2024年度の診療報酬・介護報酬同時改定に向け、早くも入院・外来の調査分析項目の大枠を決定—入院外来医療分科会(2)
2022.7.22.(金)
中央社会保険医療協議会の下部組織である診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(以下、入院外来医療分科会)では、2022年度診療報酬改定の1部分となる「診療報酬による看護職員処遇改善」に向けた技術的検討を行ってきましたが(関連記事はこちら)、今後は「2024年度の次期診療報酬改定に向けた調査・分析・技術的検討」を行うことになります。
7月20日の入院外来医療分科会では、今後の検討方針の大枠を固めました。
急性期充実体制加算、地域包括ケア病棟の状況などを詳細に調査・分析
まず、2024年度の次期改定に向け次の11項目(本年度(2022年度)に7項目、来年度(23年度)に4項目)の調査分析を行う方針を固めました。2022年度改定の影響・効果が時間を置かずに現れると考えられる事項は本年度(2022年度)に、改定の影響・効果が現れるまでに時間がかかる事項は来年度(2023年度)に調査・分析するというイメージですが、「重症度、医療・看護必要度」の見直しや「感染症に対応する報酬」の見直しなどは、2022・23年度の2年度に渡って詳細な調査が行われます。
【本年度(2022年度)調査・分析】(本年(2022年)10-12月に調査を行い、来年(2023年)春から分析などを開始)
(1)一般病棟入院基本料等における「重症度、医療・看護必要度」の施設基準等の見直しの影響(その1)
(2)特定集中治療室管理料等の集中治療を行う入院料の見直しの影響
(3)地域包括ケア病棟入院料・回復期リハビリテーション病棟入院料の実績要件等の見直しの影響
(4)療養病棟入院基本料等の慢性期入院医療における評価の見直しの影響
(5)新興感染症等にも対応できる医療提供体制の構築に向けた評価等(その1)
(6)医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進に係る評価等
(7)外来医療に係る評価等(その1)
【来年度(2023年度)調査・分析】(来年(2023年)6-7月に調査を行い、同秋から分析を実施)
(8)一般病棟入院基本料等における「重症度、医療・看護必要度」の施設基準等の見直しの影響(その2)
(9)新興感染症等にも対応できる医療提供体制の構築に向けた評価等(その2)
(10)医療資源の少ない地域における保険医療機関の実態
(11)外来医療に係る評価等(その2)
このうち(1)と(8)では、「看護必要度の見直し」(例えばA項目から「心電図モニター管理」を削除したなど)の影響がどのように現れているのか、急性期一般病棟などの患者状況(平均在院日数や医療提供内容)などはどう変化したのか、新設された【急性期充実体制加算】の届け出状況はどうなっているのか、などを2年度に渡って詳しく調べます(関連記事はこちらとこちら)。
また(2)では、看護必要度について「A項目からの心電図モニター削除、B項目の削除」などを行ったICU等について、その影響を調べるものです。ほかにも、スーパーICUを評価する【重症患者対応体制強化加算】の取得状況や、医療メディエーター(医師と患者・家族の間に入り、患者に適切な意思決定を促す専門職)の配置などを評価する【重症患者初期支援充実加算】の取得状況などを詳しく見ていきます(関連記事はこちらとこちら)。
さらに(3)では、大胆なペナルティ規定(在宅患者受け入れに積極的でない病棟での大幅減算など)を導入した地域包括ケア病棟、重症患者への適切なリハビリを行わない場合のペナルティ規定(入門編である入院料5の算定期間制限や、重症度評価の厳格化)を導入した回復期リハビリ病棟について、在宅患者の受け入れ状況、リハビリの提供状況などを詳しく調べます(関連記事はとこちらとこちらとこちら)。
一方、(4)では、中心静脈栄養からの早期離脱の方向が明確にされた療養病棟や、不適切な算定状況にメスが入った障害者施設などについて、改定の影響を詳しく見ていきます(関連記事はとこちらとこちら)。
また、(5)と(9)では、新型コロナウイルス感染症をはじめとする新興感染症に「地域全体で対応できる」ような体制を目指した【感染対策向上加算】【外来感染対策向上加算】について、取得状況や地域連携の状況などを詳細に調べます(関連記事はこちら)。この点、牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長、日本病院会常任理事)は「2022年度改定で、加算1はコロナ重点医療機関が、加算2はコロナ協力医療機関が算定するとの大きな方向が示され、『加算が取得できない』病院が少なからず発生している。取得状況にとどまらず、『取得できない状況』についても調査する工夫を行ってほしい」との要望が出ています。
他方、(6)では、2024年度からの医師働き方改革、これに伴う他医療職の働き方改革の実現に向けた諸施策(医師事務作業補助体制加算の見直し、看護補助加算の見直し、手術等の時間外加算1の施設基準見直しなど)が、医療現場にどのような影響を及ぼしているのか(働きやすくなっているのか?)を詳細に見ていきます(関連記事はこちらとこちら)。
さらに、(7)(11)では、新たに「外来診療データ」を収集するようになることを踏まえた、調査分析を詳しく行います。従前は「入院医療」を分析対象にしていましたが、外来医療も対象に加えることになるため、分科会の名称も変更されています(関連記事はこちら)。オンライン診療、生活習慣病に対する医療、外来がん化学療法などがどのように行われているのかを詳しく見ていくことになります。
また、委員からは「診療報酬による看護職員の処遇改善」について、影響・効果を分析していくべきとの意見も出ています。当然の意見ですが、「制度がまた出来上がっていない」ために上記の調査・分析項目に入れることはできません。今後、中医協で制度設計が行われたのちに「どのような調査を行っていくか」を改めて検討することになるでしょう(関連記事はこちら)。
なお、従前どおり分科会の下に▼診療情報・指標等作業グループ(看護必要度を含め「急性期入院医療」を評価する指標として何が相応しいかなどを検討)▼DPC/PDPS等作業グループ(DPC制度の改善に向けた検討)—という2つの作業グループを設置し、議論を進めていることも紹介されています。
2024年度には、診療報酬と介護報酬の同時改定が行われ、例えば「機能(急性期後患者、在宅で増悪した患者を受け入れ、在宅復帰を促す)が極めて近似するようになった地域包括ケア病棟と介護老人保健施設との役割分担などをどう考えるか」などといった、医療・介護双方にまたがる論点も浮上してくる可能性が出てきそうです。今後の動きに要注目です。
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