2018年度から財政が都道府県単位となった国民健康保険、赤字が4保険者・黒字が43保険者に―厚労省
2020.7.27.(月)
2018年度から財政責任主体が都道府県に移管された市町村国民健康保険について、都道府県単位別の財政状況を見ると、赤字が4保険者(8.5%)、黒字が43保険者(91.5%)となった―。
厚生労働省が7月22日に公表した2018年度の「国民健康保険(市町村)の財政状況について―速報―」から、こういった状況が明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)(前年度の関連記事はこちら)。
2018年度から財政責任主体が都道府県単位か、清算後の財政は好転
2018年度の市町村国保全体の収入(単年度収入)は24兆3448億円で、前年度に比べて8兆9888億円・58.5%の増加。一方、支出(単年度支出)は24兆2164億円で、前年度から9兆911億円・60.1%の増加となりました。
大幅増の背景には、2018年度から市町村国保の財政運営主体が「都道府県」に移行したことがあります(都道府県移行に伴う「その他収入」が12兆7328億円、「その他支出」が12兆9290億円となっている、関連記事はこちらとこちら)。
こうした特殊要素を除くと、保険料(税)収入は前年度から3.9%減、保険給付費は同じく2.3%減などとなっています。
保険料収入減の背景には、▼一般被保険者数の減少(前年度から100万人減)▼退職被保険者等の減少(同19万人減)―などがあります。アベノミクスによる景気浮揚によって「会社勤め」をする人などが増え、「国保から被用者保険に移った」ことから、国保加入者の減少が続いていると見られます。
また、加入者減に伴って、医療費(保険給付費)等も減少傾向にあります。
単年度収入(24兆3448億円)から単年度支出(24兆2164億円)を差し引いた単年度収支差引額は、1284億円の黒字(前年度に比べて1023億円・44.3%の減少)。ここに国庫支出金精算額等(189億円)を考慮した精算後単年度収支差引額は1472億円の黒字(前年度に比べて171億円・13.1%の増加)となりました。
また、一般会計繰入金(法定外)のうち決算補填等を目的とする1258億円などを除くと、精算後単年度収支差引額は215億円の黒字となりました。前年度(450億円の赤字)に比べて、財政状況は664億円好転しています。
都道府県単位で見ると、赤字が4保険者、黒字が43保険者に
次に、財政状況を都道府県単位で見ると、単年度収支差で見た場合、全47保険者(2018年度から都道府県が財政責任を負うことになった)のうち8.5%にあたる4保険者が赤字。91.5%の43保険者が黒字となっています。
市町村ベースでみると、赤字は55.8%にあたる957自治体(前年度から35.1ポイント増加)、44.2%にあたる759自治体が黒字となっています。
赤字保険者の赤字額を合計すると1356億円となりました。
市町村国保には、他の医療保険(健康保険組合など)と比較して、▼年齢構成が高い▼1人当たり医療費水準が高い▼所得水準が低い▼保険料(税)負担率も著しく高い―という特徴があり、かねてより「財政の安定化」が重要課題として認識されています。このため2018年度から財政責任主体が都道府県に移管されており、今後の状況を注意深く見守る必要があります。
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