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GHCプレミアムセミナー「コロナ禍の集患は後方連携から ~持続可能な連携に向けて~ 」 病院ダッシュボードχ ZERO

医師働き方改革に向け、短期的に「宿日直許可」などを進め、中長期的には「院内業務の標準化→タスク・シフティング」を進めよ

2022.10.3.(月)

Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)が9月3日に開催したプレミアムセミナーで、JA長野厚生連 佐久総合病院・佐久医療センターの西澤延宏先生(前副統括院長兼副院長)と岩手県・八幡平市病院事業管理者兼八幡平市立病院統括院長の望月泉先生が登壇。

医師働き方改革に向けて、望月先生は「最初に宿日直許可の取得が可能かどうかの検討」を掲げ、西澤先生は「中長期的な対策として院内業務の標準化→タスク・シフティングの推進、とりわけPFMの導入」を提唱しました。短期的な対策として「宿日直許可の取得が可能かどうか」について取り組み、併せて中長期的な対策として「業務の標準化、PFMなどタスク・シフティングの推進」を行うことが各病院に求められていると言えます。

2024年度から医師働き方改革が本格スタート、2022・23年度には病院機能の再確認も

2024年4月から【医師の働き方改革】が本格スタートします。すべての勤務医に対して新たな時間外労働の上限規制(原則:年間960時間以下(A水準)、救急医療など地域医療に欠かせない医療機関(B水準)や、研修医など集中的に多くの症例を経験する必要がある医師(C水準)など:年間1860時間以下)を適用するとともに、追加的健康確保措置(▼28時間までの連続勤務時間制限▼9時間以上の勤務間インターバル▼代償休息▼面接指導と必要に応じた就業上の措置(勤務停止など)―など)を講じる義務が医療機関の管理者に課されるものです。

医師働き方改革の全体像(中医協総会1 210721)



また、公立病院には2022・23年度中に「経営強化プラン」を作成することが求められ、その中でも「医師・看護師等の確保と働き方改革の推進」が最重要ポイントの1つに位置づけられています(関連記事はこちら)。さらに、公立病院や公的病院にとどまらず、「民間病院も含めたすべての病院」が、地域での役割を再確認し、必要な機能分化を行うことが2022・23年度中に求められています。地域医療構想の実現に向けた方策の1つであり、ここでも「医師働き方改革の推進」が最重要ポイントの1つになることは述べるまでもありません(関連記事はこちら)。

公立病院経営強化ガイドラインの方向性(総務省・公立病院経営強化検討会 211206)

新たな公立病院経営強化ガイドラインの概要



またGHCシニアマネジャーの湯原淳平は「2024年度には、診療報酬・介護報酬の同時改定、第8次医療計画、第9期介護保険事業(支援)計画がスタートするなど、大変革が起きる。このため、すべての病院が、今から地域の状況を踏まえた機能の再確認を行い、院内改革を進めていく必要がある」と強調しました。GHCでは公立病院経営強化プランの作成支援などのサービスを実施しており、これらも参考になさってください。

産科・救急科でも宿日直許可は取得可、診療科別の宿日直許可も可能

こうした中で、病院においては医師の業務内容の見直しや、医師から他職種へのタスク・シフティングなどを早急かつ強力に進める必要があります。この点、望月先生は「短期的には、宿日直許可の取得が極めて重要になる」と強調しています。

宿日直許可が認められなければ、夜間に行う業務などは「夜勤」、つまり「労働時間」(時間外労働)と扱われ、960時間・1860時間の制限をクリアすることが難しくなってきます。しかし、医療機関がどの程度、宿日直許可を取得しているのかを見ると、▼「2024年4月以降に960時間を超える時間外労働が発生してしまう医師が存在する」病院(529病院)のうち、宿日直許可を取得しているのは32%、申請予定が44%だが、16%が申請予定なしである▼「2024年4月以降に960時間を超える時間外労働が発生してしまう医師が存在する」大学病院(69病院)のうち、宿日直許可を取得しているのは67%、申請予定が17%だが、12%が申請予定なしである(厚労省調査、関連記事はこちら)▼公立病院の3割程度が宿日直許可を取得していない(全国自治体病院協議会調査、関連記事はこちら)—といった状況です。

960時間を超える時間外労働が必要な医師がいるにもかかわらず「宿日直許可の申請」すらしていない病院もある(社保審・医療部会(1)3 220603)



宿日直許可の取得が進んでいない背景には様々な点(基準が厳しいなど)がありますが、例えば「2次救急病院では宿日直許可を得られない」などの誤解もあるようです。

この点、望月先生は▼救急や産科でも宿日直許可を取得できる▼診療科、業務の種類を限定した申請も可能である▼「準夜帯は業務多忙で宿日直許可を得られないが、業務が少なくなる深夜帯だけ宿日直許可を得る」などの手法も可能である▼「宿日直の回数制限」(宿直:週1回、日直:月1回)の例外が認められる余地がある▼複数医療機関で勤務する場合、宿日直の回数は「医療機関ごとに認められる」ものである—などの点を紹介。「2次救急病院では宿日直許可を得られない」などは「誤解」であり、労働基準監督署や厚生労働省などに相談することを勧めています。

さらに、岩手県立中央病院における「医師働き方改革」に向けた取り組みとして、(1)週1日「公休」取得の徹底(医師個人制からチーム制への転換)(2)宿直後翌日の「午前中帰宅」ルールの徹底(3)宿日直・オンコール担当医師の見直し(4)診療応援病院の宿日直許可申請(5)事務作業のタスクシフトと効率化(6)補充人員確保—という「6つの解決策」を紹介。同院では、従前「2024年度以降は違法となる1860時間を超える時間外労働をする医師」が8つの診療科に存在していましたが、6つの解決策導入後に「1860時間を超える時間外労働は激減した」といいます。



もっとも、こうした取り組みについて「そうした取り組みを行える病院は一部であり、自院では無理である」と諦めてしまう院長等もおられることでしょう。この点、望月先生は「働き方改革では、病院長や勤務員の意識改革が求められている。患者満足度の向上には『職員満足度向上』が必要不可欠である。忙しくても楽しく働ける環境を院長がリーダーシップをとって整えていくことが必要である」と訴えました。

上記の岩手県立中央病院をはじめとする「好事例」などを参考に、「自院でどういった取り組みが現実的なのか」を病院ごとに考えていくことが重要です。

「標準化なきタスク・シフティング」は業務負担増を招く、まず院内業務の標準化を

また西澤先生は、「医師の生産性を上げる」ことが、医師の働き方改革の本質であると強調します。▼医療提供の質・量を減らすことはできない(減らせば地域医療の質が低下してしまう)▼医師の労働時間は減らさなければならない▼医師の増員は難しい—中では、「医師の生産性を上げる」、つまり「医師でなければ実施できない業務」に医師が集中できる環境を整えることが、働き方改革において極めて重要となるのです。

この一環として西澤先生は「PFM」(patient flow management)を用いた病院マネジメントシステムの導入を強く勧めました。

佐久医療センターでは、予定入院患者について、外来段階(患者サポートセンター)で▼クリニカルパスを用いた入院・手術の説明▼病歴の確認▼術前に必要な検査とその評価▼持参薬の確認と休薬▼管理栄養士による栄養指導▼口腔内ケア▼退院後の生活への説明・支援―などを実施してしまいます。しかも、その多くは患者サポートセンターに所属する看護職員や事務スタッフが担い、医師の業務は「確認を行う」「必要に応じて相談対応する」ことにとどまることが多くなっています(もちろん病棟看護師の業務負担も大きく減少する)。

また、入院前に必要な検査等がすべて終了しているため、「入院日の当日または翌日の手術実施」が円滑に進み(佐久医療センターでは予定入院の8割が入院当日または翌日に手術実施)、「平均在院日数の短縮→患者満足度の向上」にもつながります。

こうしたPFMを導入するに当たって重要となるのは「徹底した標準化」であると西澤先生は強調します。具体的には▼クリニカルパスの作成・普及(医師別のパスは一切認めない)▼院内のすべての診療科で術前検査・予防的抗菌薬投与・周術期の肺塞栓症予防・術前感染症採血対応などを標準化する(科別の対応は行わない)▼業務フローチャートの作成・徹底—などが佐久医療センターで行われています。例えば「同じ病態の患者についてA医師とB医師で指示の内容が異なる」などの事態が生じれば、患者サポートセンターでは「この患者にはどのように対応すればよいか」を医師に都度都度確認しなければならなくなり、医師はこの確認に対応しなければなりません。これではPFMを導入する意味が失われてしまいます。院内業務の標準化を進め「●●の状態であれば、◆◆の検査オーダーを出す」などのフローが固められていることが、円滑なタスク・シフティングにとって必要不可欠であると西澤先生は強調しています。この点、「標準化を行わず、単にタスク・シフティングを奨めれば、それはスタッフの業務負担増を招いてしまう点に留意しなければならない」と警鐘を鳴らしています。



さらに、西澤先生はPFMの導入により「医師の働き方改革が進む」にとどまらず、次のような大きなメリットがあることを紹介しています。

▽患者満足度の高い早期退院が可能になる(急性期入院医療の目指すべき姿である)
→患者が「追い出された」と思わないように、入院前に「退院予定」を明確にし、退院時に「予定どおりに退院できて良かったですね」と伝えられるようにすることが重要である

▽病棟看護職員に負担軽減につながる

▽病院経営が向上する(在院日数の短縮により患者の単価が上がり、ベッドの回転率も上がる。また患者満足度の向上により病院の評判も上がる)



こうしたメリットも視野にいれながら、各病院でPFMに取り組み「生産性の向上→医師働き方改革の実現」を目指す必要があります。


コメントを担当したコンサルタント 湯原 淳平(ゆはら・じゅんぺい)

yuhara 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門シニアマネジャー。看護師、保健師。
神戸市看護大学卒業。聖路加国際病院看護師、衆議院議員秘書を経て、入社。社会保障制度全般解説、看護必要度分析、病床戦略支援、地域包括ケア病棟・回リハ病棟運用支援などを得意とする。長崎原爆病院(事例紹介はこちら)、新潟県立新発田病院(事例紹介はこちら)など多数の医療機関のコンサルティングを行う)



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