2015年度、市町村国保は2843億円の赤字、全体の6割弱が赤字保険者に―厚労省
2017.3.6.(月)
2015年度に赤字となった市町村国保は996(前年度よりも28増加)し、全体(1716保険者)の58.0%が赤字となっている。赤字額も前年度から259億円増加し、1127億円となる―。
このような状況が、厚生労働省が2月28日に公表した2015年度の「国民健康保険(市町村)の財政状況について―速報―」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。決算補填目的などで繰入金を投入する「法定外繰入」を収入から除外すると、2015年度は2843億円の赤字になっています(前年度の状況はこちら)。
赤字保険者の赤字合計、前年度より259億円増加して1127億円に
2015年度の市町村国保全体の収入は16兆3676億円で、前年度に比べて1兆9820億円・13.8%増加。一方、支出は16兆1802億円で、前年度から2兆336億円・14.4%増加しました。大幅増の原因は、収入では共同事業交付金の拡大、支出では共同事業拠出金の拡大によるもので、国保財政を安定化させるために、従前は30万円を超える医療費を対象に「都道府県単位で負担していた」ものを2015年度から全医療費を対象にしています。
単年度収入(15兆9848億円)から単年度支出(16兆415億円)を差し引いた単年度収支差引額は567億円の赤字となっており、ここに国庫支出金精算額等(784億円)を考慮すると、精算後単年度収支差引額は217億円の黒字となりました。
ただし、決算補填などを目的とする3034億円などを収入から除外すると、精算後単年度収支差引額は「2843億円の赤字」で、依然として非常に厳しい財政状態が続いていることが分かります。
全体の6割弱が赤字、財政安定化めざし2018年度から都道府県単位に
次に、赤字保険者の状況を見ると、単年度収支差で見た場合、全1716保険者のうち58.0%にあたる996保険者が赤字となりました。前年度から28保険者・1.6ポイント増加しています。
赤字保険者の赤字額を合計すると1127億円で、前年度から259億円増加しています。
市町村国保には、他の医療保険(健康保険組合など)と比較して、▽年齢構成が高い▽1人当たり医療費水準が高い▽所得水準が低い▽保険料(税)負担率も著しく高い―という特徴があり、かねてより「財政の安定化」が重要課題として認識され、2018年度から財政責任主体を都道府県に移管することになっています(関連記事はこちらとこちら)。2018年度には、このほかにも診療報酬・介護報酬の同時改定や新たな医療計画・介護保険事業(支援)計画などが控えており、大規模な制度改革となります。国保の都道府県単位化によって、財政が安定化方向にシフトするのか、注目が集まります。
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