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オンライン資格確認、全国の医療機関等で患者の薬剤情報確認を10月から本格運用―社保審・医療保険部会(3)

2021.9.24.(金)

オンライン資格確認等システムの準備が順調に進んでおり、この10月20日(2021年10月20日)から本格運用を開始。準備が整った医療機関では、マイナンバーカードを活用して保険診療を受けられることになる。オンライン資格確認等システムの導入・マイナンバーカードの普及が重要な鍵となる―。

マイナンバーカード・被保険者証(保険証)の両方を持参せずに医療機関を受診した場合などには、患者が10割負担し、後日精算することとなる―。

オンライン資格確認等システムの本格運用とあわせて、薬剤情報を全国の医療機関等で確認できる仕組みが稼働し、安全・効率的な医療提供が期待される―。

9月22日の社会保障審議会・医療保険部会では、こういった点の確認も行われました(関連記事はこちらこちら)。

9月22日に開催された「第145回 社会保障審議会医療保険部会」

オンライン資格確認等の準備完了は全医療機関等の5.6%(9月上旬)にとどまっている

公的医療保険制度(健康保険制度)は、加入者(被保険者)が保険料を納めてそれをプールし、病気やケガなどの保険事故に遭遇した際に手厚い給付(年齢や所得に応じて医療費の7-9割を給付、さらに高額療養費制度などによる手厚い給付も行われる)が行われる仕組みです。

医療保険に加入していない人にはこうした給付が行われない(全額自己負担となる)ので、医療機関等の窓口で「患者がどの医療保険に加入しているのか」を被保険者証(保険証)で確認することが求められます(資格確認)。しかし、「A社に勤務していたサラリーマンが、退職後にも在職中の被保険者証(保険証)を返還せずに使用して診療を受ける」などの事例が少なからず生じています(1か月当たり30万―40万件)。

現状では、正確な資格確認は「医療機関がレセプト請求を行い、審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険団体連合会)で審査をする時点」でなされるため、こうした事態が生じてしまうのです。この場合、多くは「別の医療保険に加入する他者が分担して負担する」こととなっています(無関係者な者の医療費負担を押し付けられている格好)。

そこで、医療機関等を受診した時点で、窓口で迅速・簡易かつ正確に「当該患者が医療保険に適切に加入しているか」を確認できる【オンライン資格確認等システム】が導入されます。資格確認は例えば次のような流れで行われます。

▼患者が、健康保険被保険者証機能を持つ「マイナンバーカード」を医療機関等窓口のカードリーダーにかざす

▼医療機関等のパソコン端末から、オンラインで社会保険診療報酬支払基金(支払基金)・国民健康保険中央会(国保中央会)のデータに「当該患者がどの医療保険(健康保険組合や国民健康保険など)に加入しているのか」を照会し、回答を得る

オンライン資格確認における本人確認の仕組み(医療保険部会4 191225)

オンライン資格確認システムの概要(健康・医療・介護情報利活用検討会1 200518)



当初は「2021年3月下旬からのオンライン資格確認等システムを本格導入する」予定でしたが、▼医療機関等の準備が当初予定通りに進んでいない(カードリーダーシステムの普及遅れ、医療機関等のシステム改修遅れ、世界的は半導体不足によるパソコン等調達の遅れなど)▼システムの根幹となるデータの精度に問題がある(個人番号の入力誤りや、データ様式の違い(例えば「-」の有無)など)―といった課題が明らかになっため、本格運用は「遅くとも10月から」に延期(関連記事はこちらこちら)。今般、その予定どおり「10月20日から本格運用が開始される」ことが厚生労働省から報告されました。

ただし、オンライン資格確認等システムの準備(顔認証付カードリーダーシステム、対応パソコン等の準備)が完了している医療機関は、9月12日時点で1万2894施設で、全体の5.6%にとどまっています(病院:1125施設(病院全体の13.6%)、医科診療所:4091施設(医科診療所全体の4.6%)、歯科診療所:2919施設(歯科診療所全体の4.1%)、薬局:4759施設(調剤薬局全体の7.6%)。

また、マイナンバーカードの健康保険証利用登録は、カード交付数の10.9%となっています。カード交付は人口の37.9%であり、健康保険証利用可能なマイナンバーカードの保有者は人口の4.1%にとどまっていることが分かります。

オンライン資格確認等システムの準備状況(医療保険部会(3)1 210922)



9月上旬の数字であり、10月20日の本格運用開始までに拡大が見込まれますが、マイナンバーカードを健康保険証として使用し、オンライン資格確認が行われるのは、一部の医療機関・国民にとどまることは間違いありません。このため、藤井隆太委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)や佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)、石上千博委員(日本労働組合総連合会副事務局長)らは「医療機関側の準備、マイナンバーカードの普及に向けて特段の努力を行うべき」旨の檄を飛ばしています(例えば、被保険者証(いいわゆる保険証)からマイナンバーカードへの一元化など)。

厚労省も、準備を進めるのと同時に、「マイナンバーカードでの受診が可能な医療機関・薬局に関する情報」を様々な形で広報・周知していく考えを強調しています。後述するように「マイナンバーカードで保険診療を受けられると思い、被保険者証(保険証)を持たずに受診したところ、当該医療機関がマイナンバーカードに対応していなかった」ようなトラブルの発生を防ぐためです。

なお、レセプトの資格過誤について審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険団体連合会)で自動修正する仕組み(レセプトの振替・分割サービス)も10月5日から稼働します。「資格過誤による返戻」が激減し、医療機関等の事務負担が大幅に削減されると見込まれます。

マイナンバー・保険証ともに受診しない場合など、患者が10割負担し、後日精算に

ところで、現在の被保険者証(保険証)による医療機関受診でも生じることですが、「マイナンバーカードを忘れて医療機関を受診してしまった」ようなイレギュラーケースに、どう対応するかが医療機関にとっては悩みどころです。こうしたイレギュラーケースへの対応方法を次のように整理しました。

▽マイナンバーカードも被保険者証も持たずに医療機関を受診した場合
→現在の被保険者証持参忘れと同様に「一時的に患者が10割分を医療機関に支払い、後日、被保険者資格を医療機関で確認した上で自己負担割合に応じた額(7割分等)を患者に返す」対応とする(医療機関等において、把握している資格情報等により、後日精算とはしない運用も可能)

▽カードリーダーの故障などでマイナンバーカードの読み取りができない場合
→予備のカードリーダーを使う、あるいは患者の被保険者証で資格情報を確認し、負担割合に応じて手続きをする
→この対応ができない場合には、コールセンターに連絡し、資格確認(システム障害・大規模災害時)機能で対応する(氏名(またはカナ氏名)、生年月日、性別、住所(部分指定可能)、保険者名により検索し、資格確認を行う)

▽転職等により保険者を異動した 直後に医療機関で受診した場合
▼マイナンバーカードで受診し、保険者等の手続きが未完了で「無効」
となる場合
→医療機関においては、新保険者発行の保険証を有していないかを確認し、有している場合には保険証情報に基づき自己負担分を請求する。 有していない場合には10割を請求し、後日精算とする(これまでの紙保険証を発行するまでのタイムラグと同じ扱い)

新たな被保険者証で受診するが、審査支払機関等の手続きが未完了で「該当資格なし」となる場合
→医療機関等においては、提示された保険証情報に基づき請求を行う

「10割負担は患者に酷である」との指摘もありますが、基本的に。現在の「紙ベースの被保険者証」においても、持参忘れの場合には「10割負担→後日精算」との対応が図られており、「サービスが悪化する」わけではない点に留意が必要です。

なお、上述のように「マイナンバーカードで保険診療を受けられると思い、被保険者証(保険証)を持たずに受診したところ、当該医療機関がマイナンバーカードに対応していなかった」ようなケースでは、「10割負担→後日精算」となってしまいます。こうした事態が生じないよう、厚労省では「マイナンバーカードでの受診が可能な医療機関・薬局に関する情報」を様々な形で広報・周知するとともに、広く患者・国民に「当該情報を確認してから医療機関を受診する」よう周知する考えです。

患者の薬剤情報を全国の医療機関等で把握できる仕組みなども、この10月から稼働

またオンライン資格確認等システムの本格運用と時を同じくして、▼薬剤情報(この9月(2021年9月)診療分以降)▼特定健診情報(2020年度実施分以降)―を、患者・国民自身が確認できる(マイナポータル)仕組みが稼働します(2021年10月より)。あわせて薬剤情報に関しては、患者の同意の下に全国の医療機関・薬局での確認も可能となります(関連記事はこちら)。

医療機関等で、また患者自身が薬剤情報を確認することが、この10月(2021年10月)から可能となる(医療保険部会(3)2 210922)

患者・国民が自身の特定健診情報を確認することが、この10月(2021年10月)から可能となる(医療保険部会(3)3 210922)

医療機関等で患者の薬剤情報を確認することが、この10月(2021年10月)から可能となる(医療保険部会(3)4 210922)



例えば薬剤に関しては、A薬を使用している患者にはB薬は投与できない(禁忌)などといった相互作用を勘案して投与することが必要です。しかし、患者が自身の服用薬剤をすべて把握し、正確に受診した医療機関に申告できれば良いですが、そうしたケースは稀です。とりわけ認知機能が低下した高齢者、さらに意識が消失・混濁した状態で救急搬送された患者などでは、薬剤情報を患者から把握することは不可能と考えられます。

その際、患者にこれまでに投与された薬剤情報(レセプト情報から抽出)を全国の医療機関等で参照可能となれば、禁忌薬剤の投与などを避け、安全かつ効率的な医療提供が行えることになります。ただし、薬剤情報は機微性の高い個人情報ゆえ、「患者が受診の都度に情報にアクセスしてよいかどうかを判断する」ことになります(救急等では別の仕組みを設けている)。

救急患者でも情報共有の意思確認が原則である(健康・医療・介護情報利活用検討会2 201106)

救急患者がマイナンバーカードを保持しているケース(健康・医療・介護情報利活用検討会3 201106)

救急患者がマイナンバーカードを保持していないケース(健康・医療・介護情報利活用検討会4 201106)



なお、薬剤・特定健診情報は「将来に向けて蓄積」され、薬剤であれば2021年8月診療分より前、特定健診であれば2021年度より前の情報をこの仕組みで把握することはできません。



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