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電子処方箋の導入・運用には様々な課題があり、「義務化・強制化はありえず、すべきでない」との声も—電子処方箋推進協議会

2023.5.5.(金)

電子処方箋の導入が加速しているが、医療現場には「様々なコストが大きすぎ、また先が見えない」「対応医療機関・薬局が少なく、またマイナンバーカードを保険証利用する患者も少なく、メリットを感じにくい」などの課題が山積しており、1つ1つ解決するとともに、国民・患者向けの周知啓発を強化していく—。

4月28日に開催された「電子処方箋協議会」で、こういった議論が行われました(第1回協議会の記事はこちら)。医療機関・薬局・ベンダーサイドからは「国による支援の強化」を求める声が多数でたほか、「現状を踏まえれば、電子処方箋の義務化はありえないし、やるべきではない」との声も出ています。

国は「電子処方箋を2025年3月までに概ねすべての医療機関・薬局に導入する」方針を打ち出していますが、今後の動向に注目が集まります。

医療DXは全体をセットで進めていくべきではないか、都度対応では現場負担が過大に

電子処方箋は、オンライン資格確認等システムのインフラを活用し、これまで「紙」で運用されていた、医療機関から薬局への処方指示(処方箋発行)を「オンライン」で行うもので、大まかな流れは以下のようになります(関連記事はこちら)。

(a)患者が医療機関を受診し、「電子処方箋の発行」を希望する(オンライン資格確認等システムでの資格認証や診察時などに確認、マイナンバーカード以外で受診する場合には口頭で確認する)

(b)医療機関において医師が、オンライン資格確認等システムの中に設けられる【電子処方箋管理サービス】に「処方箋内容を登録」する

(c)医療機関は患者に「電子処方箋の控え」(紙、アプリ)を交付する

(d)患者が薬局を受診し、「電子処方箋の控え」を提示する

(e)薬局において、薬剤師が【電子処方箋管理サービス】から「処方箋内容」を取得し、調剤を行う

(d)患者に薬剤を交付する



このうち(b)および(e)において、患者同意の下で「過去に処方・調剤された薬剤情報」の閲覧が可能になるため、重複投薬や多剤投与、禁忌薬剤の投与などを「リアルタイム」でチェックし是正を図ることが可能になります。

電子処方箋の概要(健康・医療・介護情報利活用検討会1 221019)

電子処方箋の導入スケジュール(健康・医療・介護情報利活用検討会2 221019)



この1月26日(2023年1月26日)から全国展開が始まっていますが、導入・運用の状況は次のように「まだ低調である」と言わざるを得ません。

▽4月23日時点で、全国3352施設(病院9、医科診療所250、歯科診療所11、薬局3082)で運用が始まっている

▽4月23日時点で、電子処方箋の利用申請は全国5万412施設(病院1194、医科診療所1万9216、歯科診療所1万1084、薬局1万8918)でなされている

▽概ね全ての都道府県(富山県、島根県、高知県以外)において「同一市区町村内に少なくとも1カ所以上、医療機関と薬局の双方で電子処方箋導入が完了」している

▽電子処方箋発行等で必要になるHPKIカード(医師等の資格保有証明を電子的に行うカード)の発行枚数は、この3月末時点で約7.2万枚

電子処方箋導入状況(電子処方箋推進協議会1 230428)



こうした「導入が進まない」背景には、例えば▼導入・運用に関するコストが大きく、国からの補助も限定的である▼システムベンダーが多忙であり(現在、オンライン資格確認等システムの導入対応で極めて多忙)、電子処方箋導入に手が回らない▼HPKIカードの発行が遅れている▼マイナンバーカードの保険証利用を行う患者が極めて限定的で、電子処方箋利用のメリットが感じられない▼機能拡充が順次なされ、良いことであるが、その都度に費用等がかかり、見合わせている—など、さまざまな課題があることが判明しています。

もちろん、国も手をこまねいているわけではなく、「システムベンダーへの対応強化要請」(オンライン資格確認等システム導入対応が落ち着いてきたとの報告もある)、「HPKIカードの早期発効は対応(ファストトラックによる早期発行窓口を3月末に社会保険診療報酬支払基金に開設、カードレス署名など)、「リフィル処方箋や院内処方へ対応するための機能拡充」などの対応を順次実施し始めています。

この点について構成員からは「さらなる対応の強化」を求める声が数多く出されています。

例えば、電子処方箋のシステム導入等の費用補助について、現在は▼補助率:病院4分の1(この3月までは3分の1)、診療所3分の1(同2分の1)▼事業額上限:⼤規模病院486万6000円、それ以外の病院325万9000円、診療所38万7000円—という状況ですが、長島公之構成員(日本医師会常任理事)や渡邊大記構成員(日本薬剤師会副会長)をはじめ、多くの構成員が「補助の引き上げ」、さらには「国策で進めるのであれば、医療現場に負担をかけず、すべて国の費用での導入」を求めています(関連記事はこちら)。

あわせて「多くの医療機関等での導入・運用が一斉に開始されなければ、患者がメリットを感じられず、結果、導入・運用が進まない」事態(「一部の医療機関等でしか使用できない」→「患者がメリットを感じず、マイナンバーカードの保険証利用を行わない」→「患者が使わないので、医療機関等での導入を見合わせる」という悪循環)に陥ることから、長島構成員らは「国費を投入して、一気に電子処方箋をはじめとする医療DXを進める必要がある」「導入の費用などのハードルを下げることが、一番の医療DX導入促進策である」と強調しています。



また、機能強化がパッチワーク的に行われる点について、大道道大構成員(日本病院会副会長)は「機能強化の都度にシステム改修が必要となり、病院側のコストもかかり、また改修に当たり診療をストップせざるを得ない。こうした点から、多くの病院では『2023年度末まで導入を見送る』姿勢をとらざるを得なくなっている」と指摘(下図参照)。機能改修はある程度セットで行い、医療機関等やベンダーの改修負担軽減も考慮すべきと訴えています。

公的病院における電子処方箋導入意向(電子処方箋推進協議会2 230428)



関連して長島構成員らは「今後、電子カルテ情報の全国医療機関等での共有が始まり(全国医療情報プラットフォーム)、標準的な電子化カルテの導入も進む。本来であれば、これらをセットで実現するべきではないか(例えば標準的な電子カルテシステムに電子処方箋発行機能が標準装備され、標準的電子カルテ導入さえすれば医療DX対応が完了するなど)」とも進言しています(関連記事はこちらこちらこちら)。

さらに大道構成員は「電子処方箋等に対応できるベンダーとできないベンダーとがある。だからと言って、対応可能なベンダーに電子カルテをはじめとするシステム全体を移管することもおいそれとはできない。国が指導し、概ねすべてのベンダーで医療DX全体に対応可能とすべき」とも訴えました。

電子カルテについては「A社のシステム」と「B社のシステム」とでデータ共有を行うことが非常に難しい問いの弊害があり、これが「電子カルテ情報の一部(いわゆる3文書・6情報)を標準化し、電子カルテ情報交換サービス(仮称)を介して、全国の医療機関等で共有可能な仕組みを構築する」構想につながっています(関連記事はこちらこちらこちら)。「将来的な標準型の電子カルテ」に至る前に、現在の「電子処方箋導入」においても、この電子カルテ等の弊害が影響を及ぼしているようです。

電子カルテ情報等の共有する仕組みの全体像(医療情報利活用基盤WG(1)1 230309)



厚労省は、こうした課題について1つ1つ解決策を見出すとともに、今後、▼国民・患者向けに電子処方箋のメリット・意義を丁寧に周知し、マイナンバーカードの保険証利用と一体的に進める▼電子処方箋モデル事業に加えて、気仙沼市立本吉病院・公立松任石川中央病院・静岡市立静岡病院・公立西知多総合病院・徳島市民病院・長崎みなとメディカルセンターを加えた合計14施設を中心に「地域での電子処方箋の面的拡大」「機能拡充(リフィル処方箋、院内処方への対応など)」に伴う課題の抽出・解消などに努める▼医療機関等の負担を軽減するための「クラウド型のシステム」検討などを行う—考えを示しています。

電子処方箋をはじめとする「医療DX推進」に向けた診療報酬によるサポート論議も始まっていますこちら。今春に示される「医療DX推進の工程表」も踏まえ、電子処方箋の更なる拡充策を総合的に検討・実施していくことに期待が集まります(関連記事はこちら)。

全国14の病院で「地域で面として電子処方箋を推進する」方策を詰めていく(電子処方箋推進協議会3 230428)

中長期的に「クラウド型」の電子処方箋システムなども検討していく(電子処方箋推進協議会4 230428)



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