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電子カルテ情報の共有、「国民・患者サイドのメリットは何か」を明確に―医療情報ネットワーク基盤WG

2022.5.17.(火)

全国の医療機関での電子カルテ情報共有する仕組み((仮)電子カルテ情報交換サービス)は、オンライン資格確認等システムのインフラを活用することになる。このサービスの運営主体や費用負担者を考えるにあたっては「誰がメリットを受けられるのか?」(国民全体か?医療機関のみか?)などを明確にする必要がある—。

また「全国の医療機関での電子カルテ情報共有」システムと、既存の「地域医療連携ネットワーク」とは排他的なものではなく、両者は相互補完する関係にある点に留意が必要である。将来的な両者の融合も視野に入れた検討を行うべき—。

5月16日に開催された健康・医療・介護情報利活用検討会の「医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ」でこういった議論が行われました。

5月16日に開催された「第4回 医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ」

全国の医療機関での電子カルテ情報共有、オンライン資格確認等システムのインフラ活用

患者の同意を前提とした「医療機関間での診療情報の共有」が非常に重要です。例えば救急医療や災害の現場、さらに通常診療においても、「この患者はこれまでにどういった傷病について、どういった治療を受けている(きた)のか」という情報を共有できていれば、「医療安全の確保」(例えば併用禁忌薬剤投与の防止など)や「効果的・効率的な治療」(重複投薬の防止など)が可能となり、医療の質が向上すると考えらます。

しかし、「医療機関間での診療情報の共有」を行う際に「ベンダー(いわば開発・販売メーカー)の異なる電子カルテについては、仕様が全く異なり、データの共有・連結などが極めて難しい(事実上不可能であるとの指摘もある)」という大きな問題があります。「地域医療連携を現行の電子カルテが阻んでいる」と考える識者すらおられます。
ことすらできるのです。

また、これは「ベンダーによる顧客(医療機関等)の囲い込みにつながっている」という問題も引き起こしています。A社の電子カルテを導入した病院が、数年経過後に「使い勝手が良くない。良い評判を聞くB社の電子カルテに買い替えよう」と考えたとしても、これまでの患者情報(A社の電子カルテデータ)をB社の電子カルテと連結することが極めて困難なのです(結果、買い替えが阻害される)。

そこでワーキングをはじめ、厚労省の検討会では、▼医療機関同士などでデータ交換を行うための規格(アプリケーション連携が非常に容易な「HL7 FHIR」という規格を用いる)を定める → ▼交換する標準的なデータの項目、具体的な電子的仕様を定める → ▼厚労省標準規格として採用可能なものか民間団体による審議の上、標準規格化を行う → ▼ベンダーで「標準化された電子カルテ情報・交換方式を備えた製品」を開発する → ▼医療情報化支援基金等により「標準化された電子カルテ情報・交換方式」等の普及を目指す―という流れを固め。現在、標準化に向けた検討を加速化させています(関連記事はこちら)。

5月16日のワーキングでは、「電子カルテ情報を全国の医療機関で共有するために『オンライン資格確認等システム』のインフラを活用する」方針が固められました。

医療機関等において「患者の情報を共有・閲覧する仕組み」としては、(A)オンライン資格確認等システムのインフラを活用して「レセプト」情報を共有・閲覧する(B)各医療機関の電子カルテ情報を共有・閲覧する仕組み―の2つがあります。

まず前者(A)の「オンライン資格確認等システムを活用してレセプト情報を共有する」仕組みを確認しておきましょう。

オンライン資格確認等システムは、次のような流れで「患者がどの医療保険に加入しているのかを医療機関窓口で確認する」仕組みで、昨年(2021年)10月から本格稼働しています(関連記事はこちらこちら)。

▼患者が、健康保険被保険者証機能を持つ「マイナンバーカード」を医療機関等窓口のカードリーダーにかざす

▼医療機関等のパソコン端末から、オンラインで社会保険診療報酬支払基金(支払基金)・国民健康保険中央会(国保中央会)のデータに「当該患者がどの医療保険(健康保険組合や国民健康保険など)に加入しているのか」を照会し、回答を得る

オンライン資格確認における本人確認の仕組み(医療保険部会4 191225)

オンライン資格確認システムの概要(健康・医療・介護情報利活用検討会1 200518)

してはどうか(2)



このオンライン資格確認等システムのインフラを活用して(A)の「患者の薬歴情報(レセプトから抽出)、特定健診(40-74歳を対象とする、いわゆるメタボ健診)情報を患者自身・医療機関が確認する」ことが可能となっており(関連記事はこちら)、さらに共有すべきレセプト情報の拡大(傷病名や手術(移植・輸血を含む)、放射線治療、画像診断、病理診断などの点数算定状況)に向けた検討も進められています(関連記事はこちら)。例えば医療機関において「この患者はA薬を服用しており、併用禁忌となるB薬は投与できない」などの判断をすることが可能となり、患者サイドにも「質の高い医療を受けられる」というメリットがあります。



さらに今般、(B)の「電子カルテ情報を全国の医療機関で共有できる」仕組み(今後、構築していく)についても、(A)のレセプト情報と同様に「オンライン資格確認等システムのインフラを活用して共有する」方針が固められました(上述のように「HL7 FHIR」という規格を用いてデータの標準化を行い、オンライン資格確認等システムのインフラを活用して電子カルテ情報を全国の医療機関で共有する、(仮)電子カルテ情報交換サービス)。

共有する電子カルテ情報は、まずは「3文書(▼診療情報提供書▼退院時サマリー▼健診結果報告書—)の6情報(▼傷病名▼アレルギー▼感染症▼薬剤禁忌▼検査(救急、生活習慣病)▼処方—)となります。診療のために不可欠であり、標準化仕様が定められた情報から共有をスタートし、徐々に対象を拡大していくことになります。

全国の医療機関での電子カルテ情報共有するにあたり「オンライン資格確認等システムのインフラ」を活用する方針を決定(医療情報ネットワーク基盤WG1 220516)

「全国での電子カルテ情報共有」システム、誰がメリットを受けるのかを明確にすべき

このように、(A)のレセプト情報、(B)の電子カルテ情報ともに「オンライン資格確認等システム」のインフラを活用し、全国の医療機関で共有していくことになると、「運営主体は誰(どの組織)が担うのか」「費用は誰が負担するのか」という問題が浮上してきます。

(A)のレセプト情報は「診療報酬の請求・支払い」に直結すること、またオンライン資格確認等システムの本来目的は上述のように「患者の医療保険加入情報を確認する」(土の保険者が診療報酬を支払うかを確定する)ものであることから、現在、オンライン資格確認等システムは審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険中央会(国保連の中央組織))が運用し、費用は審査支払機関と保険者が負担しています。

しかし(B)の電子カルテシステムは、レセプトのように「診療報酬の請求・支払いに結びつく」ものではないため、安直に、今と同じように「審査支払機関が運用し、費用は審査支払機関と保険者が負担する」と決めることはできません。

この点、厚生労働省医政局研究開発振興課医療情報技術推進室の田中彰子室長は「電子カルテ情報を全国の医療機関で共有する『(仮)電子カルテ情報交換サービス』について、運営主体をどこにし、だれが費用を負担するのか、さらに電子カルテ情報を蓄積していくべきなのか・標準化のみにとどめるべきなのか、などを今後検討していかなければならない。その際には電子カルテ情報の共有で、誰がどういったメリット受けられるのかを明確にすることが求められる。こうした検討を行っていくために、今後、ワーキングのメンバーを拡充する」考えを示しています。

電子カルテ情報の共有による固有のメリットとしては、例えば「画像データや検査データの共有による重複検査の抑制」「退院時サマリ―の共有による切れ目のない診療提供」などが思いつきます。医療関係者であれば「大きなメリットである」と分かるでしょうが、一般国民には「それが自分にとってどういうメリットになるのか」が必ずしも明確になっておらず、分かりやすく、かつ明確にしていく必要があります。例えば「国民にメリットがあるので、費用は国民にしてもらおう」と決める際に、国民側は「メリットを感じられない」と反発したので、上手な運用は困難になってくるためです。

また、現時点でも紙ベースで「画像や検査データ、診療情報の共有」を行うことができている(情報「共有」はすでに相当程度実現できている)ことから、「オンラインで情報共有を行うことの意義・メリット」なども検討していくことが必要です。医療機関サイドが「紙ベースで十分だ、自分たちで費用を払ってまで電子カルテ情報共有をするメリットはない」と考えたのでは、やはり暗礁に乗り上げてしまうからです。

こうした意義・メリットを確認したうえで、例えば「電子カルテ情報の共有には国民全体にメリットがある、費用は公費で賄ってはどうか」「電子カルテ情報の共有によるメリットは現時点では医療機関にとどまるようだ、費用は医療機関が負担してはどうか」などの議論を行っていくことになります。

また、(B)の『(仮)電子カルテ情報交換サービス』を運営する主体としては、すでに(A)のレセプト情報共有を運営し、ノウハウを蓄積している審査支払機関が有力候補の1つになると思われ、審査支払機関もワーキングメンバーに加えて議論を進めることなどが考えられそうです(どういったメンバーを追加するかなどはまだ決定しておらず、「審査支払機関もメンバー候補になりうる」という意味です)。

「全国での電子カルテ情報共有」と「地域医療連携ネットワーク」との融合も重要論点

ところで、電子カルテ情報の共有は「地域医療連携ネットワーク」などではすでに進んでいます。5月16日のワーキングでは、こうした現行の「地域医療連携ネットワークにおける電子カルテ情報共有」と、今後の「全国の医療機関での電子カルテ情報共有」との違いなどの整理も行われました。

前者の「現行の地域医療連携ネットワークにおける電子カルテ情報共有」はSS-MIX2という厚生労働省標準規格に沿って行われ、例えば▼オフライン環境で情報を管理する▼データはCDなどの可搬メディアを介して共有する▼閲覧者(人)が見やすい形で情報管理をしている—などの特徴があります。「極めて濃密な情報共有」をこの形で行っている地域もあります。

一方、後者の「今後、構築する全国医療機関での電子カルテ情報共有」は、HL7 FHIRという厚労省規格(アプリケーション連携が非常に容易)に沿って行う方針が固められており、例えば▼セキュアなオンライン環境で情報を管理する(適時に、つまり日常的に情報の送受信ができる)▼システム上で活用しやすい情報管理が可能となる—という特徴があります。

「SS-MIX2を活用した地域医療連携ネットワーク」と「HL7 FHIRを活用した全国電子カルテ情報共有システム」との比較(医療情報ネットワーク基盤WG2 220516)



両者は排他的なものではなく「相互補完しあうもの」と考えることができます。すでに濃密な情報連携をしている地域医療連携ネットワークにおいても、上記の3文書・6情報については、これまで以上に「情報共有しやすくなる」ことから、両者を活用して「医療の質を向上させていく」ことが可能になるでしょう。もちろん、全国医療機関での電子カルテ情報共有」の対象情報が拡大していけば、将来的には「地域医療連携ネットワークとの融合」という姿も見えてくるかもしれません。日本医師会常任理事の長島公之構成員は「地域医療連携ネットワークの融合を見据えた制度設計を検討すべき」と強く指摘しています。



なお、ワーキングでは「介護に関するデータについても共有すべき」との指摘も出ています。医療介護連携の重要性は述べるまでもなく、そこでは「情報の共有」が必須のテーマとなります。ただし、介護現場では「データ活用」「インフラ整備」がまだまだ十分に進んでおらず、「将来の、次のステップにおける検討テーマ」という位置づけになるでしょう。



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