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優れた医薬品の開発・医薬品の安定供給確保に向けた有識者の検討状況も踏まえ、2023年度薬価改定を議論—中医協

2022.11.9.(水)

優れた医薬品の開発・上市、医薬品の安定共供給確保に向けた有識者の検討が進んでいる。そこで、来年度(2023年度)の薬価中間年改定に向けてどのような議論が進んでいるのかも踏まえて、中間年改定の内容を検討していく必要がある—。

11月9日に開催された中央社会保険医療協議会・薬価専門部会でこういった議論が行われました。

有識者検討会で、優れた医薬品の開発・上市、医薬品の安定供給確保に向けた議論継続

薬価制度の抜本改革が2018年度に行われ(関連記事はこちら(2018年度改革)こちら(2020年度改革))、その一環として「毎年度の薬価改定実施」が行われています(ここで言う薬価改定は、公的価格・保険償還価格である「薬価」を、取引価格・市場実勢価格(卸-医療機関・薬局間での購入・販売価格)を踏まえて見直していくことを意味する)。

現在、薬価専門部会では「来年度(2023年度)の中間年改定」に向けた議論を行っており(関連記事はこちらこちら)、11月9日の薬価専門部会では、別に進んでいる「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」(以下、有識者検討会)の状況報告が行われました。

有識者検討会では、▼革新的や医薬品の早期上市▼医薬品の安定供給—を図るために、薬価制度・流通・産業構造の在り方などを幅広く議論しています(8月31日にスタートし、その後、仕切り直して議論が続いている、関連記事はこちら)。

これまでに、革新的医薬品の早期上市を阻むものとして「新薬価格の早期下落、市場拡大再算定など企業の予見可能性が確保できない」「欧米と比べて著しく低い薬価になるなど、イノベーション評価が十分でない」「製薬メーカーが長期収載品依存体質から脱却できてきない」などの点が確認され、今後、▼新薬開発への投資促進▼薬価算定ルール(改定頻度、新薬創出適応外薬解消等促進加算、市場拡大再算定など)の在り方▼イノベーション評価—などを検討していくこととしています。

また、安定供給を阻害する要因として「後発品メーカーの設備・人材投資の困難性」「後発品メーカーの乱立」「赤字品目への対応」「昨今の物価高騰・為替変動(円安)によるコスト急騰」などがあることを確認し、今後、▼サプライチェーンの強靭化▼薬価算定ルール(最低薬価、不採算品再算定、基礎的医薬品など)▼物価高騰などへの短期的対応▼薬価差の在り方—などを議論していくことになります。

さらに、有識者の間では、我が国の医薬品市場が製薬メーカーにとって魅力あるものとするために、「医療費を統制すること自体が非現実的で、薬剤費総額の伸びを目指していく」「薬価制度は医療保険・医療費の観点のみでなく、科学技術政策、産業政策、医療政策の視点で考える」との考え方が示されています。「日本市場の魅力が失われ、製薬メーカーが日本での新薬販売順位を劣後、あるいは見送っている」事態が現実のものとなっており、これを解決しなければ最終的に国民が不利益を被ってしまう(優れた医薬品が日本国内で手に入らない)ためです。



有識者検討会は今後も議論を継続し「来年(2023年)4月頃の意見とりまとめ」を目指しています。このため、中医協では診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)と支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)から「有識者検討会では2024年度の薬価制度改革を視野に入れた議論が進んでいるようだ。来年度(2023年度)の中間年改定に向けてどういった議論が行われているのか整理して示してほしい」との要望が出ていますが、有識者検討会の状況報告は今回のみとなる見込みです。上記の検討状況を踏まえて、来年度(2023年度)の中間年改定の在り方を薬価専門部会で議論していくことになります。

また、「物価高騰・為替変動により製造原価が急騰している」点への短期的対応(今後、薬価での対応、補助金での対応、税制での対応などを探っていくことになると思われる)について、松本委員は「物価高騰・為替変動の影響は全国民に及んでいる。医薬品の安定供給・医療提供に支障が出てはいけないが、薬価での対応(薬価引き下げ対象からの除外や、薬価引き上げなど)を行えば国民が『薬価制度抜本改革による負担軽減』の恩恵を受けにくくなることを考慮しなければならない」と述べ、中間年改定で「高コスト品目を引き下げ対象から除外する」「コスト補填のための特別の手当てを行う」ことなどを求める考えを牽制しています。

ところで、中間年改定は「薬価」と「市場実勢価格」との乖離を埋めることが主な目的です(通常の薬価改定のような「イノベーション評価推進などの課題解決」をも目指す仕組みではない)。この「薬価と市場実勢価格との乖離」(=薬価差)について、有識者検討会では▼市場原理の中で当然に生じる部分(100円の薬価が設定されている品目を100円で購入する医療機関等はない)▼薬価差益(経営原資)を目的とする過度な値下げ(市場の歪み)—の大きく2つの原因で生じることを確認。こうした薬価差の構造を整理して「薬価改定の在り方を議論していく」こととしています。

この点について診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は「中小規模の薬局では、薬価差は在庫廃棄コストなどに消えていき、経営原資にはなっていない。薬価差=経営原資という一律の考えでの議論は危険である」旨を指摘しています。



また、製薬メーカー代表である赤名正臣専門委員(エーザイ株式会社常務執行役)は「物価高騰・為替変動により製薬メーカーのコストは急騰しており、来年度(2023年度)の中間年改定を実施するか否かも含めて慎重に検討してほしい」「仮に中間年改定を行うにしても、新薬創出等加算の対象品目や医療上の必要性の高い品目は除外し、適用ルールも実勢価格に連動するものに限定すべき」ことを強く要望。医薬品卸代表である村井泰介専門委員(バイタルケーエスケー・ホールディングス代表取締役社長)は「世界的規模で医薬品の供給不足が生じている(=争奪戦が生じ、低い価格での確保ができなくなっている)点に留意すべき」とコメントしています。

関連して、赤名専門委員は11月7日の財政制度等審議会・財政制度分科会で、財務省が「米国のメディケア(高齢者、障碍者向けの公的医療保険)で薬価を引き下げ、国民負担を軽減する仕組みが導入された」ことを引き合いに「毎年度の完全な薬価改定を行う」考えを示している点を強く批判。赤名専門委員は「日本と米国では医薬品価格償還システムが全く異なる(米国は基本的に自由価格である)。そこを無視して、都合の良い部分のみを比較することは好ましくない」と指摘しています。

少なくとも「専門家」を交えない中で議論を行えば「思い付き」の改革案が多数出されます。それが発言力の強いリーダー(日本では内閣総理大臣など)の目にとまり、導入された暁には「専門的な検討を経ていないがための、大きなトラブル」が生じてしまいます。

「専門家のみの会合」に対しては、互いが牽制しあい、過去に縛られ「大きな改革が行えない」との指摘があります。このため昨今では、「大きな改革案」を打ち出す論者が注目され、もてはやされる傾向にあります。

しかし、すべての制度には「様々な角度からメリット・デメリットを考慮し、現実的な形で導入された」経緯があります。改革に当たっても同様の姿勢で臨まなければなりません。これを無視して「思い付きでドラスティックな改革」を行えば、想定できないデメリットが生じ、国民生活に大きな不利益が生じる可能性があるのです。国民生活に密接に関連する社会保障においては、取り返しのつかない国民への不利益が生じる可能性があり、「大きな改革を短時間で行う」ことは非常に危険です。

こと社会保障における「抜本改革」とは、「大きな改革」を意味するのではなく、実は「少しずつ改革を行い、10年後、20年後に過去を振り返ってみると、以前とはずいぶん異なる仕組みになっている」ことを意味する点に留意が必要でしょう。専門家のみの検討・介護が「遅く見える」のは、こうした点(想定しうる限りの影響を考慮し、段階的に実施しなければならない)を考慮しているためである点も十分に認識しなければなりません。

有識者検討会で、優れた医薬品の開発・上市、医薬品の安定供給確保に向けた議論継続

また同日(11月9日)に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、新医療機器の保険適用、新薬の保険適用などを議論しました。

新薬については16成分・20品目を11月16日に保険適用する(薬価基準に収載する)ことが了承されました(厚労省サイトはこちらこちら)。

このうち、▼骨折の危険性の高い骨粗鬆症治療に用いる「アバロパラチド酢酸塩」(販売名:オスタバロ皮下注カートリッジ1.5mg)▼後天性血栓性血小板減少性紫斑病の治療に用いる「カプラシズマブ(遺伝子組換え)」(販売名:カブリビ注射用10mg)▼遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制に用いる「乾燥濃縮人C1-インアクチベーター」(販売名:ベリナート皮下注用2000)—については、学会からの要望を踏まえて【在宅自己注射指導管理料】の対象薬剤に追加されます。また、既収載品である▼片頭痛発作の発症抑制に用いる「フレマネズマブ(遺伝子組換え)」(販売名:アジョビ皮下注225mgオートインジェクター)▼関節リウマチ治療薬の「メトトレキサート」(販売名:メトジェクト皮下注7.5mgシリンジ0.15mL、同10mgシリンジ0.20mL、同12.5mgシリンジ0.25mL、同15mgシリンジ0.30mL)—も同様です(厚労省サイトはこちら)。

また、今般保険適用が承認された新薬のうち、▼トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの治療に用いる「ブトリシランナトリウム」(販売名:アムヴトラ皮下注25mgシリンジ)▼既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症・難治の気管支喘息治療に用いる「テゼペルマブ(遺伝子組換え)」(販売名:テゼスパイア皮下注210mgシリンジ)▼中等症から重症の活動期クローン病の寛解導入療法に用いる「リサンキズマブ(遺伝子組換え)」(販売名:スキリージ点滴静注600mg、スキリージ皮下注360mgオートドーザー)▼既存 治療で効果不十分な関節リウマチ治療に用いる「オゾラリズマブ(遺伝子組換え)」(販売名:ナノゾラ皮下注30mgシリンジ)—について、一定の要件を満たすために「DPC制度においても出来高算定」となります(当該薬剤費のみが出来高算定となるのではなく、当該薬剤を用いた治療が出来高算定となる)。既収載品も含めてDPCの分岐が変更されるのでご留意ください(厚労省サイトはこちら)。



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