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DPC機能評価係数IIが著しく低い・高い病院では、診療実態にどのような特徴があるのか—入院外来医療分科会

2022.10.13.(木)

2022年度の今回診療報酬改定によって入院医療・外来医療・医師働き方改革の状況はどのように変化しているのか—。

一般国民は、オンライン診療を受診した経験がどの程度あり、どのような感想(満足したのか、不満を感じているのか)を持っているのか—。

DPC標準病院群について、機能評価係数IIが標準から外れた病院」(機能評価係数IIの各係数について上位50病院・下位50病院など)では、どのような診療実態があるのか—。

こうした入院・外来医療に関する調査内容が、10月12日に開催された診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(中央社会保険医療協議会の下部組織、以下「入院外来医療分科会」)で概ね固められました。近く開かれる中央社会保険医療協議会での承認を待って、調査が実施され、年明け3月(2023年3月)頃から調査結果が順次報告されていきます。

一般国民を対象に「オンライン診療の経験や感想、イメージ」などを調査

昨今の診療報酬改定は、医療現場の実態を調査・分析した「データ」「エビデンス」にも党いて議論を行い、その内容が決定されます。2024年度の次期診療報酬改定論議に向けて、入院・外来医療に関しては、2020年度の前回改定の影響を含めた調査を▼2022年度▼2023年度—の2度に分けて行うことが「7月20日の入院外来医療分科会」と「7月27日の中医協」で決まりました(関連記事はこちらこちら)。改定前(例えば2021年度)と改定後(2022・23年度)の状況を比較し、「2022年度改定の効果が思うように出ている(従前の課題が解決している)のか、課題が解消していないのか」「新たな課題が生まれていないか」などを把握したうえで、2024年度改定内容を議論していくことになります。

【本年度(2022年度)調査・分析】(本年(2022年)10-12月に調査を行い、来年(2023年)春から分析などを開始)
(1)一般病棟入院基本料等における「重症度、医療・看護必要度」の施設基準等の見直しの影響(その1)
(2)特定集中治療室管理料等の集中治療を行う入院料の見直しの影響
(3)地域包括ケア病棟入院料・回復期リハビリテーション病棟入院料の実績要件等の見直しの影響
(4)療養病棟入院基本料等の慢性期入院医療における評価の見直しの影響
(5)新興感染症等にも対応できる医療提供体制の構築に向けた評価等(その1)
(6)医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進に係る評価等
(7)外来医療に係る評価等(その1)

【来年度(2023年度)調査・分析】(来年(2023年)6-7月に調査を行い、同秋から分析を実施)
(8)一般病棟入院基本料等における「重症度、医療・看護必要度」の施設基準等の見直しの影響(その2)
(9)新興感染症等にも対応できる医療提供体制の構築に向けた評価等(その2)
(10)医療資源の少ない地域における保険医療機関の実態
(11)外来医療に係る評価等(その2)



10月12日の入院外来医療分科会には、上記のうち【本年度(2022年度)調査・分析】について、具体的な調査票案が提示されました(厚労省のサイトはこちら(概要)こちら(調査票案))。

従前の調査票からの大きな違いとしては、(1)外来医療・医師働き方改革に関する調査が「結果検証調査」(中医協の診療報酬改定結果検証部会で行われる、一般的な改定結果の検証調査)から「入院外来医療分科会の調査」に移った(2)ICUなどのユニットに関する調査票を設けた(3)オンライン診療について「一般人向け調査」を行う—の3点があげられます(このほか、当然2022年度診療報酬改定を踏まえた調査内容見直し(例えば「感染対策向上加算」の新設に関する地域連携状況の把握など)も行われます)。

2022年度入院・外来医療調査の概要1(入院・外来医療分科会1 221012)

2022年度入院・外来医療調査の概要2(入院・外来医療分科会2 221012)



このうち(1)は「過去の調査結果との比較分析」を行えるよう、結果検証調査の内容を引き継ぐ形で設定されています。「医師・看護護管理者・薬剤部責任者を、1施設当たり各4名・票で構成される。調査対象は、1施設あたり医師4名、病棟看護管理者5名、5名、1名を医療機関で抽出し勤務状況などを把握する」という調査内容がありますが、山本修一委員(地域医療機能推進機構理事長)や牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長)らは「病院の規模にかかわらず『同数のスタッフ抽出』でよいのか?医療機関側の抽出方法によっては回答が極端に偏る可能性がある」(例えば時間外労働が少ない、あるいは長い診療科の医師のみを選別することで、時間外労働を極端に短くあるいは長く見えてしまうなど)と指摘。今後、記入要領などで「診療科などが偏らないような注意喚起」を行うとともに、結果に対する「慎重な解釈」が重要になりそうです。

また山本委員や鳥海弥寿雄委員(東京慈恵会医科大学医療保険指導室室長)らは「当直を『自院の医師が担う』のか、『他院からのバイト医師で対応する』のかで、翌日の医師配置・勤務状況が全く異なってくる。とりわけ中小規模病院では深刻な問題だ。その点を明らかにできるような調査項目も追加すべき」と要望しています。



他方(3)は「一般人(医療機関受診の有無を問わない)を対象に、オンライン診療・電話診療を受けた経験や感想、イメージなどを聞く」ものです。他にも「医療機関を受診した患者(対面・オンラインを問わず)に対する、オンライン診療の経験等に関する調査」も行っており、両者を比較することで「一般国民と、患者とでのオンライン診療の受け止めの違い」などが見えてくることに期待が集まっています。

詳細は今後詰められますが、全国から1000人を抽出しWEBアンケート調査を行うことになりますが、「WEBアンケート調査では回答者が若者に偏り、しかも調査内容がオンライン診療であることから、回答者に極端な偏りが出ることが想定される。高齢者の意見も聴取できるような工夫が必要である」といった声が、菅原琢磨委員(法政大学経済学部教授)や池田俊也委員(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)ら多数から出ています。

診療報酬は非常に複雑なため「医療関係者、とりわけ医療機関管理者や事務方にしか関係のないもの」と受け止められがちです。しかし、診療報酬は「医療内容」や「患者の自己負担」にもダイレクトにつながる「実は患者、一般国民にとっても非常に身近なもの」なのです。診療報酬について「一般人を対象に調査を行う」ことは、極めて「画期的」と言え、今般の調査をきっかけに「今後も一般人を対象にした調査」が様々な形で行われていくことに期待が集まります。



このほか、2024年度の次期改定論議に資するよう、▼病院が非常に苦労している「薬剤師確保」の実態も調べるべき(山本委員)▼ACP(一般国民が、医療介護の専門職や家族・友人らと「自身が人生の最終段階で受けたい、あるいは受けたくない医療・介護」(例えば心肺蘇生はしてほしくないなど)を何度も繰り返し話し合い、可能であれば文章にしておく取り組み)関連の調査を詳しく行うべき(津留英智委員:全日本病院協会常任理事)▼中心静脈栄養からの離脱に関する詳細な把握(経口栄養に移行できたのか、胃瘻への移行にとどまっているのか)を行うべき(田宮菜奈子委員:筑波大学医学医療系教授)―などの要望が出されました。厚労省で調査項目の追加などを検討しますが、「調査項目が増えれば回答者の負担が大きくなり、回答率が下がってしまう恐れがある」点にも留意が必要です。

調査票案は概ねで了承され(委員からの意見・要望を踏まえた修正を厚労省と尾形裕也座長:九州大学名誉教授)、近く開かれる中医協に報告されます。中医協で承認が得られた暁には、この11月(2022年11月)頃から実際の調査が行われ、年明け(2023年)3月頃から順次、結果報告→結果を踏まえた分析→改定内容に関する論議へと進んでいきます。

DPC機能評価係数IIの上位・下位50病院などを対象に診療実態などを詳しく調査

また、10月12日の入院外来医療分科会ではDPCに関する特別調査(2022年度調査)の内容も固められました。

DPC制度においては「極端に医療資源投入量の少ない(あるいは多い)、極端に平均在院日数の短い(あるいは長い)病院が存在する」ことが従前より大きな問題となっています。

DPC点数などは「DPC病院全体の平均」として定められるため、例えば「不当に、極端に医療資源投入量を少なくしている病院」があれば、平均値=DPC点数が下がり、「十分な収益を得られない」事態が生じてしまうなどの問題点が出てしまうのです。

このため2018・20・22年度改定のそれぞれにおいて、医療資源投入量や平均在院日数の側面から「DPCに相応しくない病院をあぶり出す」試みが行われてきましが、なかなか明確な解が見いだせない状況が続いていました。「標準化が進んだ疾病治療においても医療資源投入量が著しく少ない」DPC病棟では、「リハビリ実施病棟への待機場所としてDPC病棟を活用している」などの事例があることが分かったものの、「DPC参加が相応しくない病院を見出し、DPC制度からの退出を促す」ルール作り論議にまではいたりませんでした(関連記事はこちら)。
実態が

この点、2024年度に向けては、医療資源投入量や平均在院日数ではなく、言わば「DPC病院の頑張り度合い」を評価する機能評価係数IIに着目。各係数が「非常に高い病院」と「非常に低い病院」を抽出し、「どのような取り組みを行っているのか」「どのような地域特性があるのか」などを詳しく見ていく方向に調査方針をシフトすることになりました。

具体的な調査内容は下表のとおりで、例えば「●●係数・指数を上げるために◆◆の取り組みを行っている」「●●係数・指数が低いが、それはこのような地域特性があるからだ、◇◇人材の確保が難しいためだ」などをDPC標準病院群の係数調査(全体)・アンケート調査(上位50・下位50病院など)・ヒアリング調査(10病院程度)の3手法で探っていきます。

2022年度DPC特別調査の概要(入院・外来医療分科会3 221012)



DPCをはじめとする診療報酬の包括支払い制度は「医療内容の標準化」を目指す仕組みと言えます。診療行為が多すぎれば、医療の質は確保できますが、高コストとなり経営が不安定になってしまいます。一方で、診療行為が少なすぎれば経営は安定するものの、粗診粗療など医療の質低下が生じてしまいます。そこで、データを見ながら「実施すべき診療行為」のベストゾーン(経営が安定し、医療の質も確保される投入量)を探っていくことが肝要となります。多くの病院が、このベストゾーンを探っていく取り組みが「医療内容の標準化」に繋がっていくのです。

逆に言えば、標準から著しく外れる場合には「何らかの問題」が生じている可能性があり、上記調査により「外れ値病院の実態」を詳しく見ていくことになります。

このDPC特別調査の内容も同日の入院外来医療分科会で固められ、近く開かれる中医協に報告され、承認を待つことになります(今年度(2022年度)に調査実施)。



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