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運動器やロコモなどの用語認知度は低い、70歳以上の3割超で「手すりなしで階段をのぼれない」「片脚立ちで靴下をはけない」

2022.5.10.(火)

運動器やロコモティブシンドロームなどの用語について認知度(聞いたことがある)や理解度(意味をしっている)は低い—。

男女とも年齢が上がるにつれて「家の中でつまづきやすい」「階段をのぼるのに手すりが必要である」「片脚立ちで靴下をはけない」人の割合が高くなる—。

骨粗しょう症に伴って軽度な外力(転倒など)で生じてしまう脆弱性骨折を避けるために、軽度な運動などを行っている人は少なくない—。

「運動器の健康・日本協会」が4月27日に公表した「ロコモティブシンドローム」認知度調査報告書からこうした状況が明らかになりました(協会のサイトはこちら)。

運動器やロコモティブシンドロームなどの用語認知度は低い

ロコモティブシンドロームは、「運動器症候群、骨・筋肉・関節などの運動器の障害のために移動機能を低下した状態」と一般に定義されます。日本医学会連合では、ロコモティブシンドロームやフレイル(虚弱)が健康寿命の短縮・要介護状態を引き起こす危険な状態であるが、予防・改善が可能であり、国全体が一丸となって「80歳までの活動性維持」を目指す80GO運動を展開する考えを強く打ち出しています(関連記事はこちら)。

しかし、「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」や「運動器」などは専門用語であり、一般国民にはなじみが薄そうです。

そうした中で、運動器の健康づくりを通して、医学・医療、保健、教育、福祉などの充実・発展・振興を図り、活力ある社会の実現に寄与する活動を続ける「運動器の健康・日本協会」では、20-60歳代の国民を対象に「ロコモティブシンドローム」などの認知度や不安などを調査。今般、その結果を公表しました。

まず、「運動器」(身体運動に関わる骨、筋肉、関節、神経などの総称)という言葉については、循環器や泌尿器、呼吸器などに比べて認知度が低い状況です。「理解している」(意味を知っている)人は27.5%(循環器は58.0%、泌尿器は63.7%、消化器は67.6%、呼吸器は66.7%)、「認知している」(聞いたことがある)人は51.4%(循環器は91.9%、泌尿器は92.2%、消化器は94.1%、呼吸器は93.8%)にとどまっています。

「運動器」認知度(ロコモ認知度調査1 220427)



また「ロコモティブシンドローム」という言葉についても、「理解している」(意味を知っている)人は19.1%、「認知している」(聞いたことがある)人は42.5%にとどまっています

「ロコモティブシンドローム」認知度(ロコモ認知度調査2 220427)



ロコモ対策などを進めるうえで、こうした「用語の認知度が低い」状況は大きな阻害要因となるため、「運動器やロコモといった言葉のPR」や「用語の見直し」(より馴染みやすい平易な言葉に置き換える)などを検討していく必要があるでしょう。



また、本人が「ロコモティブシンドローム」にどの程度の不安を感じているかを見ると、全体では「すでに該当している」が1.9%、「不安をかなり感じる」「不安をやや感じる」が合計で41.0%となりました。また、年齢があがるほど不安を感じる割合が高くなり、さらに男性よりも女性の方が不安を感じている割合が高くなっています。

自身のロコモ不安度(ロコモ認知度調査3 220427)

70歳を過ぎると、家の中でつまづきやすく、階段昇降に手すりが必要になる割合が高い

さらに、いわゆる「ロコチェック」の該当状況を見ると、▼家の中でつまづいたり滑ったりする:14.6%▼階段を上るのに⼿すりが必要である:10.9%▼15分くらい続けて歩けない:4.1%▼横断歩道を⻘信号で渡りきれない:2.0%▼⽚脚⽴ちで靴下が履けない:14.0%▼2kg程度の買い物(1リットルの⽜乳パック2個程度)をして持ち帰るのが困難である:4.1%▼家のやや重い仕事(掃除機の使⽤、布団の上げ下ろしなど)が困難である:4.6%—という状況です。

該当割合の高い項目について見ると、次のような状況が浮上してきました。
▽家の中でつまづいたり滑ったりする
→男性は70歳以上、女性は60代以上になると「あてはまる」のスコアが2割近くになる

「家の中でつまづく」人の割合(ロコモ認知度調査4 220427)



▽階段を上るのに⼿すりが必要である
→男女ともに年代が上がるにつれて「あてはまる」が高くなり、70歳以上の男性では23.5%、70歳以上の女性では30.9%が該当する

「階段をのぼるのに手すりが必要」な人の割合(ロコモ認知度調査5 220427)



▽⽚脚⽴ちで靴下が履けない
→男女ともに概ね年代が上がるほど「あてはまる」が高くなり、70歳以上の男性では34.7%、70歳以上の女性では30.6%が該当する

「片脚立ちで靴下がはけない」人の割合(ロコモ認知度調査6 220427)



また、「骨粗しょう症」の認知度は非常に高い(意味を理解している:67.8%、聞いたことがある84.6%)ものの、骨粗鬆症を背景に軽度の外力で生じてしまう「脆弱性骨折」の認知度はやや低くなっています。

さらに「脆弱性骨折がどの部位で生じやすいのか」を知っているかどうかを見ると、▼背⾻:29.3%▼⼿⾸:29.3%▼肩・腕の付け根:18.3%▼太ももの付け根:30.3%—にとどまり、「ひとつも知らなかった」が49.9%と半数を占めています。骨密度の低くなった高齢者が前向きに転倒した場合には手首や肩で骨折が生じやすく、逆に尻もちをつく格好で転倒した場合には大腿骨頸部の骨折が生じやすくなります。また、骨粗しょう症が進めば自重で背骨などを骨折してしまうこともあります。

脆弱性骨折が発生しやすい場所をどの程度しっているか(ロコモ認知度調査7 220427)



他方、転倒防止に役立つことの認知度を見ると、▼⽇常⽣活で体をよく動かす:87.3%▼外に出て⽇光を浴びるように⼼がける:76.4%▼無理なく楽しいエクササイズを⻑く続ける:65.1%▼裸⾜になったり、⿐緒のある履物を履くなど⾜の裏の感性を磨く:45.8%▼こまめに⽔を飲む ⽚脚が痛いとき反対側に杖を突く:43.4%—と比較的高く、「どれも知らなかった」は3.3%にとどまっています。

上述の「つまづきやすい」人が高齢になると増加してくる点を踏まえれば、脆弱性骨折→要介護状態に進みやすい人が増えていくことを意味し、様々な情報を分かりやすく丁寧に高齢者に伝えるとともに、「実践をサポートしていく」取り組みが非常に重要なことがわかります。



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