消費増税に伴う薬価・材料価格の特別改定、実施時期を年内かけて模索―中医協総会(2)
2018.9.27.(木)
来年(2019年)10月に消費増税(8%→10%)が予定されている。これに向けて診療報酬本体だけではなく、薬価と特定保険医療材料についても改定を行うことが検討されるが、改定の実施時期をいつにすべきか―。
9月26日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、こうした点についても検討を進めていく方針を確認しました。
2019年10月に消費税対応改定を行うと、2020年度の通常改定で実勢価格を反映できない
医薬品と特定保険医療材料(以下、医薬品等)については、「薬価・材料価格に消費税率分を上乗せする」という対応が採られています(消費税対応改定)。このため、医薬品卸業者等から医療機関等が医薬品等を購入した場合に負担した消費税相当分は、薬価・材料改革の中で補填されることになります(衛生材料などの購入にかかる消費税は医療機関等が最終負担している(いわゆる控除対象外消費税)ことと異なる)。
来年(2019年)10月に予定されている消費増税時にも同様の対応が図られる予定で、今後、「薬価等の算定式や算定ルール」など、具体的な対応方針について中医協の薬価専門部会および保険医療材料専門部会で議論していくことになります(年内に骨子案をまとめ、年明けに中医協総会で改定内容を固める予定)。
ここで問題となるのが「改定時期をいつにするか」という点です。普通に考えれば「消費税率が引き上げられる来年(2019年)10月に薬価等を引き上げる」ことになりそうですが、その場合、「2020年4月の通常改定の基礎となる薬価調査・材料価格において、消費税対応改定後の実勢価格を把握できない」という問題が生じるのです。
薬価等の改定は、通常、「改定前年の9月(材料では5-9月)に取り引きされた分」を対象に実勢価格(実際に卸業者から医療機関等が購入した価格)を調べ、それをベースに価格の引き下げを行うこととなっています。しかし、2019年10月に消費税対応改定を行った場合、2019年9月の取り引き価格は「消費税対応改定前」のものとなり、最新の実勢価格とは言えなくなってしまうのです。
さらに、2019年10月に消費税改定が行われ、さらに2020年4月に通常改定が行われた場合、当然、レセプトコンピュータなどのシステム改修が必要になり、医療機関等に大きな負担が強いられることも予想されます(もちろん、製造販売メーカーや卸業者等においても大きな負担増となる)。
薬価専門部会等では、こうした点を踏まえて「消費税対応改定を行う場合には、実施をいつにするか」が重要な検討テーマとなります。診療報酬本体においても同様の問題があり、今後の議論に要注目です。
なお消費税対応改定に関連して診療側の今村聡委員(日本医師会副会長)は、「2014年度の消費税対応改定では、補填不足や大きなバラつきが生じており、それが長期間にわたっていることが判明した。今後は、こうした事態が生じないよう、消費税率引き上げ時だけでなく、定期的に医療機関等の補填状況を調査する必要がある」旨を指摘。これに対し厚生労働省保険局医療課の森光敬子課長は、「検証調査の重要性を再確認した。今後、丁寧に検証していく」と答え、定期的な検証に前向きな姿勢を示しています。
新たな臨床検査の保険収載、「かかりつけ医機能」評価などの効果検証調査を承認
9月26日の中医協総会では、次の新たな臨床検査の保険収載を承認するとともに、2018年度改定の結果検証調査(2018年度実施分、▼かかりつけ医機能等の外来医療▼在宅医療と訪問看護▼医療従事者の負担軽減、働き方改革▼後発医薬品の使用推進―)の調査票を固めています。調査結果は来春に中医協へ報告され、2020年度の診療報酬改定に向けた重要な資料となります。
【新たな臨床検査の保険収載】(2018年10月に保険収載予定)
▼自己免疫性水疱症(天疱瘡・水疱性天疱瘡)の診断を補助するために行う、血清中の「デスモグレイン1抗体・デスモグレイン3抗体および抗BP180-NC16a抗体同時測定」(490点)
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