電子カルテの仕様を標準化し、医療費の適正化を促せ―四病協
2018.9.27.(木)
電子カルテの仕様を標準化することで、データの連結等が可能となる。これによる医療機関のコスト削減はもちろん、医療費の適正化にもつながる。こうした点について厚生労働省へ要望することも視野に入れて検討を進める―。
9月26日に開かれた四病院団体協議会(日本医療法人協会、日本病院会、全日本病院協会、日本精神科病院協会で構成)・総合部会では、こうした点で一致したことが、日本医療法人協会の加納繁照会長から報告されました。
電子化カルテはベンダー間での互換性が極めて乏しく、ビッグデータ活用を阻害
電子カルテは、病院情報システムの要として、多くの病院・診療所で活用されています。しかし、その仕様はベンダー(開発製造メーカー)ごとに異なっており、「異なるベンダーの電子カルテ間では、データの連結がほぼ不可能であり、ビッグデータの活用を大きく阻害している」という深刻な課題が指摘されています。
また「電子カルテは導入費用・運用費用ともに極めて高額である」との指摘もあります。加納医法協会長は、「大雑把な試算だが、電子カルテの費用は病院収益の1.5%に相当し、急性期病院の利益率を上回っている」とコメントしています。
メディ・ウォッチでもお伝えしましたが、こうした問題意識が、7月27日の社会保障審議会・医療部会で噴出(関連記事はこちら)。9月26日の医療部会でも、この議論が再燃しました(別途、お伝えします)。その一方で、厚生労働省の2019年度予算概算要求の中には「電子カルテの標準化」という項目は見当たらないと加納医法協会長は指摘します。四病協では、こうした状況を重く見て、「電子カルテの標準化に向けて、厚生労働省へ要望を行うことも視野に入れて、さらに検討していく」方向で一致していることが総合部会で再確認されました。
標準仕様をするためには、医療機関側・ベンダー側の意見を詳細に聴取した上で、▼既存システムとの調和・互換▼将来に向けた各調整の確保―なども踏まえて検討することが求められ、相当な時間がかかると予想されます。このため、できるだけ早期に検討を開始する必要があり、医療部会での再三にわたる指摘を厚労省がどのように受け止めるのか、今後の動きに注目する必要があるでしょう。
なお、加納医法協会長は、9月14日に開催された「医療介護総合確保促進会議」において、地域医療介護総合確保基金が「地域医療ネットワークや医療に関するデータベースの構築、地域医療構想の実現に向けた人材育成などのソフト」面に活用(つまり補助)されている点についても、「都道府県が、別個にシステムを構築し、互換性がない」点を指摘しています(関連記事はこちら)。9月26日の記者会見でも、▼互換性がなく、ビッグデータの活用につながらない▼補助金が途絶えれば、運用経費がなくなり事業がストップしてしまう―可能性が高いことを改めて問題視。電子カルテと同様に、こうした点についても注視していく必要がありそうです。
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