2024年度診療報酬改定に向け「地ケア病棟の救急対応」「医師働き方改革の対応状況」などを詳しく調査—入院・外来医療分科会(4)
2023.4.26.(水)
2024年度の次期診療報酬改定に向けて、入院・外来に関する調査を実施する。その際「地域包括ケア病棟での要介護高齢者の急性期対応が重視されている点」「2024年度から医師働き方改革が本格化する点」「療養病棟にかかる経過措置が2023年度で終了する点」などを踏まえ、2023年度には当初予定よりも詳しい調査を行う—。
4月24日に開催された診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(中央社会保険医療協議会の下部組織、以下「入院・外来医療分科会」)では、こうした調査内容が概ね固められました。
近く開かれる中央社会保険医療協議会での承認を待って、調査が実施され、今秋(2023年秋)に調査結果が順次報告されていきます(2023年度におけるDPC機能評価係数IIの分布状況等に関する記事はこちら、機能評価係数IIの上位・下位各50病院の取り組みに関する記事はこちらとこちら)。
2023年度の入院・外来調査、当初予定よりも「詳しく」実施することに
昨今の診療報酬改定は、医療現場の実態を調査・分析した「データ」「エビデンス」に基づいて議論が交わされ、内容が決定されます。2024年度の次期診療報酬改定論議に向けて、入院・外来医療に関しては、2022年度の前回改定の影響を含めた調査を▼2022年度▼2023年度—の2度に分けて行うことが「7月20日の入院外来医療分科会」と「7月27日の中医協」で決まっています(関連記事はこちらとこちら)。改定前(例えば2021年度)と改定後(2022・23年度)の状況を比較し、「2022年度改定の効果が思うように出ている(従前の課題が解決している)のか、課題が解消していないのか」「新たな課題が生まれていないか」などを把握したうえで、2024年度改定内容を議論していくことになります。
すでに2022年度調査は実施され、4月24日の入院・外来医療分科会では「2023年度調査」の内容を議論しました。
2023年度には、次の調査を行います(本年(2023年)6-7月に調査を行い、今秋から分析を実施)
(1)一般病棟入院基本料等における「重症度、医療・看護必要度」の施設基準等の見直しの影響(その2、2022年度にも調査を実施し、23年度にも調査を行う、以下同じ)
(2)特定集中治療室管理料等の集中治療を行う入院料の見直しの影響(その2)
(3)地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料の実績要件等の見直しの影響(その2)
(4)療養病棟入院基本料等の慢性期入院医療における評価の見直しの影響(その2)
(5)新興感染症等にも対応できる医療提供体制の構築に向けた評価等(その2)
(6)医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進に係る評価等(その2)
(7)外来医療に係る評価等(その2)
(8)医療資源の少ない地域における保険医療機関の実態
なお、(2)(3)(4)(6)の調査は、昨年(2022年)7月時点では実施予定がありませんでしたが、「新型コロナウイルス感染症の影響もあり、2023年度にも引き続き調査を行う必要がある」「高齢化の進展・コロナ対応などの中で地域包括ケア病棟での要介護高齢者受け入れの重要史枝がクローズアップされている」「療養病棟の経過措置が2023年度で終了する」「2024年度から医師働き方改革が本格スタートする」といった状況を踏まえ「再度、詳しく調査することが必要と考えた」と厚生労働省は説明しています。
調査内容を眺めると、▼救急における、いわゆる「下り搬送」の状況を調査する(重症度の低い患者について、高機能の3次救急から2次救急に搬送しなおすなど、要介護高齢者の急性期入院とも関連して調べられる。関連記事はこちら)▼地域包括ケア病棟における救急対応状況を詳しく調べる(関連記事はこちらとこちら)▼人生の最終段階における医療対応(いわゆるACP)について、2024年度が同時改定である点も踏まえて詳しく調べる▼感染対策について「高齢者施設と医療機関との連携」が重視されている点を踏まえて詳しく調べる(関連記事はこちら)▼リハビリ・口腔・栄養の一体的推進を多職種共同で実施しているかどうかについて詳しく調べる(関連記事はこちら)▼外来において「かかりつけ医機能を評価する地域包括診療料・地域包括診療加算・機能強化加算・時間外対応加算」などの状況を詳しく調べる(関連記事はこちら)▼オンライン資格確認等システム導入の義務化を踏まえて、状況を詳しく調べる(関連記事はこちら)—などが目立ちます。もちろん、「重症患者の受け入れ状況」「各病棟等で実施している医療提供内容」などの基本的な調査は継続して行われます。
こうした調査内容に対し異論・反論などは出ていません。ただし、委員から「コロナ感染症の位置付けが5月8日から5類に変わり、これにより入院・外来の医療提供内容なども変わると予想される。その点を踏まえた分析などが可能な調査としておくべき」(中野惠委員:健康保険組合連合会参与)、「人生の最終段階の医療について、『指針を定めているか否か』のみでなく、『指針に基づいた対応を行っているかどうか』まで踏み込んで調べられないか検討すべき。また看護職員の外来配置状況も調べてほしい」(秋山智弥委員:名古屋大学医学部附属病院卒後臨床研修・キャリア形成支援センター教授、日本看護協会副会長)、「看護職員処遇改善評価料について、基準等を満たしながらあえて届け出ない病院もあるようだ。その点が明確になるように調べてほしい」(井川誠一郎委員:日本慢性期医療協会副会長)、「複数回答可能な項目について『最も妥当するもの』が分かるような形で回答する形式を検討してほしい」(小池創一委員:自治医科大学地域医療学センター地域医療政策部門教授)、「介護医療院への転換状況、心大血管疾患等リハビリの緩和影響なども分かるように調査を行ってほしい」(田宮菜奈子委員:筑波大学医学医療系教授)—などの注文がついています。
また療養病棟に調査については、「別調査票」で調査を行ってきたが、一般病棟などと同じ調査票を用いる提案がなされました。この点、井川委員は「療養病棟と一般病棟等を同じ調査票とすれば、療養病棟が『回答しなくてよい』『回答できない』項目が少なからず出てくる。療養病棟側は悩んでしまい、回答率が低くなってしまわないか」との疑問が出ています。
意見・注文を踏まえた工夫等が厚労省で検討され、近く開催される中医協での了承を待ち、調査が実施されます。
なお、2022年度調査については、「回収率が前回調査(2022年度改定に向けた2020・21年度の調査)よりも低くなってしまっている」ことが報告されました。「さらなる回答率向上に向けた努力」が行われるとともに、上述の「2023年度調査において、回答者の負担軽減に向けた配慮」も重要となります。
「●●を実現したい」という思いから「○○の調査も実施してほしい」と要望する委員も少なくありませんが、●●の中には、すでに別の検討会等で「一度却下」された政策も含まれているようです。「回答率向上」という重要目標を達成することが強く求められており、「負担増加」につながるような調査項目追加要望は控えるべきでしょう(もちろん、重要性に鑑みた追加要望が一切許されないわけではない)。
入院・外来医療分科会では、この6月頃から「2022年度調査結果に基づく議論」をはじめ、夏頃に、親組織である中医協に「中間的な報告」を行います。その後、秋から「2023年度調査(上述)結果に基づく議論」を行い、中医協に「最終報告」を行います。その中には既に別稿で報じている「DPC改革」の内容も含まれます(関連記事はこちらとこちら)。
こうした入院・外来医療分科会の報告を踏まえて、中医協総会で秋以降、2024年度改定の内容を細かく議論していくことになります。
【関連記事】
急性期入院医療でも「身体拘束ゼロ」を目指すべきで、認知症対応力向上や情報連携推進が必須要素—中医協・介護給付費分科会の意見交換(2)
感染対策向上加算の要件である合同カンファレンス、介護施設等の参加も求めてはどうか—中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
要介護高齢者の急性期入院医療、介護・リハ体制が充実した地域包括ケア病棟等中心に提供すべきでは—中医協・介護給付費分科会の意見交換
2024年度の診療報酬に向け、まず第8次医療計画・医師働き方改革・医療DXに関する意見交換を今春より実施—中医協総会
DPC機能評価係数II、「高齢化に伴う患者構成の変化」などに対応した計算式に見直してはどうか—入院・外来医療分科会(3)
DPC病院の経営向上に向け、診療情報管理士の確保・クリニカルパスの導入使用・救急患者受け入れ等推進を—入院・外来医療分科会(2)
2023年度DPC機能評価係数II内訳を公表、自院の係数と他院の状況を比較し、自院の取り組みの検証が重要―入院・外来医療分科会(1)
2023年度のDPC機能評価係数IIトップ、大学病院群で富山大病院、特定群で帯広厚生病院、標準群で北見赤十字病院