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GemMed塾 看護モニタリング

A項目1点・B項目3点のみ患者、療養病棟で該当患者割合が高いが、急性期の評価指標に相応しいか―入院医療分科会(1)

2019.10.16.(水)

2018年度の前回診療報酬改定では、急性期一般入院基本料における重症患者(一般病棟用の重症度、医療・看護必要度を満たす患者)に「A項目1点・B項目3点で『診療・療養上の指示が通じる』『危険行動』のいずれかに該当する患者」を追加したが、この患者は急性期病棟よりも療養病棟で該当割合が高い。もちろん同じA1点・B3点患者であっても急性期病棟と慢性期病棟で状態像が異なるが、現在は、そうした点が評価項目に含まれておらず、急性期入院医療の評価指標として相応しいだろうか―。

10月16日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)で、こういった議論が行われました。

入院医療分科会では、「取りまとめ」に向けた議論も始めており、ICU・療養病棟の評価指標と合わせて別稿でお伝えします。

10月16日に開催された、「令和元年度 第10回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

急性期病棟の「A1・B3のみ患者」、容体の急変に備えて心電図モニター装着が多い

入院医療分科会では、2020年度の診療報酬改定に向けて「入院医療に関する技術的課題についての調査・分析」を行っており、いよいよ最終局面を迎えています。10月16日の会合では、入院医療の「評価指標」について残された課題を議論しました。ここでは一般病棟に焦点を合わせてみます。



2018年度の前回診療報酬改定では、入院料について大きな報酬体系の見直しを行い、「看護配置等に基づく基本部分」と「重症患者受け入れ状況等に基づく実績評価部分」とを組み合わせるものとしました。後者の実績評価部分では、「何を指標として重症患者受け入れ状況を評価するか」が重要ポイントと言え、急性期一般入院基本料(従前の7対1、10対1)では「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度を満たす患者割合」(以下、看護必要度割合)を指標に、療養病棟入院基本料では「医療区分2・3に該当する患者割合」を指標にしています。

まず一般病棟の「看護必要度」については、2018年度改定で例えば次のような見直しが行われました。

▽看護必要度の定義を一部見直し、▼「A項目1点以上かつB項目3点以上」のうち、「診療・療養上の指示が通じる」「危険行動」のいずれかに該当すれば、「重症患者に該当」と扱う(以下、A1・B3と呼ぶ)▼C項目の開腹手術(現在は5日間)について、所定日数4日に短縮する―こととする

▽従前からの看護必要度評価票に基づく重症患者割合の計算方法を「看護必要度I」、新たにDPCのEF統合ファイルに基づく計算方法を「看護必要度II」とし、それぞれで重症患者割合の基準値を設定する



このうち「A1・B3」については、急性期病棟においても認知機能の低下した高齢患者が増加している状況を踏まえ、こうした患者に必要な急性期医療を提供するために「看護必要度を満たす」と扱うことになったものです。これまでに入院医療分科会には、▼A1・B3のみに該当する患者において、A1点は「心電図モニター」への該当が多く、B3点は「診療・療養上の指示が通じる+危険行動」や「移乗+衣服+指示」への該当が多い▼A1・B3のみに該当する患者の約半数(49.3%)は、「非該当」(看護必要度を満たさない)からA1・B3へ移行しており、その多くは入院から2日目に移行している▼A1・B3のみに該当する患者では高齢患者が多く、「入所先・転院先の確保」が難しく入院を継続している患者が多いB3点を満たす非該当患者が、心電図モニターなどを装着することでA1・B3のみに該当するケースが相当程度ある―などの分析結果が提示され、「A1・B3は、急性期入院医療の評価指標として相応しいのか」という議論が行われてきました。

さらに今般、厚労省は「A1・B3のみに該当する患者」について、▼急性期病棟では1.7-5.2%だが、療養病棟では11.3-14.6%である▼A項目について急性期病棟では「心電図モニター管理」該当者が多いが、療養病棟では「創傷処置」該当者が多い―などの新たなデータを示しました。

A1・B3患者を急性期病棟と療養病棟で見てみると、療養病棟のほうが該当患者割合が高いことが分かる(入院医療分科会(1)1 191016)



これを受け神野正博委員(全日本病院協会副会長)は「急性期病棟のA1・B3のみ患者は、心電図モニター装着者が多い。これは『急変』の恐れがある患者が多いことを意味している。何らかの容態変化があり心電図モニター装着に至ったと考えられ、A1・B3は急性期入院医療の指標として重要な意味を持つことが確認された」と強調。

しかし菅原琢磨委員(法政大学経済学部教授)は、「客観的に見ればA1・B3のみ患者は療養病棟に多いことは明らかだ。急性期病棟のA1・B3患者と療養病棟のA1・B3患者とでは状態像が異なるのであろうが、そこは評価指標に反映されていない」と指摘し、急性期の指標としては「問題がある」との考えを示しました。また急性期入院医療の評価指標として継続するのであれば、「適切な項目を追加できないか」を検討すべきと提案しています。また中野恵委員(健康保険組合連合会参与)も「A1・B3のみで急性期患者と評価することには違和感を覚える」旨をコメントしています。

菅原委員の指摘どおり、現在の「A1・B3」のままでは「どちらかと言えば、慢性期入院患者の評価に相応しい」と考えることもできてしまいます。今後、中央社会保険医療協議会で「急性期指標としての妥当性」「急性期入院医療の評価に相応しい指標への見直し」などを検討することになるでしょう。

なお、この点について池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)は「厚労省データからは、療養病棟でも『急性期病棟で重症と判断される患者』を相当程度受け入れていることが分かる。療養病棟でもA1・B3を何らかの形で評価指標に盛り込むことを検討すべき」と提案しています。もちろん、同じA1・B3該当患者でも急性期病棟と療養病棟では患者の状態像は相当異なると考えられ、単純に「A1・B3該当者を医療区分2または3と扱う」という議論にはならないであろう点に留意が必要です。

内服の抗がん剤等の多くは外来で実施、「入院医療の評価指標」として相応しいか

また看護必要度については、▼A項目(モニタリングおよび処置等)▼B項目(患者の状況等)▼C項目(手術等の医学的状況)―のそれぞれについての見直し論議も行われています。

まずA項目(モニタリングおよび処置等)では、「専門的な治療・処置」のうち、例えば抗悪性腫瘍剤について「注射剤は入院医療でも一定程度行われているが、内服薬はほとんどが外来で行われている」点を改めて確認。「ほとんど外来で実施されている行為」が、入院医療の評価指標として相応しいのかという論点です。この点、石川広巳委員(日本医師会常任理事)は「内服の抗がん剤であっても、医師が『初回治療なので入院してもらい、数日間様子を見よう』と判断することもある」などといった点に配慮した検討が必要と強調しています。

看護必要度B項目、患者のADLと介助実施の有無とを整理する方向

またB項目(患者の状況等)については、「患者のADLに着目した評価項目」(寝返りが可能か、危険行動があるか、など)と「看護職員等による介助の有無」(移乗や食事摂取等に介助をしたかいなか)とが一体となってしまっていることが検討課題として浮上しました。

この点、武井純子委員(社会医療法人財団慈泉会相澤東病院看護部長)や林田賢史委員(産業医科大学病院医療情報部部長)は「患者のADLと介助実施の有無とを整理してはどうか」との考えを示しています。厚労省保険局医療課の担当者は、例えば「患者自身が行為を実施可能か否か」(自力移乗が可能かどうかなど)と「介助を実施したか否か」(移乗に一部介助・全部介助を行ったか否か)を掛け合わせ、評価結果(得点)そのものが変化しないような見直しを検討していく考えを示しています。

看護必要度B項目は、現在、ADLと介助の有無とを一体として評価してしまっている(入院医療分科会(1)1 191016)

看護必要度IIで評価されていない手術でも、侵襲が高く入院で実施されるものがある

一方、C項目(手術等の医学的状況)については、「急性期入院医療の必要性を判断する上で、より広範な手術を評価対象とすべきではないか」との指摘が牧野憲一委員(日本病院会常任理事、旭川赤十字病院院長)らからなされていました。

厚労省は今般、「看護必要度IIで評価対象となっていない手術」のうち、▼入院での実施割合が極めて高い(90%以上・95%以上・100%)▼実施件数が多い(稀な疾患ではなく、多くの急性期病院で実施されている)▼診療報酬点数が高い(侵襲が大きいと想定され、急性期での入院医療を評価するに相応しい)―手術を調べたところ、例えば、K171-2【内視鏡下経鼻的腫瘍摘出術】、K395【喉頭、下咽頭悪性腫瘍手術(頸部、胸部、腹部等の操作による再建を含む。)】など30の術式がピックアップされました。

入院での実施割合が高く、かつ実施件数が多く、診療報酬点数の高い術式(入院医療分科会(1)1 191016)



牧野委員は、これらについて「入院での実施が当たり前となっている術式は、積極的に看護必要度の評価項目に加えていくべき」とコメント。さらに「入院での実施が一般的である検査(厚労省の分析ではD412【経皮的針生検法】やD414-2【EUS-FNA】はほぼ入院で実施されている)やD206【心臓カテーテル法による諸検査】などについても看護必要度の評価項目に加えるべく検討を進めてほしい」と提案しています。

入院での実施割合が高い検査(入院医療分科会(1)2 191016)



この点、池田俊也委員(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)は「急性期入院医療の評価指標としての相応しさを検討する必要がある。針生検検査などは、開頭・開腹手術などと同列に扱うべきだろうか」と慎重姿勢を見せています。

上記手術については、診療報酬点数を「侵襲の度合い」、つまり「急性期入院医療としての相応しさ」を示す指標と考えてピックアップされていますが、検査については「急性期入院医療としての相応しさ」の検証が中医協で要請されるかもしれません。

なお、この点について山本修一分科会長代理(千葉大学医学部附属病院長)は、「医学・医療の進歩を踏まえると、今のC項目は大雑把すぎると考えられる。細かく丁寧に妥当性を検証する必要がある」との考えを示しました。

 
 
 
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