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病床ダウンサイジングに向けた補助金、「民間病院中心」の交付に期待―医法協・加納会長

2019.12.19.(木)

2020年度予算案において、「稼働病床数を1割以上削減する病院」に対する補助金が創設される見込みだ。明らかな過剰病床となっている地域もあり、日本医療法人協会では、かねてより「ダウンサイジングに向けた補助の必要性」を指摘してきており、今後、具体的な要件等を注視していくが、民間病院中心に交付されるものと期待している―。

日本医療法人協会の加納繁照は、12月18日の四病院団体協議会(日本医療法人協会、日本病院会、全日本病院協会、日本精神科病院協会)の総合部会後の定例記者会見で、このような考えを示しました。

12月18日の四病院団体協議会・総合部会終了後の記者会見に臨んだ、加納繁照・日本医療法人協会会長(向かって左)、相澤孝夫・日本病院会会長(中央)・猪口雄二・全日本病院協会会長(向かって右)

画餅に帰さないよう、交付要綱を注視

2020年度の予算編成に向けて、加藤勝信厚生労働大臣と麻生太郎財務大臣が12月17日に折衝を行い、「医療法上の病床について、稼働病床数ベースで1割以上の削減を行った病院に対し『将来、当該病床を稼働させていれば得られたであろう利益』の補助を全額国費で行う。このために国費84億円を2020年度予算に計上する」ことが決定しました。

この点について加納・医法協会長は「私見である」と前置きしたうえで、「2016年度の前々回診療報酬改定で、精神病床についての、言わば減反政策(減床等を要件にする【地域移行機能強化病棟入院料】1527点)が設けられた。地域によっては、明らかな人口減少モードに入っており、病床過剰になっているところもある。我が国の医療提供体制は、戦後一貫して民間が中心となって支えてきたが、地域よっては、その役割を終えた病院も出てきている。しかし民間病院を経営する中ではさまざまな負担があり、そこを解消できなければ『縮小』(病床削減)に踏み切れない。我々は、従前より『ベッド削減に当たっての支援が必要』と主張しており、今般、具体化されたのは非常に重要だ。ただし要件設定によっては画餅に帰してしまう恐れ、また逆の歪が生じる恐れもあるもあるので、今後、注視していきたい」とコメント。

また、公立病院については「もともと税金を使って設けたベッドである。そのベッドを減らすために税金を使うべきだろうか」と述べ、「民間病院を中心とした支援になるものと期待している」との考えも示しました。

年明けの国会での予算成立を待って、具体的な交付要綱等が詰められることになります。



なお、四病協の総合部会では「入院患者への給食提供のコストが膨らみ、自前・委託を問わず提供困難な状況となっている。食費の値上げを継続して厚生労働省に求めていくとともに、入院時の食事の在り方について四病協内部で検討を深めていく」点で一致したことが紹介されました(関連記事はこちらこちらこちら)。

日病・全日病・医法協の病院経営定期調査、2期連続赤字が3-5割に

また総合部会終了後の定例記者会見では、日病・全日病・医法協の3団体合同で実施した2019年度の「病院経営定期調査」集計結果も発表されました。

日病・全日病・医法協の3団体合同で実施した2019年度の「病院経営定期調査」の責任者である、日本病院会の島弘志:副会長(向かって左)、全日本病院協会の太田圭洋:医療保険・診療報酬委員会委員(向かって右)



そこでは、▼2017年度・18年度と2期連続で赤字となった病院が、経常収支ベースで33.6%、医業収支ベースで47.6%ある▼2018年6月・2019年6月と2期連続で赤字となった病院が、経常収支ベースで41.7%、医業収支ベースで48.4%ある―など、病院経営が非常に厳しいことが明らかとなっています(関連記事はこちら)。

なお、この調査は2018年度調査から3団体合同で実施され、2019年度調査への有効回答は1643病院にのぼっています。2回目の調査において、今般の医療経済実態調査(第22回、2017年度と18年度を比較、精神科病院や特定機能病院を含めて有効回答数は1406病院)よりも有効回答数が多くなったことが分かります。

調査責任者の1人である日病の島弘志副会長は、「回答率6割超、3000病院超を目指しており、会員病院にご協力をお願いしたい」との考えを提示。病院経営定期調査では、病院の経営状況はもちろん、各種入院料(入院基本料・特定入院料)や入院基本料等加算などの取得・算定状況なども調べており、前者は「医療経済実態調査」に、後者は「入院医療等の調査・評価分科会が行う特別調査」に相当します。データ数が多くなれば、より「医療現場の実態」を表すものとなり、3病院団体の調査結果をベースに、診療報酬改定等に向けた主張ができるようになるでしょう。

回答数アップに向けた方策の1つとして、やはり調査責任者である全日病の太田圭洋:医療保険・診療報酬委員会委員と日病の永易卓:診療報酬作業小委員会院長は、「回答病院にはデータのフィードバックを行っている」ことを紹介。病院全体の中で、自院の立ち位置が確認できるなど、「調査協力への大きなインセンティブ」になっていると言えるでしょう。



なお、中央社会保険医療協議会委員でもある島日病副会長は、12月17日の大臣折衝で正式決定された「2020年度診療報酬の改定率」(診療報酬本体プラス0.55%、うち0.08%分は「救急医療実績の極めて高い病院」における勤務医の働き方改革支援に充当)について「本体プラスで安心している。働き方改革に向けて財源が付いたことで、全病院で『これまで以上に真剣に取り組んでいかなければならない』状況になったとも言える。病院内スタッフの働き方改革に向けて期待したい」との所感を述べています。
 
 
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