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電子カルテデータの共有、「キーとなる情報の明確化」が何よりも重要―社保審・医療部会(2)

2021.12.13.(月)

医療機関間で電子カルテの情報を共有・閲覧可能とするために、「標準規格を用いた共有」の仕組みが検討されているが、「目的を明確にする」「キーとなる情報を明確に、それのみを共有する」ことなどが重要である。膨大な情報を全て共有したのでは「本当に必要な情報」が埋もれてしまい、見落としのリスクすらある―。

12月9日に開催された社会保障審議会・医療部会では、こういった議論も行われました。今後の検討に向けたアドヴァイスと言えるでしょう。

電子カルテデータの共有、目的・キーとなる共有内容などを明確にしたうえで進めよ

データヘルス改革に向けた議論・取り組みが鋭意進められています。例えば、加藤勝信元厚生労働大臣指示の下で、まず(1)EHR(全国の医療機関で、患者個々人の▼薬剤▼手術・移植▼透析―などの情報を確認できる仕組み)を構築し、2022年夏から運用する(2)電子処方箋を2022年夏から運用する(ただし今夏の入札に参加がなく、2023年1月スタートに延期)(3)PHR(国民1人1人が、自分自身の薬剤・健診情報を確認できる仕組み)について2021年に法整備を行い、2022年度早期から運用を開始する―方針が固められ、実施に向けた準備が進められ、すでに一部は実行の段階に入っています【集中改革プラン】

また、厚生労働省は2025年を見据えて「ゲノム解析に基づく優れた医療提供の実現」や「審査支払機関改革による効率的かつ公平・公正な審査・支払いの実施」などの重要分野に関するデータヘルス改革の取り組みも進めています。



そうした中で12月9日の医療部会では「医療機関等において、患者の情報を共有・閲覧する仕組み」に焦点を合わせた議論を行いました。

「医療機関等において、患者の情報を共有・閲覧する仕組み」としては、(1)オンライン資格確認等システムのインフラを活用して「レセプト」情報を共有・閲覧する仕組み(2)各医療機関の電子カルテ情報を共有・閲覧する仕組み―の2つがあります。

医療情報の共有・閲覧に向けて2つの仕組みが動いている(医療部会(2)2 211209)



前者は、上記【集中改革プラン】にある(1)EHR(2)PHR—によるものです。医療機関では、患者の同意(被保険者証利用可能としたマイナンバーカード出医療機関を受診した場合、自身の情報を医療機関に閲覧可とするか否かを患者自身が選択できる)を前提に、▼薬剤歴▼手術歴—などのレセプト情報を共有・閲覧可能とします。例えば▼基本情報(患者の氏名・性別や受診医療機関名など)▼診療行為(手術、放射線治療、画像診断、病理診断、医学管理、処置など)▼薬剤名—などを共有・閲覧可能とする方向が固まっており、詳細な詰めが行われているところです。

患者・医療機関でレセプト情報を共有していくことで、「非効率な部分(重複受診・重複投薬)を是正する」「医療の安全性を高める(併用禁忌となる医薬品の投与防止など)」ことなどが期待されます。この仕組みでは「レセプト」情報の共有を行うこととなり、レセプトについては「様式の標準化」がなされているため、情報共有のための技術的ハードルは比較的低いと考えられます。

EHRでどのような診療情報を共有すべきか(健康・医療・介護情報利活用検討会1 201106)



一方、後者は各医療機関が保有する電子カルテ情報等を、全国の医療機関で共有・閲覧可能とする仕組みです。医療機関同士で「質の高い、効果的な医療提供」を目指すことが主眼と言えるでしょう(もちろん、効率化・安全の確保も同時に実現できる)。

ただし、電子カルテについては「ベンダー(いわば開発・販売メーカー)によって仕様が全く異なり、データの共有・連結などが事実上不可能である」という問題があります。また、これは「ベンダーによる顧客(医療機関等)の囲い込みにつながっている」という問題も引き起こしています。A社の電子カルテを導入した病院が、数年経過後に「使い勝手が良くない。良い評判を聞くB社の電子カルテに買い替えよう」と考えたとしても、これまでの患者情報(A社の電子カルテデータ)をB社の電子カルテと連結することが極めて困難なのです(結果、買い替えが阻害される)。

そこで厚労省の検討会では、▼医療機関同士などでデータ交換を行うための規格(アプリケーション連携が非常に容易な「HL7 FHIR」という規格を用いる)を定める → ▼交換する標準的なデータの項目、具体的な電子的仕様を定める → ▼厚労省標準規格として採用可能なものか民間団体による審議の上、標準規格化を行う → ▼ベンダーで「標準化された電子カルテ情報・交換方式を備えた製品」を開発する → ▼医療情報化支援基金等により「標準化された電子カルテ情報・交換方式」等の普及を目指す―という流れを固め。現在、標準化に向けた動きが具体化しています。



こうした動きに対して、楠岡英雄委員(国立病院機構理事長)は「今般の標準化に向けた論議では、▼外部に出すデータの標準化を行う(現在の電子カルテ等の院内システム変更は必要ない)▼キーとなる情報のみを取り出す―という2点で優れている。医療現場のコスト支援なども含めて検討してほしい」と指摘し、今後の取り組みに期待を寄せています。

電子カルテには膨大な量の情報が格納されており、「どこに、どんな情報が、どのような方式で格納されているのか」が仕様によって全く異なります。この膨大な情報を全て共有しても「情報が多すぎ、共有者の間で処理して切れない」「かえって重要な情報が埋もれてしまい、確認漏れが生じる」というデメリットが生じてしまいます。そこで楠岡委員は「キーとなる情報のみを取り出して、標準化し、共有する仕組みが望ましい」と強調しています。

この点、相澤孝夫委員(日本病院会会長)も「診療データの共有で最も重要なのは『画像診断』データではないか。ほかにも重要となるデータはあるが、その範囲は限定される。そこに限定した共有の仕組みとしなければ画餅に帰してしまう」と楠岡委員と同じ考えを示しています。この点、昨年(2020年)12月18日に開催された「健康・医療・介護情報利活用検討会」では、電子カルテの標準化に向けて、まず▼診療情報提供書▼キー画像等を含む退院時サマリ▼電子処方箋▼健診結果報告書▼傷病名▼アレルギー情報▼感染症情報▼薬剤禁忌情報▼救急時に有用な検査情報▼生活習慣病関連の検査情報―の各項目について標準化を進める考えをまとめており、多くの医療関係者が楠岡委員や相澤委員と同じ見解であることが確認できます。

電子カルテの共有において、どういった検査項目の標準化を進めるべきかの大枠は固められている(医療部会(2)3 211209)



さらに相澤委員と永井良三部会長(自治医科大学学長)は「目的を明確にして、どういった機能が必要かを考える必要がある。初めから『ビッグデータを集積する』などの壮大な計画を立てれば挫折する」とも指摘しました。相澤委員は「医療機関間連携においては互いのデータ(例えば画像診断結果など)を閲覧しあえるような仕組みにすれば十分である。国や研究者は『データ収集』を期待するであろうが、目的をまず明確にする必要がある。『これがよいのではないか』という幻想のままに進めれば投資が無駄に終わってしまう」と、永井部会長は「まず試掘を行い、そこでの経験を踏まえて本格的に取り組むという段階的な進め方が望ましい」との考えを付言しています。



ほかに、▼共有化が上手く進んでいる諸外国では「検査所見・画像所見の記載法についての標準化」を進めている。そうした点が最も重要である(松田晋哉委員:産業医科大学教授)▼セキュリティの確保を万全にするため医療現場への支援を十分に行うべき(小熊豊委員:全国自治体病院協議会会長)▼患者サイドの意見について、すでに地域医療連携ネットワークを稼働している中で拾ってはどうか(山口育子委員:ささえあい医療人権センターCOML理事長)▼電子カルテの導入・維持コスト軽減に向けた検討も行ってほしい(加納繁照委員:日本医療法人協会会長)—といった要望・アドヴァイスが出ています。

今後、こうした意見も踏まえながら「電子カルテの標準化」に向けた検討が具体的に進んでいくことでしょう。

厚労省医政局研究開発振興課長の笠松淳也課長、同課医療情報技術推進室の田中彰子室長は、▼2021年度内に共有すべき情報の範囲などについて論点を整理する▼2022年度に「標準化交換方式を実装した電子カルテ」の導入方策等を検討し、結論を得る▼2023年度から検討結果を踏まえた要件定義等を進める▼2025年度からシステムの開発に入る―という今後の大きなスケジュールを提示。随時、医療部会からの意見も聴取し、検討の参考資料に加えていくことになるでしょう。

電子カルテの標準化スケジュール(医療部会(2)1 211209)

へき地のコロナワクチン接種会場への看護職派遣、来年(2022年)9月まで延長へ

また12月9日の医療部会では、例外的・時限的に認められている「へき地以外のワクチン接種会合への看護職員派遣」(来年(2022年)2月28日まで)について、コロナワクチンの3回目接種を円滑に進めるため「来年(2022年)9月30日まで延長」してはどうかという議論も行われました。

へき地のコロナワクチン接種会場への看護職員派遣を延長してはどうか(医療部会(2)4 211209)



この点、内堀雅雄委員(全国知事会・福島県知事)は「医療人材確保に苦慮する自治体の要望を踏まえた内容で感謝としている」と歓迎。また佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)や井伊 久美子委員(日本看護協会副会長・香川県立保健医療大学学長)は「あくまで時限措置である。派遣が常態化してはいけない」との条件を付したうえで、延長方針に賛意を示しました。

今後、労働政策審議会にこうした意見が伝えられ、延長の可否を決することになります。臨時・例外的な「看護職員派遣」により、自治体でのマンパワー確保で想定程度の効果が出ていることが厚労省から紹介されています。

コロナワクチン接種会場への看護職員派遣で、相当程度の効果が出ている(医療部会(2)5 211209)



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