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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

オンライン資格確認等、ベンダーからの「補助額を超える高額見積もり」がハードルに―四病協

2021.2.25.(木)

この3月下旬(2021年3月下旬)からスタートするオンライン資格確認等システムについて、医療機関等サイドの準備が十分に進んでいないが、その背景には「不明瞭かつ高額な見積もり」がある。厚労省では病院のシステム導入に係る標準的な費用(190-210万円程度)を全額補助する方針だが、四病院団体の会長・副会長が所属する病院での調査では「パソコン導入とレセコン改修だけで平均260万円超、最高で650万円超」という見積もりが提示されており、補助額をオーバーしてしまう(病院の高額負担が発生してしまう)―。

2月24日に開催された四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)の代表者会議で、こういった調査報告が行われたことが、山崎學・日精協会長らから報告されました。

この調査結果を踏まえて、厚生労働省保険局医療介護連携政策課の山下護課長から「不明瞭な見積もりを提示するシステムベンダーには、厚労省が直接コンタクトし、是正等を促す」考えが四病協に示されたことも山崎・日精協会長から報告されています。

2月24日の四病院団体協議会・代表者会議後に記者会見に臨んだ、日本精神科病院協会の山崎學会長

オンライン資格確認等システム、「不明瞭な見積もり」示すベンダーには厚労省が調整へ

今年(2021年)3月下旬から「オンライン資格確認等システム」が稼働します。

医療機関や薬局(以下、医療機関等)の窓口において「患者がどの医療保険に加入しているのか」を専用のオンラインシステムを用いて確認するものです。

公的医療保険制度(健康保険制度)は、病気やケガといった保険事故に備えて加入者(被保険者)が保険料を納め、事故に遭遇した際に、保険から給付(年齢や所得に応じて医療費の7-9割を給付、さらに高額療養費制度などによる手厚い給付も行われる)が行われる仕組みです。このため医療機関等の窓口では「患者がどの医療保険に加入しているのか」を確認する(資格確認)ことが重要となります。しかし、例えば「退職後も被保険者証を返還せずに医療機関を受診する」人などが少なからずおり、医療機関等の窓口で完全な資格確認を行うことは困難です。

そこで、次のように「医療機関等」と「全国民の医療保険加入情報を格納するデータベース」(社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険中央会)とをオンラインで結び、患者が医療機関等を受診した際に、窓口で「当該患者が医療保険に適切に加入しているか」を瞬時に確認できるシステムを導入することになりました。

▼患者が、健康保険被保険者証機能を持つ「マイナンバーカード」を医療機関等窓口でカードリーダーにかざす

▼医療機関等のパソコン端末から、オンラインで社会保険診療報酬支払基金(支払基金)・国民健康保険中央会(国保中央会)のデータベースに「当該患者がどの医療保険(健康保険組合や国民健康保険など)に加入しているのか」を照会し、回答を得る

2021年3月からオンライン資格確認等システムが導入される(健康・医療・介護情報利活用検討会1 200615)



オンライン資格確認等システムが完全に稼働するためには、(1)すべての医療機関等においてカードリーダーシステムなどの環境整備を行う(2)すべての国民が健康保険被保険者証機能を持つマイナンバーカードを保有する―ことなどが必要となります。しかし、(1)のカードリーダー申し込み状況を見ると「医療機関等全体の28.5%」に、また(2)のマイナンバーカードの健康保険被保険者証利用申し込みは「マイナンバーカード保有者の7.8%」にとどまっており、今年(2021年)3月時点では「一部の稼働」とならざるを得ない状況です。

この点、(1)の医療機関等の環境整備については「国が補助を行い、医療機関等では標準的装備については費用負担が生じない」こととなっていますが、レセプトコンピュータ(レセコン)等の改修に関する見積もりが「高額かつ不明瞭である」ために環境整備が進まない、と指摘されています。

2月12日に開催された厚生労働省の社会保障審議会・医療保険部会では、ある診療所に対し、次のような見積もりがシステムベンダーから提示されたことが、山下医療介護連携政策課長から紹介されました。

・機器等費用:77万9400円
・設定作業費用:20万円
(合計)97万9400円
※ここから「37万9400円の値引き」を行う(都合60万円)



「設定費用に20万円もかかる一方で、40万円近い値引きが行われる」ことに不信感を持つ医療関係者が少なくなく、今般、四病協でも会長・副会長の所属病院(28病院)において緊急調査が行われました。そこからは次のような「不明瞭な見積もり金額」の実態が明らかになっています。

▽総額:平均で398万4324円、最高で1228万180円(ただし最高額は2病院分)

【内訳】
▼オンライン資格確認の導入に必要なパソコン:平均で74万2555円、最高で183万8700円

▼ネットワーク環境整備費:平均で74万7983円、最高で300万円

▼レセコン改修費:平均で186万1143円、最高で470万3600円

▼電子カルテ改修費:平均で151万9419円、最高で432万6950円



2月24日の代表者会議後に記者会見に臨んだ日精協の山崎会長と野木渡副会長は、「金額のバラつきが非常に大きく、高額である」「オンライン資格確認の導入には、最低限、『パソコン導入とレセコン改修』が必要で、その合計見積もり額は平均でも260万3698円(パソコン導入費74万2555円+レセコン改修費186万1143円)で、厚労省の補助上限である190-210万円(病院等の状況で若干異なる、下図参照)を超過している(つまり病院の持ち出しが生じる)」と指摘(最高額では654万2300円)。

オンライン資格確認等システムを導入する病院には、システム改修等の標準的費用の全額が、190-210万円程度を上限に補助される



さらに山崎・日精協会長、野木副会長は、「医療機関等における環境整備が進んでいないために、厚労省が、補助率を従前の『50%』から『100%』に引き上げた。それに合わせてシステムベンダーが見積もりを跳ね上げ、こうした事態が生じているのではないか」と推測。あわせて、厚労省から「あまりに高額かつ不明瞭な見積もりを提示するシステムベンダーに対しては、厚労省が直接連絡をとり、是正等を促していく」考えが四病協に明示されたことも紹介しています。

なお「3月中に支払基金等にカードリーダーシステムの申し込みを行えば、導入が4月・5月などにずれ込んでも、システム改修費等の補助が行われる」ことになりますが、4月以降の申し込みでは「補助は行われない」こととなるので留意が必要です。



山崎・日精協会長は「支払基金や保険者、国において日本国民全員の公的医療保険等加入資格データをクリーニングしているが、3月下旬の稼働に間に合うのか心配している」ともコメントしています。

2022年度診療報酬改定、「ゼロ改定やマイナス改定の可能性も」と山崎・日精協会長

ところで来年度(2022年度)には診療報酬改定が予定されており、近く、厚労省の中央社会保険医療協議会(中医協)などで改定論議がスタートします。

この点について山崎・日精協会長は「新型コロナウイルス感染症が一定程度収束しなければ、腰を据えた改定論議は行えないのではないか。また、薬価が毎年度改定となるに伴って、改定財源の確保も難しくなるであろうから、『ゼロ改定として、どこかの点数を削って、どこかをプラスにする』『マイナス改定』となることも予想される。しかし、新型コロナウイルス感染症には民間を含めて多くの病院が協力しており、そこを勘案してほしい」との見解を述べています。



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