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2022年8月末時点で医薬品全体の28.2%、後発医薬品に限れば41.0%で出荷調整—中医協・薬価専門部会

2022.12.7.(水)

2023年度に予定されている薬価の中間年改定であるが、物価高騰・円安、供給不安が続く中では実施すべきでなく、仮に実施する場合でも「特許期間中の新薬」や「安定確保医薬品」などを除外する必要がある—。

また、不採算品目については、2023年度改定とは別に「緊急の薬価引き上げ」措置を行う必要がある—。

12月7日に開催された中央社会保険医療協議会・薬価専門部会で、製薬メーカー・医薬品卸業者からこういった意見が改めて示されました。

なお、業界による調査結果から、医薬品全体の28.2%、後発医薬品に限れば41.0%で出荷調整(出荷停止・限定出荷)がなされていることが示されました。医薬品の供給不安が長引いており、「最終的に国民・患者が不利益を被っている」点を踏まえた中間年改定論議が求められています。

製薬メーカー・卸は「2023年度の中間年改定」に改めて反対意見を表明

来年度(2023年度)の中間年薬価改定に向けた議論が中医協で続けられています。

2017年末のいわゆる4大臣合意に基づいて、薬価制度の抜本改革が2018年度から進められており(関連記事はこちら(2018年度改革)こちら(2020年度改革))、その一環として「毎年度の薬価改定実施」(2年に一度、診療報酬改定と同時に行われる通常の薬価改定+診療報酬改定の行われない年に行われる中間年改定)があります。

来年度(2023年度)は中間年改定の実施が予定されていますが、「物価高騰、為替の大幅変動によるコスト増が医薬品産業も苦しめている」「後発品を中心とした医薬品の供給不安が続いている」中で中間改定を行うべきかという大きな問題があります。また仮に中間年改定を行う場合には「対象範囲をどう考えるか」「適用ルールをどう考えるか」といった論点があります。中医協では、主に後者について議論が進められています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

12月7日の薬価専門部会では、改めて▼日本製薬団体連合会▼日本製薬工業協会▼日本ジェネリック製薬協会▼米国研究製薬工業協会(PhRMA)▼欧州製薬団体連合会(EFPIA)▼日本医薬品卸売業連合会—から意見聴取が行われました。業界団体の意見は、従前と変わらず次のような内容です。

(1)「物価高騰・円安で医薬品の製造・研究開発コストが急騰している」(原材料費は2020年に比べ19%増・21年に比べ11%増、輸入原材料に至っては同じく30.5%増・17.8%増)中では、2023年度の中間年改定を行う状況にない(=見合わせるべき)

(2)仮に中間年改定を行う場合でも、▼対象品目からは「特許期間中の品目」や「安定確保医薬品」「製造原価率が高く物価高騰等の影響が大きな後発品」などを除外する▼適用ルールは「市場実勢価格に基づき行うもの」「実勢価改定と連動しその影響を補正するもの」に限定する—などの配慮が必要である



さらに、「2023年度中間改定を行えば、続く24年度の通常改定と合わせて『7年連続』の薬価改定となる。特許期間中の医薬品価格がかくも早く下落する仕組みを採用しているのは、先進諸国の中でも日本だけである。日本市場の魅力は低下し、ドラッグ・ラグやドラッグ・ロスは現実のものとなり、今後の『日本への新薬上市』にさらなる躊躇をせざるを得ない。薬価改定の目的の1つである『国民の負担軽減』は重要であるが、『近い将来、優れた医薬品の供給がストップする』ことは日本国民のためになるのだろうか」との旨の指摘も行われています。医薬品業界が中間年改定に対し「極めて強い疑問、危機感を持っている」ことが伺えます。

なお、業界団体は2023年度の中間年改定とは別に、▼直近の物価高騰等により採算性が著しく悪化している品目について、安定供給確保のため「緊急的に薬価を引き上げる」措置を実施すべき▼今後、中医協においてもイノベーションを推進し、医薬品の安定供給を確保する観点から「薬価改定のあり方も含めた本質的な検討」を進めるべき—とも訴えています。



こうした業界意見に対し、診療側委員は一定の理解を示しました。有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は「安定供給の確保を最優先課題に据え、緊急的な対応を行うべき」との考えを改めて示しています。一方、長島公之委員(日本医師会常任理事)は「特許期間中の医薬品すべてを改定対象から除外するには理由として弱い」「不採算品目に限って薬価を緊急的に引き上げる提案をしているが、一部医薬品の実の対応では全体に問題が生じないか」「後発品の供給不安解消に向けて業界再編などの指摘も出ており、この辺も検討していくべき」旨の指摘も行っています。

対して支払側委員は、業界意見に対し厳しい見方をしています。安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は「医薬品の供給不安は一部後発品メーカーのGMP(医薬品の製造管理・品質管理の基準)違反に端を発しており、薬価制度とは別に考えるべきテーマである。薬価での下支えをしても、供給不安解消効果はないのではないか。一定の工夫はするとしても、基本的に前回の中間年改定である2021年度改定と同じ枠組みで、通常通りの薬価改定を行うべきではないか」と指摘。また松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「製造コストの急騰で厳しいというが、薬価調査結果を見ても過去とそれほど遜色のない乖離率があること、一部カテゴリでは乖離率が拡大していることが示されている。つまり現場では従前と大きく変わらない値引きをしており疑問を感じる」と指摘しています。

ただし安藤委員は、「一部製品の出荷停止に伴い、代替品の製造・販売に汗をかいているメーカー・卸もあると思う。そこへの労いとして薬価とは別の緊急措置を行うことは理解できる」旨の考えも付言しています。

なお、松本委員の指摘に対し業界代表や、製薬メーカー代表として中医協に参画する赤名正臣専門委員(エーザイ株式会社常務執行役)は「現行の『上限(=薬価)を設定し、その下で自由競争を行う』仕組みでは、一定の薬価差(=薬価と市場実勢価格との乖離)が必然的に生じる。今後、『市場実勢価格を基準としない薬価設定の在り方』(例えば、医薬品の価値を評価する仕組みなど)を中医協でも議論してほしい」とコメントしています。

医薬品全体の28.2%、後発医薬品に限れば41.0%で出荷調整(出荷停止・限定出荷)

12月7日の薬価専門部会には、医薬品関連業界から、この9月(2022年9月8日-30日)に行われた調査(物価高騰などの影響調査、出荷調整に関する調査)結果が報告されています。そこからは、次のような状況が明らかになりました。

▽1100品目(115社)が物価高騰等の影響を受け「不採算」となっており、後発品などが8割を占めている

不採算の状況(薬価専門部会1 221207)



▽不採算の原因は、「原料費(有効成分・賦形剤など)の高騰」や「製造経費(エネルギー)の高騰」、「為替変動(円安)」など複合的である

不採算の原因調査結果(薬価専門部会2 221207)



▽本年(2022年)8月末時点で、全体では「7.3%が出荷停止、20.8%が限定出荷」(計28.2%)、先発品では「1.1%が出荷停止、5.3%が限定出荷」(計6.4%)、後発品では「10.7%が出荷停止、30.3%が限定出荷」(計41.0%)となっている

医薬品出荷調整の最新状況(薬価専門部会3 221207)



この出荷調整のデータについては、▼日々の診療に使用する医薬品確保が困難になっており、患者にも影響が出ている(長島委員)▼国民が大きな不利益を受けていることを共通認識とすべき(松本委員)—といった声が出ています。上述のように供給不安を解消し、安定供給を確保するために「薬価での対応を行うのか」「薬価制度の外で対応するのか」「薬価を含めた全体で対応を行うのか」について、いそぎ結論を出す必要があるでしょう。

なお、有澤委員は「薬価調査結果の中で、後発品使用割合が前年と変わらず79.0%であった。しかし、今般の業界調査では後発品の41%が出荷調整されており、その中で『前年調査と同水準の後発品割合を維持した』ことは、関係者の大きな努力によるものであることを認識すべき」旨を強調しています。



12月中旬から下旬に行われる「来年度(2023年度)予算案編成」の中で、薬価中間年改定の内容が固められますが、どのような結論が出されるのか要注目です。



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