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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

メンタル疾患による新規入院が減り、入院期間も短縮、一方、入院外受診率は上昇!コロナ感染症の影響に留意を—健保連

2022.6.24.(金)

▼統合失調症、統合失調症型障害および妄想型障害(以下、統合失調症等)▼躁うつ病を含む気分[感情]障害(以下、気分障害)▼神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害(以下、神経症性障害等)―の有病者や医療費を分析すると、2020年度には「前年度に比べて在院日数が短縮し、新規入院患者が減少した」ことや、「入院外の受診率が女性で大きく伸びている」ことなどが分かった—。

健康保険組合連合会が6月20日に公表した、2020年度の「被保険者のメンタル系疾患の動向に関するレポート」から、こういった状況が明らかになりました(健保連のサイトはこちら)。

しかし、これらの背景には「新型コロナウイルス感染症の影響」があることから、そうした点を考慮した評価が必要となる点に最大限の留意が必要です。

統合失調症等の入院外医療、女性で受診率が大きく上がっている点に留意を

主に大企業の会社員とその家族が加入する「健康保険組合」の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)は、積極的に「データに基づく保健事業」(データヘルス)に取り組んでいます。

今般、1250組合の被保険者(家族を含まない会社員本人)1451万8174人(男性:948万6061人(65.3%)、女性:503万2193人(34.7%)、月平均で算出しており合計とは一致しない)のレセプト1億1904万6308件(男性:7333万8871件(61.6%)、女性:4570万7437件(38.4%)を対象として、▼統合失調症等▼気分障害▼神経症性障害等—などの医療費を分析し、その結果を公表しました。今般も「入院」「入院外」の双方を調べています。



まず統合失調症等について見てみると、入院外では、有病率(被保険者に占める有病者数の割合)は男性:0.47%(前年度から0.01ポイント増)、女性:0.51%(同0.03ポイント増)となりました。

有病者の年齢構成は、次のような状況です。
【男性】
▼40-49歳:32.7%(前年度から0.8ポイント減)▼50-59歳:28.2%(同0.7ポイント増)▼30-39歳:21.2%(同0.8ポイント減)―となり、高年齢者で有病者が増加している

【女性】
▼40-49歳:29.9%(同1.0ポイント減)▼30-39歳:27.9%(同0.9ポイント減)▼20-29歳:20.2%(同0.8ポイント増)▼50-59歳:18.4%(同0.9ポイント増)―となり、20代・50代で有病者が増加している

統合失調症などの入院外に関する有病率(健保連2020メンタル疾患調査1 220620)



1人当たり医療費を見てみると、男性453円(前年度から11円増)、女性444円(同7円減)となりました。これを医療費の3要素(受診率、1件当たり日数、1日当たり医療費)に分解してみると、次のような状況です。
▼受診率は、男性56.3(前年度から1.1ポイント増)、女性61.5(同2.9ポイント増)で、女性が高く、増加率も大きい
▼1件当たり日数(一連の治療に係る通院日数)は、男性1.6日(前年度から増減なし)、女性1.5日(同0.1日減)で、男女で大きな違いなし
▼1日当たり医療費、男性5079円(前年度から37円増)、女性4953円(同18円減)で、男性がやや高い

また1人当たり医療費を年齢階層別に見てみると、男性では▼40-44歳:582円(前年度から19円増)▼45-49歳:571円(同2円減)▼50-54歳:535円(同8円増)―、女性では▼40-44歳:610円(同10円増)▼35-39歳:602円(同19円増)▼45-49歳:553円(同23円増)―で高くなっています。

統合失調症等の入院、在院日数が短縮し、新規入院も減少

統合失調症等の入院に目を移すと、有病率(被保険者に占める有病者数の割合)は男女とも0.01%(前年度と変わらず)。有病者の年齢構成は次のような状況です。
【男性】
▼50-59歳:32.0%(前年度から0.8ポイント減)▼40-49歳:20.5%(同0.8ポイント減)▼60-69歳:19.2%(同0.6ポイント増)―となり、入院外と同じく高齢者の有病者増が進んでいる

【女性】
▼40-49歳:23.8%(同0.5ポイント減)▼20-29歳:23.3%(同1.7ポイント増)▼30-39歳:22.0%(同1.3ポイント減)▼50-59歳:19.3%(同2.0ポイント減)―となり、20代での有病者増加が目立つ

統合失調症などの入院に関する有病率(健保連2020メンタル疾患調査2 220620)



推計1入院当たり医療費を見てみると、男性57万4181円(前年度から1万2285円増)、女性56万5853(同2万6285円減)で、「女性が高い」状況に変化が生じています。年齢階層別に見ると、▼男性では30-34歳:73万6602円(前年度に比べ3万7985円増)▼女性では70-74歳:81万6626円(同4万8014円減)―で高くなっています。前年度まで(男性20歳代前半が飛びぬけて高い)と若干異なった状況であり「新型コロナウイルス感染症の影響」(受診抑制など)がないか今後、分析していくことが必要です。

また▼推計平均在院日数は、男性で61.0日(前年度から3.5日短縮)、女性で45.2日(同6.6日短縮)▼推計新規入院件数(1000人当たり)は、男性0.23(前年度から0.15ポイント減)、女性0.21(同0.14ポイント減)—となっており、ここでもコロナ感染症の影響を勘案する必要があります。

気分障害の入院外医療、女性の受診率がやはり大きく伸びた

気分障害に目を移すと、入院外の有病率は男性2.11%(前年度から0.04ポイント増)、女性2.10%(同0.13ポイント増加)となりました。有病者の年齢構成は次のような状況です。

【男性】
▼40-49歳:30.8%(前年度から0.9ポイント減)▼50-59歳:30.4%(同増減なし)▼30-39歳:20.0%(同増減なし)―となり、幅広い年代に有病者が広がっている

【女性】
▼40-49歳:27.9%(同1.8ポイント減)▼30-39歳:25.6%(同0.4ポイント減)▼20-29歳:21.7%(同2.0ポイント増)▼50-59歳:20.0%(同0.1ポイント増)―となり、やはり20代で有病者の増加が目立つ

気分障害などの入院外に関する有病率(健保連2020メンタル疾患調査3 220620)



1人当たり医療費は、男性2737円(前値度から50円減)、女性2527円(同96円増)となりました。医療費の3要素に分解すると、次のように「女性で、気分障害で医療機関を受診する頻度が高くなっている」ことが分かります。コロナ感染症の影響も指摘され、今後の状況分析が必要です。
▼受診率は、男性257.4(前年度から4.5ポイント増)、女性:255.1(同14.8ポイント増)で、男性の方が高い
▼1件当たり日数は、男女とも1.5日(前年度から増減なし)で変わらず
▼1日当たり医療費は、男性7208円(前年度から112円減)、女性:6673円(同86円減)で、男性の方が高いよりも高い

また1人当たり医療費を年齢階層別に見てみると、男性では▼50-54歳:3798円(前年度から149円減)▼45-49歳:3523円(同130円減)▼50-59歳:3274円(同48円減)―、女性では▼40-44歳:2931円(同25円増)▼35-39歳:2830円(同73円減)▼45-49歳:2779円(同25円減)―で高くなっています。

気分障害の入院医療、やはり在院日数が短縮し、新規患者は減少

気分障害による入院を見てみると、有病率(被保険者に占める有病者数の割合)は男女とも0.01%(前年度と変わらず)。有病者の年齢構成は次のような状況です。

【男性】
▼50-59歳:35.8%(前年度から0.7ポイント減)▼40-49歳:22.2%(前年度から1.9ポイント減)▼60-69歳:18.2%(同1.0ポイント増)―となり、やはり「高年齢者における有病者増」が進んでいる

【女性】
▼40-49歳:24.3%(同0.2ポイント減)▼50-59歳:22.2%(同1.6ポイント減)▼30-39歳:22.1%(同0.8ポイント増)―となり、男性と逆に「若年者における有病者増」が進んでいる

気分障害などの入院に関する有病率(健保連2020メンタル疾患調査4 220620)



推計1入院当たり医療費を見ると、男性26万5437円(前年度から1万7413円減)、女性26万1354円(同2万3696円減)となりました。年齢階層別に見ると、▼男性では30-34歳の28万7626円(前年度から1万1561円増)▼女性では70-74歳の47万9554円(同2万7055円増)―が目立ちます。

また▼推計平均在院日数は、男性で42.4日(前年度から1.9日短縮)、女性で34.9日(同3.4日短縮)▼推計新規入院件数(1000人当たり)については、▼男性で0.39(前年度から0.2ポイント減)、女性で0.20(同0.37ポイント増)—となっています。在院日数が短縮し、新規患者が減少している背景には、やはり「コロナ感染症の影響」(感染リスクを考慮し、早期退院する、あるいは医療機関にかからない)があると推測されます。

神経症性障害等の入院外医療、男女とも受診率が上昇

最後に神経症性障害等を見てみます。入院外の有病率は男性1.74%(前年度から0.04ポイント増)、女性2.12%(同0.10ポイント増)となっています。

有病者の年齢構成は次のようになりました。
【男性】
▼40-49歳:28.7%(前年度から0.8ポイント減)▼50-59歳:28.2%(同0.1ポイント減)▼30-39歳:19.8%(同0.1ポイント減)―となっています

【女性】
▼40-49歳:27.7%(同1.3ポイント減)▼30-39歳:23.6%(同0.2ポイント減)▼50-59歳:21.4%(同0.1ポイント減)▼20-29歳:20.4%(同1.5ポイント増)―となり、統合失調症などと同じく「20代の有病者が増加している」点が目立つ

神経症性障害などの入院外に関する有病率(健保連2020メンタル疾患調査5 220620)



1人当たり医療費は、男性550円(前年度から8円増)、女性751円(同31円増)となり、医療費の3要素に分解すると次のような状況です。女性で受診率が高く、単価も高いために1人当たり医療費が高くなっていることが分かります。
▼受診率は、男性212.7(前年度から5.2ポイント増)、女性260.4(同12.2ポイント増)で、女性のほうが高い
▼1件当たり日数は、男女とも1.4日(前年度から男女とも増減なし)で、男女差はない
▼1日当たり医療費は、男性1819円(前年度から6円減)、女性2009円(同7円減)で、女性のほうが高い

また1人当たり医療費を年齢階層別に見てみると、男性では▼50-54歳:620円(同15円増)▼40-44歳:615円(前年度から7円増)▼45-49歳:609円(同13円増)―、女性では▼40-44歳:849円(同77円増)▼45-49歳:818円(同70円増)▼35-39歳:803円(同58円増)―などで高くなっています。女性の「単価増」が目立ちます。

神経障害等の入院医療、男女とも在院日数が短縮し、新規患者が減少

神経障害等による入院では、有病率(被保険者に占める有病者数の割合)は男女とも0.01%(前年度から増減なし)。有病者の年齢構成は次のような状況です。

【男性】
▼50-59歳:31.2%(前年度から1.1ポイント減)▼40-49歳:22.2%(同0.7ポイント減)▼60-69歳:19.3%(同1.7ポイント増)―となり、50歳代の有病者増加が目立つ

【女性】
▼30-39歳:26.7%(同0.6ポイント減)▼40-49歳:22.9%(同0.9ポイント減)▼50-59歳:20.4%(同0.3ポイント増)▼20-29歳:20.2%(同0.5ポイント増)―となり、20代・50代で若干有病者が増加している

神経症性障害などの入院に関する有病率(健保連2020メンタル疾患調査6 220620)



推計1入院当たり医療費は、男性4万4321円(前年度から5132円減)、女性4万8997円(同2891円減)。従前と同じく「女性>男性」という構図です。年齢階層別に見ると、男女とも若年層で高い傾向にあることが分かります。

また▼推計平均在院日数は、男性で30.1日(前年度から1.3日短縮)、女性で21.8日(同0.2日短縮)▼推計新規入院件数(1000人当たり)は、男性で0.32(前年度から0.21減)、女性で0.23(同0.43減)—となっています。ここでも「コロナ感染症の影響」が伺えます。



このように、同じメンタル系疾患でも、疾病の種類によって有病者の発生状況や医療費の構造(つまり診療内容)が大きく異なることが分かります。ただし、これまで述べてきたように「2020年度にはコロナ感染症の影響による、受診控えや入院抑制などが発生している」と考えられ、例えば▼有病率▼在院日数—などの傾向を探ることは困難な点に留意が必要です。



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