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GemMed塾 大学病院本院群を取り巻く現況を解説 ~昨今の特定病院群・標準病院群の経営努力とは~

薬剤師は診療ガイドライン等通じて「薬物療法の広い知識」身につけ、患者にも丁寧な情報提供を―医療機能評価機構

2020.4.8.(水)

薬剤師が、処方薬の添付文書を確認し、かつ処方医に疑義照会を行うことで、適正な処方内容に変更が行うことができた―。

また、薬剤師が「患者が服用中の薬剤」情報と、「新たに服用を希望している一般用薬」情報とを比較し、「好ましくない一般用薬の服用」を防ぐことができた―。

日本医療機能評価機構は4月7日に、保険薬局(調剤薬局)からこのようなヒヤリ・ハット事例が報告されたことを公表しました(機構のサイトはこちら)。

薬局等で「調剤の手順を定める」ことだけでなく、「ルール遵守の徹底」を

医療機能評価機構では、医療安全確保のために、薬局から「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(「ヒヤリとした、ハッとした」事例)を収集する「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」を実施しています。その一環として、収集事例の中から医療安全確保に向けてとりわけ有益な情報を「共有すべき事例」として公表しています(最近の事例に関する記事はこちらこちらこちら)。4月7日には新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

1つ目は、調剤ルールの遵守を怠り、誤った量の薬剤を交付してしまった事例です。

精神運動発作、てんかん性格・てんかんに伴う精神障害、てんかんの痙攣発作や、躁うつ病の躁状態、統合失調症の興奮状態、三叉神経痛などの治療に用いる「テグレトール細粒50%・160mg分2朝夕食後」と記載された処方箋をFAXで受け付けました。薬剤師Aがテグレトール細粒50%の1日分の製剤量を換算し、FAX用紙に記載。その際、「0.32g」と記載すべきところ、計算を誤り「3.2g」と記載してしまいた。事務員は、薬剤師Aが記載した「誤った1日量」をレセコンに入力。薬剤師Bが、FAX用紙に記載された誤った1日量「3.2g」を見て秤量・分包を行い、鑑査を行った薬剤師Cも誤りに気付かず、患者の家族(実際の処方箋を持って来局)に交付しました。交付から10分後に、薬剤師Cが改めて処方箋を確認して誤りに気付き、すぐに患者家族に連絡して薬剤を交換しています。

この原因として、調製者・鑑査者が、それぞれに秤取量を計算すべきところ、これを行わずに、「記載された換算量を見て秤量・鑑査を行う」というルール違反があげられます。

機構では、▼散剤の鑑査では、「薬剤名」「計算値」「秤取量」「外観」「分包誤差」などの確認を行う▼鑑査者は秤取量を「自ら計算」し、その数値を調剤者が記録した数値と照合することが重要で、この手順を遵守する必要がある―とアドバイスしています。



2つ目は、薬剤処方に当たり添付文書を確認し、かつ処方医に疑義照会を行って、適正な処方内容に変更が行われた好事例です。

患者が脳神経内科から、「アジレクト錠1㎎(パーキンソン病治療薬)・1錠分1朝食後・28日分」との処方箋を交付されました。ところで、この患者には以前から同じパーキンソン病治療薬の「エフピーOD錠2.5」が処方されていましたが、今回は中止となっていました。薬剤師が「アジレクト錠」の添付文書を確認したところ、「エフピーOD錠の中止からアジレクト錠の投与開始するまでに間隔を置く必要がある」旨が記載されていましたが、医師からそういった指示が出ていなかったため、薬剤師が処方医に疑義照会。その結果、処方日数が28日分から14日分に変更され、「14日間の間隔を置いた後に服用を開始する」こととなりました。

関連して機構は、「MAO-B阻害作用を有する薬剤(アジレクト錠など)が同効薬からの変更で処方された場合は、患者が変更前薬剤から14日間の間隔を置いて変更後薬剤を服用開始できるよう、『今まで服用していた薬剤の最終服用日を確認する』とともに、患者へ丁寧な説明を行う」ようアドバイスしています。



3つ目は、薬剤師が患者が服用している薬剤情報と、新たに服用希望のある一般用薬情報を比較し、「好ましくない一般用薬の服用」を防いだ事例です。

ある患者は関節リウマチの治療のため「メトレート錠2㎎」を服用していますが、他の薬局で購入した、関節痛・神経痛等に効能・効果のある一般用薬の「ナボリンS」を持って来局。患者から「ナボリンSを服用してもよいか」と尋ねられたことから、「ナボリンSの1日服用量である3錠中には葉酸5㎎が含まれており、服用してはいけない」旨を説明しました。葉酸含有のサプリメントや総合ビタミン剤の服用によって、メトレート錠(成分名:メトトレキサート)の効果が減弱する可能性があるためです。患者は、購入した薬局に薬剤(ナボリンS)を返品しています。

サプリメントや栄養補助食品が数多く発売されており、その中には、医療用医薬品の作用に大きな影響を与える成分が含まれているものも少なくありません。機構では、「日頃から診療ガイドラインなどにも目を通し、薬物療法についての広い知識を身につけることが重要である」と指摘するとともに、薬物療法を有効かつ安全に行うには「患者の薬物療法への理解」も重要であり、「患者向けの冊子を利用して患者に説明を行うことで、患者が理解を深められる」とアドバイスしています。

なお、当該薬局では、「併用できない薬剤の成分名や薬剤名」を患者のお薬手帳に記載し、「一般用医薬品等を購入する際に、薬剤師や登録販売者などに、そのお薬手帳を提示する」ように説明しています。患者目線に立った、非常に優れた取り組みと言えるでしょう。



2015年10月にまとめられた「患者のための薬局ビジョン」は、かかりつけ薬局・薬剤師が、(1)服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導(2)24時間対応・在宅対応(3)かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—を持つべきと提言。また2018年度の前回調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤の整備も行い、2020年度の今回改定でその充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)が図られています(関連記事はこちらこちらこちら)。

「疑義照会=点数算定」という単純構図ではありませんが(要件・基準をクリアする必要がある)、後者2事例(2つ目の事例、3つ目の事例)のような薬剤師の取り組みの積み重ねによって「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)がさらに高まります。こうした現場の動きが、報酬の引き上げ等に結びついていくことから、「薬剤の専門家」という立場を踏まえて、積極的な疑義照会・処方変更提案が行われることが期待されます。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

 

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