個々の家族介護者の負担が増加し、要介護3以上の家族介護者では「終日介護している」割合が最も高い―2022年国民生活基礎調査
2023.7.13.(木)
高齢者の一人暮らし世帯、高齢者夫婦のみの世帯が増加し、「老老介護」がさらに増加(全体の3分の1超)している状況が伺える―。
家族介護の割合は減少してきたが、個々の家族介護者の負担は増加しており、要介護3以上の家族介護者では「終日介護をしている」者が最も大きなシェアを占めている—。
介護の原因としては、要介護度が高くなるほど「脳血管疾患(脳卒中)」のシェアが高まっている—。
高血圧症による通院率が男女ともにさらに高まっており、生活習慣の改善等が非常に重要である—。
厚生労働省が7月4日に公表した2022年の「国民生活基礎調査の概況」から、このような状況が明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)(前年(2021年)調査の記事はこちら、2019年調査の記事はこちら、2018年調査の記事はこちら、2016年の前回大規模調査の記事はこちら、2020年はコロナ感染症により調査中止)。
世帯規模の減少続き、単独・夫婦のみの高齢者世帯の増加がさらに続く
厚労省は毎年、▼保健▼医療▼福祉▼年金▼所得―などの国民生活に関する基礎的事項を調べ、「国民生活基礎調査」として公表しています。3年に1度、大規模な調査が、中間年には簡易的な調査が行われており、昨年(2022年)には大規模調査が実施されました。
まず昨年(2022年)6月2日時点における全国の世帯総数は5431万世帯で、前年に比べて239万6000世帯・4.6%の増加。平均世帯人員は2.25人で、前年に比べて0.12人減少しています。「世帯数の増加」に伴って「平均世帯人員の減少」が生じていることが再確認できます。
また「65歳以上の高齢者のいる世帯」は2747万4000世帯で、前年に比べて166万5000世帯・6.5%増加しました(全世帯の増加率4.6%よりも1.9ポイント大きい)。全世帯に占める割合は50.6%(前年に比べて0.9ポイント増加)で、「全世帯の半数超が65歳以上の高齢者のいる世帯」となりました。
「65歳以上の高齢者のいる世帯」の内訳を見てみると、最も多いのは「夫婦のみの世帯」で32.1%(前年から0.1ポイント増)、次いで「単独世帯」31.8%(同3.0ポイント増)、「親と未婚の子のみの世帯」20.1%(同増減なし)、「三世代世帯」7.1%(同2.2ポイント減)という状況です。6割超(61.1%)が「夫婦のみ」「単独」世帯で、また「65歳以上の者のみの世帯」が全体の57.9%(前年に比べて0.3ポイント減)となっています。単独世帯の増加割合が著しく、後述のように「要介護状態となった場合の支援策」の整備が急務となります。
また、65歳以上の人は4029万7000人で、前年に比べて209万9000人・5.5%増加しています。
家族形態を見ると、「夫婦のみの世帯」(40.7%、前年に比べて0.8ポイント増加)が最も多く、「子と同居」(33.7%、同2.5ポイント減)、「単独世帯」(21.7%、同2.3ポイント増)と続いています。2016年調査から「夫婦のみの世帯」が最多となり(それ以前は「子と同居」が最多だった)、その傾向が続いています。また、「単独世帯の増加率」が高い(1986年からのシェア増加率を見ると、単独世帯:2.15倍、夫婦のみ世帯:1.85倍、子と同居:0.52倍)点にも注意する必要があります。
さらに、高齢者世帯(「65歳以上の者のみ」あるいは「65歳以上の者に18歳未満の未婚者が加わる」)の状況を見ると、2022年には1693万1000世帯(前年に比べて186万9000世帯・12.4%増)で、全世帯の31.2%を占めています(同2.2ポイント増加)。
内訳をみると、▼夫婦のみの世帯:44.7%(前年から1.8ポイント減)▼女性の単独世帯:33.0%(同1.3ポイント増)▼男性の単独世帯:18.5%(同0.9ポイント増)―となっています。ここでも「単独世帯の増加」を伺うことができ、「要介護状態となった場合の支援策」の必要性が強く感じられます。
老老介護がさらに増加、個々の家族介護者の負担が増加
次に「介護の状況」を眺めてみましょう。
在宅の要介護者・要支援者のいる世帯は、「核家族世帯」が42.1%で最も多く(3年前の調査(2019年調査)と比べて1.8ポイント増加)、「単独世帯」が30.7%(同3.4ポイント減)、「三世代世帯」が10.9%(同1.7ポイント減)と続いています。
また要介護度の状況を世帯構造別に見ると、▼単独世帯では要支援2(26.1%)、要介護1(18.9%)が多い▼夫婦のみの世帯では、要介護2(22.3%)、要介護1(19.1%)が多い▼三世代世帯では、要介護2(20.4%)、要介護1(20.3%)が多い—など、世帯ごとの特徴があります。要介護度が高くなっても在宅生活を継続するためには、どうしても「家族による介護」が重要な要素となってくることが伺えます。
主な介護者を見てみると、「要介護者と同居の者」が45.9%と最も多い状況は変わっていませんが、3年前の調査(2019年調査)と比べて8.5ポイントも減少しています。ほか「事業者」15.7%(3年前(1029年)調査と比べて3.6ポイント増)、「別居の家族など」11.8%(同1.8ポイント減)と続きます。介護事業者の利用が増加し、「家族介護依存度が薄くなって」いますが、後述のように「家族介護者の負担は増加している」点を十分に留意しなければなりません。
なお「同居の者」の内訳は、「配偶者」が22.9%(同0.9ポイント減)ともっとも多く、「子」16.2%(同4.5ポイント減)、「子の配偶者」5.4%(同2.1ポイント減)という状況です。
「どのような年齢の要介護者等」を「どのような年齢の同居介護者」がケアしているのかを見ると、次のような状況です。
▽要介護者等が40-64歳:介護者は50-59歳が最多(41.0%)
▽要介護者等が65-69歳:介護者は60-69歳が最多(62.0%)
▽要介護者等が70-79歳:介護者は70-79歳が最多(60.8%)
▽要介護者等が80-89歳:介護者は80-89歳が最多(30.4%)
▽要介護者等が90歳以上:介護者は60-69歳が最多(54.4%)
要介護者等が80代までの場合には「配偶者による介護」が多く、要介護者等が90歳を超えると、配偶者(とくに夫)が死亡してしまうケースが増え、「子や子の配偶者による介護」へとシフトしていくと考えられます。
なお、75歳以上の要介護者などを75歳以上の配偶者が介護する「老老介護」の割合は35.7%(3年前の調査(2019年調査)と比べて2.6ポイント増)となり、家族介護のほぼ3分の1を超えました。昨年度(2022年度)から、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が75歳以上に到達します。老老介護は今後ますます増えていくと考えられます。
さらに家族介護者による介護時間を要介護度別に見ると、要介護3以上では半数超の介護者が「ほとんど終日」となっています。個々の家族介護者の負担は重くなっているようです。
要介護度が重くなっても住み慣れた在宅生活を継続できるよう「地域包括ケアシステム」の構築をさらに急ぐ必要があります。ただし、ベースとなる「介護人材確保」が難しい中では代替策(ICTやロボット等の活用、専門職でないボランティア等の活用など)、重度化防止などにさらに力を入れる必要があるでしょう(関連記事はこちら)。
なお介護の原因を見てみると、要支援者では「関節疾患」や「高齢による衰弱」が、要介護者では「認知症」や「脳血管疾患(脳卒中)」が多くなっています。とりわけ「脳血管疾患(脳卒中)」は要介護度が高くなるほど、原因のシェアが高まっており、▼予防(生活習慣の改善や高血圧症の治療など)▼早期発見・早期治療―の重要性を確認できます。
男女とも高血圧による通院が最多、さらに調査の都度に通院率が上昇
健康状況に目を移すと、人口1000人当たり通院者(通院者率)は417.3(3年前の調査(2019年調査)と比べて13.3ポイント増)で、男性401.9388.1(同13.8ポイント増)、女性431.6(同12.8ポイント増)となりました。年齢階級別に見ると、30-50代での通院者率の増加が目立ちます。
傷病別に見ると、男性では「高血圧症」が146.7(同27.0ポイント増)ともっとも高く、次いで「糖尿病」70.8(同8.0ポイント増)、「脂質異常症(高コレステロール血症)」53.7(同9.8ポイント増)がトップ3を占めています。脂質異常症が3年前の「第5位」から「第3位」に浮上しています。
一方、女性でも「高血圧症」が135.7(同13.0ポイント増)でもっとも高く、「脂質異常症(高コレステロール血症)」77.2(同14.7ポイント増)、「眼の病気」65.4(同4.5ポイント増)と続きます。
最後に「がん検診」の受診状況を眺めてみると、▼過去1年間の「胃がん」「肺がん」「大腸がん」検診受診割合は、男女とも「肺がん検診」が最も高い(男性53.2%、女性46.4%)▼過去2年間の「胃がん」検診受診割合は男性53.7%、女性43.5%、「子宮がん(子宮頸がん)」では43.6%、「乳がん」検診では47.4%▼いずれのがん検診においても、受診割合は概ね横ばい―となっています。
がん検診受診率向上が重要テーマになるとともに、「自己申告である国民生活基礎調査ではなく、より正確に受診状況を把握できる仕組み」の開発も重要な検討テーマとなっています(関連記事はこちら)。
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