。これら論点のすべてについて、「診療側のみ」「支払側のみ」の主張が通るとは考えにくく、今後、中医協で診療側・支払側の双方が「この論点を重視し、別の論点は相手側に譲る」という駆け引きをしながら、着地点を探っていきます。幸野委員の発言は「看護必要度見直し論議は中医協では本格化していない現時点では柔軟な姿勢を見せる必要はない。今は厳しめのボールを投げるにとどめる」という戦術に基づくものかもしれません。今後、各側がどの項目を重視するのか、注目する必要があるでしょう。



なお、療養病棟については「経過措置」(看護配置20対1以上を満たさない、医療区分2・3割合を満たさない療養病棟も、2020年3月31日まで減額された入院料算定が可能)について、「延長すべきでない」という支払側委員と、「当面は延長が妥当」とする診療側委員との間で、やはり厳しいやり取りが始まっています。
 
 
 
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