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電子処方箋、2023年10月に「リフィル処方箋対応」などの改善、院内処方情報をどう共有するかも検討―電子処方箋ワーキング

2023.6.13.(火)

電子処方箋システムについて、まずこの10月に「リフィル処方箋対応」「口頭同意対応」といった改善を行う—。

あわせて「院内処方」(例えば退院時処方)の情報共有にどう対応していくかを今後、検討していく—。

6月8日に開催された健康・医療・介護情報利活用検討会の「電子処方箋等検討ワーキンググループ」(以下、ワーキング)で、こうした議論が始まりました。

電子処方箋のシステム改修スケジュールイメージ(電子処方箋ワーキング1 230608)

リフィル処方箋対応も重要だが、そもそも「リフィル処方箋」発行は極めて低調である

電子処方箋は、オンライン資格確認等システムのインフラを活用し、これまで「紙」で運用されていた、医療機関から薬局への処方指示(処方箋発行)を「オンライン」で行うもので、大まかな流れは以下のようになります(関連記事はこちら)。

(a)患者が医療機関を受診し、「電子処方箋の発行」を希望する(オンライン資格確認等システムでの資格認証や診察時などに確認、マイナンバーカード以外で受診する場合には口頭で確認する)

(b)医療機関において医師が、オンライン資格確認等システムの中に設けられる【電子処方箋管理サービス】に「処方箋内容を登録」する

(c)医療機関は患者に「電子処方箋の控え」(紙、アプリ)を交付する

(d)患者が薬局を受診し、「電子処方箋の控え」を提示する

(e)薬局において、薬剤師が【電子処方箋管理サービス】から「処方箋内容」を取得し、調剤を行う

(d)患者に薬剤を交付する



このうち(b)および(e)において、患者同意の下で「過去に処方・調剤された薬剤情報」の閲覧が可能になるため、重複投薬や多剤投与、禁忌薬剤の投与などを「リアルタイム」でチェックし是正を図ることが可能になります。

電子処方箋の概要(健康・医療・介護情報利活用検討会1 221019)



この1月26日(2023年1月26日)から全国展開が始まっていますが、導入・運用の状況は「まだ低調」であり(関連記事はこちら)、また「院内処方情報の共有」や「リフィル処方箋への対応」などの改善を求める声も数多く出ています。

そうした中で、政府の医療DX推進本部が6月2日にまとめた「医療DXの推進に関する工程表」では、電子処方箋について▼2024年度中に、オンライン資格確認等システムを導入した「概ねすべての医療機関・薬局」に導入する▼本年度(2023年度)内に「リフィル処方等の機能拡充」を実施する▼2024年度以降、「院内処方への機能拡充」「重複投薬等チェックの精度向上」などに取り組む▼電子署名などの技術について、導入負担を軽減しつつ適切に導入できるよう、より効果的なサポート体制を整備し、技術的課題解消に取り組む—方針を明確化しており、厚労省は電子処方箋のシステム改善に向けた検討をワーキングで進めることとしました(電子処方箋は医療DXの一部でもあり、全体を見たシステム改善を検討していく)。なお、「電子処方箋の普及、推進」に向けた取り組みは、別の「電子処方箋推進協議会」で議論が進められます(関連記事はこちらこちら)。

医療DX工程表の全体像



ワーキングでは、主に(1)口頭同意(2)リフィル処方箋(3)マイナンバーカードを活用した電子署名(4)調剤済み電子処方箋の保存サービス(5)院内処方情報の共有(6)用法コード・用法マスタの拡充—について議論します。

まず(1)の口頭同意とは、患者が「過去の診療情報を当該医療機関等で確認・共有することを認めない」と選択した場合にも、医師が診療にあたって「重複投薬や併用禁忌があるのではないか?」と感じた場合に、「患者から口頭での同意を得て、重複投薬・ 併用禁忌の対象となる過去の処方・調剤内容を確認できる」ようにする仕組みです。

口頭同意への対応イメージ(電子処方箋ワーキング2 230608)



また、(2)のリフィル処方箋は、症状が安定している患者に対し、医師が「一定期間内に反復利用できる処方箋」(リフィル処方箋)を発行するものです。電子処方箋の仕組みを改修し、リフィル処方箋に対応可能とする方向で検討が進められています。

他方、(3)は「HPKIカード(医師等の資格保有証明を電子的に行うカード)による処方医の医師資格認証」について、HPKIとマイナンバーカードを紐づけして「処方医の医師資格認証」をマイナンバーカードで可能とする仕組みです。

厚労省は、この(1)(2)(3)の改善を「本年(2023年)10月頃に実装する」考えを示しており、▼来年(2024年)3月頃まで電子処方箋のモデル地域などでプレ運用を進め、問題点などを解消する▼来年(2024年)4月頃から全国の医療機関・薬局で稼働させる—スケジュール間も示しています。

リフィル処方箋・口頭同意への対応スケジュールイメージ(電子処方箋ワーキング3 230608)



この改善対応に反対する声は出ていませんが、長島公之構成員(日本医師会常任理事)、渡邊大記構成員(日本薬剤師会副会長)をはじめ、多くの構成員から「口頭同意において重要となるのは『患者の理解』である。なぜ過去の処方情報を確認する必要があるのか、確認によって患者にどのようなメリットがあるのかなどを丁寧に情報提供していくことが必要である。その際には『重複投薬』や『併用禁忌』などについて分かりやすい平易な言葉で説明することなども必須である」、「そもそもリフィル処方箋の発行が進んでいない(「2022年10月時点では、全処方箋の0.1%にすぎない」とのデータあり)。電子処方箋導入の有無、リフィル処方箋導入の有無など、医療機関・薬局の対応が非常に複雑になることから、医療現場・患者ともに混乱しないようにプレ運用期間を十分にとる必要がある。またどの薬局が電子処方箋・リフィル処方箋に対応しているのかを患者が一目で把握できるような工夫も必要である」との意見が出ています。

また大道道大構成員(日本病院会副会長)は「口頭同意が『医師からの圧力』となり、患者が『同意しなければいけないのか』と感じるような事態になってはいけない」ともコメントしています。口頭同意の対象の中には「窓口で情報確認・共有を拒否した」人も含まれ、その患者が改めて「情報確認・共有してよいか」と問われれば、「なんのために最初に不同意をしたのか」と不信感を抱くことも考えられます。運用上での配慮も重要になってきます。

また長島構成員や大道構成員は「システム改善に伴う、医療機関や薬局のシステム改修負担」も懸念しており、例えば「診療報酬改定DXの一環として共通算定モジュールが検討されている。その中に電子処方箋を組み込むことも考えてほしい」(大道構成員)、「五月雨式にシステム改修を行うのではなく、最低限『一定の改修内容をパッケージ化』したものをリリースしてほしい」(長島構成員)などと注文しています。

院内処方の情報、電子処方箋の中で共有するか、電子カルテ情報交換サービスで共有するか

一方、(4)は「電子処方箋」のシステムの中に「調剤済み電子処方箋を保存する」仕組みを導入するものです(現在は薬局が自前で保存している)。保存期間については「電子処方箋発行から5年間」が想定されていますが、渡邊構成員は「来局した患者の過去の処方内容が不明といった事態が生じないよう、最終来局から5年間としてはどうか」と提案しています。

また(5)は、「院内処方(退院時処方など)の情報も、重複投薬・併用禁忌薬剤処方などを防止するために確認可能とすべきではないか」との指摘を受けて検討されているものです。

この点については、「電子処方箋の仕組みの中で院内情報を共有できるようにする」手法と、「電子カルテ情報交換サービス(仮称)の中で共有する」手法との2手法が考えられ、それぞれに一長一短があると指摘されています。例えば「リアルタイムでの情報共有」という面を考慮すれば、前者の電子処方箋の中で院内処方情報を共有する点が優れていると言えます。一方、「他の患者情報(検査情報、アレルギー情報など)と薬剤情報をセットで把握することが医療の質向上にとって極めて重要である」という視点からすれば、後者の電子カルテ情報交換サービス(仮称)の中でも薬剤情報を把握することが重要となります。しかし、両方のサービスで薬剤情報を把握するとなれば「コストが膨大になる」というデメリットもあります。

こうしたメリット・デメリットを踏まえて、まず厚生労働省内部で「院内処方情報の共有」の在り方を整理し、その上でワーキングにおいて具体的な仕組みを考えていくことになるでしょう(関連記事はこちら)。この点について田河慶太構成員(健康保険組合連合会理事)は「コスト面も十分に考慮すべきである」と注文しています。実装がいつ頃になるのかは、現時点では未定です。

他方、(6)は現場の声を踏まえて「電子処方箋の用法マスタなどを順次拡充していく」もので、渡邊構成員は「電子処方箋は稼働しており、問題点が拡大しないように、迅速にコード・マスタの整備・拡充を進めてほしい」と要望しました。



なお、ワーキングでは、電子処方箋も含めた医療DXの基盤・入り口・鍵となる「マイナンバーカード」について、「不適切な事例が相次いで報道されており、国民の『マイナンバーカードによる医療機関等受診』に弊害が出かねない。信頼回復に努めてほしい」との声が多数の構成員から出されています。



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