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2021年度薬価改定に向けた議論続く、診療・支払両側の意見の溝は依然広く深い―中医協・薬価専門部会

2020.12.9.(水)

来年度(2021年度)には初の「薬価の毎年度改定・中間年度改定」が予定されているが、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中で、そもそも「薬価改定を実施すべきか」、また仮に実施すルとした場合に改定の内容(対象品目の選定基準や、適用ルールなど)をどう考えるか―。

12月9日に開催された中央社会保険医療協議会・薬価専門部会でこういった議論が続けられました。

厚労省が「乖離率の●倍」を改定対象とした場合の、品目数などを粗く試算

2018年度からスタートした薬価制度抜本改革の一環として、「市場実勢価格を適時に薬価に反映して国民負担を抑制するために、従前2年に1度であった薬価改定について、中間年度においても必要な薬価の見直しを行う」【毎年度薬価改定、中間年度改定】方針が明確化されています。

来年度(2021年度)に初の中間年度改定が予定されていますが、新型コロナウイルス感染症の対応に追われる医療現場の負担等を考慮し、「中間年度改定をどうすべきか(実施すべきか、実施するとして改定ルールをどう考えるか)」が議論されています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。

最終的には、政府が年末の2021年度予算案を編成する過程で「改定を行うか否か」を決しますが、中医協でも並行して議論が行われています。

この点、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)や有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)らが「医療機関や薬局、卸業者の経営は厳しい。仮に実施するとしても影響が最小限になるように行うべき」と訴えたのに対し、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)や吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)らは「中間年度改定の趣旨は、より迅速に薬価を市場実勢価格に近付け、国民負担を軽減するところにある。可能な限り広い範囲で改定を実施すべき」と反論するなど、診療側と支払側との間で意見の溝は埋まっていません。厚生労働省保険局医療課の井内努課長は「最終的には予算案編成過程で決するが、中医協でも議論を深めてほしい」とコメントしています。



来年度(2021年度)の薬価改定については、「実施すべきか否か」という論点のほかに、「実施する場合に、どういったルールで実施すべきか」という論点もあります。後者については、(1)対象品目をどう考えるか(2)改定ルールをどう考えるか―などのさらに細かい論点があります。

このうち(1)の対象品目については、厚労省保険局医療課の紀平哲也薬剤管理官から議論の素材の1つとして、▼平均乖離率(2020年度調査の速報では約8.0%)の2倍以上となる品目について改定(薬価引き下げ)を行う場合▼同じく1.5倍以上の場合▼同じく1.2倍以上の場合▼同じく1倍超の場合―の対象品目数・影響額に関する粗い試算結果が提示されました。

「2倍以上」を基準とした場合には、約3200品目(医療用医薬品全体の18%)が薬価引き下げの対象となり、その内訳は▼新薬:2品目(新薬の0.1%)▼うち新薬創出・適応外薬解消等加算の対象品目:ゼロ▼長期収載品:55品目(長期収載品の3%)▼後発品:3000品目(後発品の31%)▼その他(1967年以前の薬価基準収載品目):130品目(その他品目の3%)―となります。影響が著しく小さくなることが分かります。

一方「1倍超」を基準に据えた場合には、約8700品目(医療用医薬品全体の50%)が薬価引き下げの対象となり、その内訳は▼新薬:476品目(新薬の21%)▼うち新薬創出・適応外薬解消等加算の対象品目:32品目(加算対象品目の5%)▼長期収載品:1100品目(長期収載品の68%)▼後発品:6600品目(後発品の67%)▼その他:500品目(その他品目の17%)―となります。影響は大きくなりますが、新薬創出等加算品目に限ると「かなり限定的」となっています。

「平均乖離率の●倍」を薬価改定対象とした場合の品目数等の粗い試算(中医協薬価専門部会 201209)



あくまで「議論の素材」ではありますが、この4つの「基準」(2倍・1.5倍・1.2倍・1倍)を軸に対象品目の範囲を探っていくことになるでしょう。このため支払側の幸野委員は「効果・影響は非常に限定的であり、また安価な後発品に偏った改定となることが予想される。薬価制度抜本改革の骨子にある『国民負担の軽減の観点から、(対象品目)はできる限り広くすることが適当』との趣旨に反する。遺憾である」と指摘。

あわせて、▼先発品▼新薬創出等加算対象品目▼長期収載品▼後発品―などにカテゴライズして、対象品目の選定基準を設定することも検討すべき、新薬創出等加算の累積控除など可能な限り広範な薬価改定ルールを今回も適用すべき、となど提案しています(関連記事はこちらこちら)。

乖離「率」(薬価と市場実勢価格との乖離の率)を基準とした場合、価格下落幅の大きな後発品において「対象品目が多く」なり、値崩れがしていない、いわば「若い医薬品」(新薬)で「対象品目が少なく」なることは当然とも言えます。幸野委員の言葉の裏には、「改定率のみでは高額な新薬について薬価引き下げが行われない。乖離『額』(薬価と市場実績価格との乖離の金額)を基準に据えて、より多くの新薬も改定対象に加えるべき」との考えがあるものと言えるでしょう。



もっとも本年末には来年度(2021年度)薬価改定の内容を決定しておく必要があり、それまでに「カテゴリー別の基準値」の設定などを行うことは難しそうです。

この点、同じく支払側の吉森委員は、「本来であれば、『中間年度改定の基本的なルールを決定する』→『新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた、来年度(2021年度)改定の特別ルールを考える』という流れで議論すべきであった」と改めて強調したうえで、「中医協では来年度(2021年度)限りの改定ルールを定め、2022年度の通常改定論議、2023年度の中間年度改定論議の中で、基本的な薬価改定ルールを検討していくべきである」と提案しています。

薬価専門部会では、次回の会合で関係団体からヒアリングを行い、2020年度薬価調査速報値をも踏まえた「意見」を聴取する構えです。

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